「極道の妻たち 決着(けじめ)」中島貞夫監督 1998年 | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

映画感想、読書感想を備忘録として書いてます。
三浦しをん氏のエッセイを愛読しています。
記憶に残る映画と1本でも多く出会えることを願っています。

  井出組組長の妻・春日(岩下志麻)に追い詰められた井出組傘下の暴力団組長・名越(中条きよし)が必死の形相で春日に許しを請う。「ちょっと待ってくれや姐さん、もう一遍話し合おうやないかい。オンナとカスばっかりで井出組どうするつもりや」「お前みたいな腐れ外道片付けるにはオンナとカスで十分や。この一発のタマで井出一家は新しい道を歩いていく。死ね!!」 志麻姐さんのこの啖呵、名越の額を突き抜ける銃弾。

 

シリーズ10作目で岩下志麻のFINAL。(この後東映ビデオ製作で高島礼子・黒谷友香主演の「極妻」が作られた)シリーズ10作目ともなれば脚本を書く側(脚本・高田宏治)にしても目新しさを出すのは容易ではない。

 

オープニング早々、ジムで筋トレ中の秋葉組組長(竹内力)がいきなり射殺されるという予期せぬ形で映画が始まる。ヒットマン玉城(たましろ)を演じているのがトミーズ雅。

 

話は3カ月前にさかのぼる。殺された秋葉の妻・杏子(とよた真帆)が競輪場で倒れていた中年男を拾って井出組に世話を頼む。この中年男五橋が愛川欽也。井出組の若頭番水(ばんすい)が大杉漣。その妻(かたせ梨乃)、番水組組員徳田の妻(藤田朋子)、名越の情婦(細川ふみえ)、ヒットマン玉城の妻(小嶋ゆか)、美人局の盗撮ビデオで金をゆすろうとする井出組組員の恋人(中野若葉)が登場し、女(妻)たちを男たちの生きざまと対比させる脚本が巧い。なかでもルビーモレノを彷彿とさせる新人中野若葉は演技も脱ぎっぷりも素晴らしい。竹内力が殺された後、とよた真帆と愛川欽也ができてしまい、ラストに愛川扮する流れ者の博打打ちと名越組組長中条きよしが賭場で数億の金を賭けて手本引きの勝負するという大胆な演出。愛川欽也の起用がこれまでの「極妻」シリーズになかった雰囲気を醸し出す。エンディングの和田アキ子の歌は無い方が良かったが、悪になり切れない大杉漣、盗撮場面のコミカルな笑い、空撮で始まる仙元誠三の撮影、モダンなセンスが光る栗山和樹の音楽もナイス。中島貞夫のテキサスリーガーズヒット?☆☆☆★(☆5が満点)