『六月燈の三姉妹』(2013年 佐々部清監督)   吹石一恵×津田寛治×吉田羊×徳永えり | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

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『六月燈の三姉妹』(2013年 原作水谷龍二 監督佐々部清 脚本水谷龍二) 

 

出演・吹石一恵、津田寛治、吉田羊、徳永えり、市毛良枝、西田聖志郎 井上順 他。 

 

六月灯(ろくがつどう)の祭りが始まる7月、奈美江(吹石一恵)は実家のある鹿児島に帰っていた。東京で税理士事務所を経営している夫の徹(津田寛治)との間には離婚調停が出されていたが、離婚の意思がない徹はしばらくして奈美江を説得するために鹿児島にやって来る。奈美江の実家の和菓子店には母の惠子(市毛良枝)と元旦那の眞平(西田聖志郎)、長女の静江(吉田羊)三女の栄(徳永えり)が居て、しばらく前に帰っていた奈美江から夫とは離婚すると聞いていた一同は徹の「離婚はしません」という言葉を聞いて驚く。惠子と眞平は離婚していたが、眞平とは同居して一緒に和菓子店を経営し、バツイチの静江は店を手伝い三女の栄は駅前の土産物店で働いていた。長女の静江と次女の奈美江は惠子の最初の亭主の娘で、二番目の亭主眞平の娘の栄とは異父姉妹の関係だった。奈美江と徹の離婚の話し合いは当人同士で決めてという事になりその夜徹はホテルに宿泊し翌日また話し合うことにした。東京でイラストを描いていた奈美江は雑誌社のカメラマンと知り合い、奈美江に気がある男は「六月灯」の取材といって鹿児島にやって来る・・・。

 

異父姉妹の三姉妹と別れた元旦那と同居して和菓子店をやっている母親。結婚した腕のいい和菓子職人の亭主が「飲む打つ買う」の道楽者で亭主と別れた長女、夫の母親との折り合いが悪く実家に帰って来た離婚調停中の次女、妻子ある男と不倫関係にあり悩んでいる三女。鹿児島に古くからある「六月灯」の祭りを舞台に鹿児島弁を縦横に使い、訳ありな家族の物語が商店街を復興させようと知恵を絞る地元商店会のエピソードも交えて描き出される。鹿児島出身でこの作品でも惠子の元旦那を演じている俳優西田聖志郎が企画し、水谷龍二が舞台劇にした作品を映画化。鹿児島を舞台にして地元の鹿児島弁を使い(地方が舞台でも標準語を使う映画も多く見受けられる)地元の「六月灯」の祭りも巧く映画のモチーフとして生かされた好篇。津田寛治のコントのような芝居や適度に差しはさまれるユーモアの効いた台詞やシーンもいい。結婚生活につきものの、旦那の浮気、嫁姑の確執、不倫の話はありきたりとは言え映画で簡単に回答が導き出せるような問題でもない。残念なのは観客の想像力に任せれば良いシーンを説明的な台詞を使って逆に深みに欠ける印象を与えていたこと。

エンディングタイトルに流れる惠子と眞平の再婚を祝福するスチール写真なども余計でテレビドラマのような安っぽい印象が残った。井上順の薩摩男児らしからぬ大根役者ぶりはご愛敬。

津田寛治と吹石一恵、吉田羊がいい演技。☆☆☆★(☆5が満点 ★は0、5点)