『極道の妻たちⅡ』(監督・土橋亨 原作・家田荘子 脚本・高田宏治 1987年)
出演・十朱幸代、村上弘明、かたせ梨乃、藤岡琢也、神山繁、草笛光子、綿引勝彦、佐川満男、安岡力也、柳沢慎吾、竹内力、木村一八、光石研、中島ゆたか、速水典子、高倉美貴、円浄順子、亜湖、草薙幸二郎、月亭八方、遠藤太津朗、夏夕介、市川好郎 他。
大阪港南市を縄張りにする老舗の暴力団重宗組は今は構成員50名足らずの弱小組織だが、四代目組長・孝明(藤岡琢也)の女道楽もあり、実質的に組を取り仕切っていたのは姐の遊紀(ゆき)(十朱幸代)だった。重宗組の縄張りの港南市では関西新国際空港建設に向けた土地開発が進み、土地譲渡関係は重宗組が請け負っていたが、「新空港都市開発会社」という不動産会社からの妨害工作が頻発していた。電話連絡もつかず登記上の住所である和歌山の会社事務所を調査すると「新空港都市開発会社」というのはダミー会社で、裏で動いていたのは萬代組傘下の和歌山を縄張りにする河東組(綿引勝彦)である事を突きとめた。
そんな折、遊紀は萬代組若頭で傘下の磐城組組長・磐城忠勝(神山繫)から呼び出しを受ける。内容は孝明の借金2億円を肩代わりする交換条件として、重宗組所有の家屋、土地、代紋を3億で譲って貰いたいというものだった。磐城にキッパリ断りを入れた後、遊紀は昔芸妓だった頃の知り合いで今は徳島に住む八橋松代(草笛光子)の元を訪れ、木本燎二(村上弘明)という凄腕の賭博師と知り合った。燎二は元磐城組の四天王とも呼ばれていたヤクザだった・・・。
主演が第一作の岩下志麻から十朱幸代、監督が五社英雄から土橋亨に代わった『極道の妻たち』シリーズ第二作。
「関西新国際空港」建設をめぐる関西暴力団同士の利権抗争から端を発した物語に、女道楽がやめられないダメ組長に代わり組員のため体を張り、燎二に惚れイカサマ博打で軍資金を作り磐城の<萬代組五代目襲名披露花会>で一泡吹かせようとする遊紀。
五年の刑期を終え別れた女(かたせ梨乃)や娘(戸垣恵理子)と堅気の暮らしを夢見るが、河東に踏みにじられ遊紀と共に最後の賭けに出る燎二、東映映画らしいストーリーが佐川満男、安岡力也、柳沢慎吾、竹内力、光石研、木村一八、月亭八方、草薙幸二郎、市川好郎、夏夕介、遠藤太津朗、名和宏、中島ゆたか、速水典子、高倉美貴、亜湖、和田アキ子など賑々しい共演陣で展開される。
襲名披露の花会で磐城に一矢報いた遊紀が萬代組幹部たちが勢揃いした事務所に乗り込む。
「これからどないする気や」
「港南へもどります」
「家もなしにか」
「掘っ立て小屋くらいまあ何とか建ちますやろ」
「そこで何する気や」
「重宗のカンバンあげますねん」
「何やと!」
「男はんならとうにケツ割ってはりまっしゃろうけど、生憎ウチは女ですさかいに、ほなこれで失礼します」
「待たんかい。わりゃ1万5千の萬代組に喧嘩売る気か?」
「たとえ1万5千が100万でもそちらさんの出方一つでいつでも受けて立ちまっせ」
「わりゃ、正気か!」
「正気もへったくれもそんなもんとうの昔に通り超してるわ。磐城さん、ゆうときまっけどこの先重宗のシマに一歩でも土足で踏み込んで来たらうちら血の一滴が涸れるまで戦うしな。虫けらやと思うてナメとったらその首飛ぶかもしれまへんで!!」。
『極妻』二代目姐十朱幸代にアッパレ。この作品と『夜汽車』(山下耕作監督)『蛍川』(須川栄三監督)と合わせ第42回「毎日映画コンクール」女優主演賞受賞。