「極道記者」望月六郎監督 1993年 | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

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映画感想、読書感想を備忘録として書いてます。
三浦しをん氏のエッセイを愛読しています。
記憶に残る映画と1本でも多く出会えることを願っています。

 スポーツ新聞の競馬記者松崎(奥田瑛二)はトレセンの追切取材にやって来るが、宿酔で柵にもたれて嘔吐する。

同僚の岡林(大杉漣)が穴と見込んだ休養馬の上り1ハロン(約200メートル)が13秒を切るかどうかを賭け2万円をゲット。取材もそこそこに恋人の朱美(川上麻衣子)のマンションを訪ねる。化粧中でこれから出かけるという朱美と否応もなくベッドインする松崎。

 

飲み仲間の梅原が中村というクラブ経営者に秘密麻雀で60万やられ、その仕返しに中村をノミ屋に誘い痛い目に合わせたいという梅原の頼みを渋々飲むことに。

「競馬はね、外れることもあるんだよ」

松崎の企み(競馬予想)は的中したが、受けたノミ屋は背後にやくざが控えた素人ノミ屋。金を払って貰えない梅原は松崎の知り合いのやくざ前川(白竜)に目をつける。松崎と前川は実は高校時代の同級生。大阪の組が2年前につぶれ東京に流れてきた前川は取り立てと示談屋でしのぐ組に属さない一匹狼だ。素人ノミ屋とのいざこざも前川の顔で話がついた松崎たちは行きつけのスナック<再会>で気勢をあげる。

 

そんな折、朱美の妹由紀(鈴木景子)が松崎と関係していたことを知った朱美は<再会>で強い酒をあおる。たまたま店にいた前川と成り行きで手本引きの賭場へ行った朱美はそこで900万の借金を背負うハメになった。前川の仕組んだ筋書きと読んだ松崎は前川を責めるが、「金が要るならいい話があるぜ」という前川の言葉にニヤリと頷いた。

 

前川の紹介で会った高須(蛭子能収)は1年間で2億の金を使い1億4千万を払い戻し、日曜日のメインレースだけ4,5点100万ずつ買うという道楽息子。松崎は高須の馬券指南を引き受ける。朱美の借金900万と賭場の借金500万を背負った松崎の人生を賭けた勝負馬券は吉と出るか。

そんな中、雀荘で若いチンピラとトラブルになった前川がナイフで刺され死んだ。スポーツ紙の競馬欄に連載コラム「はきだめブルース」を書いていた松崎が<再会>から電話で口述原稿をデスクに送る。

「博打打ちの前川が足を刺されて死んだ。死因は出血多量。血は出ているのに競馬が止められなかったらしい。しかし、笑っちゃいけない。競馬好きは多かれ少なかれ出血多量・・・

適当で照れ笑いをしている奴より死ぬまでやった前川にこそ俺は敬意を払う。奴の最後の予想は悲しくも中山に散ったマテリアル。記念のレースは1-6。千円つくのは有り難い」 

 

 京王線府中競馬正門前駅ホームに松崎が一人。到着した電車からはき出される男たちの波に紛れ消えていく松崎。

1着キリスパート(岡部)-2着スーパーソブリン。1-6。「シビレた、前川シビレたよ」

「高須さん、あんたシビレたことありますか。前川がね、もう少しまじめに博奕やれって言ってました」

 

人が去り、競馬新聞が捨てられた東京競馬場、その夕景。

奥田瑛二×望月六郎コンビの「極道記者」シリーズ第1作。リアルタイムであの時代を生きた競馬ファンには身に沁みる映画。☆☆☆☆☆(☆5が満点))