「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」東陽一監督 2010年 | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

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映画感想、読書感想を備忘録として書いてます。
三浦しをん氏のエッセイを愛読しています。
記憶に残る映画と1本でも多く出会えることを願っています。

 某映画サイトレビューを見ると手放しで絶賛するレビューがある一方、「キレイごと」という醒めた評価も多く見られた。7、8年振りで再鑑賞。西原理恵子の元夫で戦場カメラマン鴨志田穣(ゆたか)の自伝的原作を東陽一が脚本監督。戦場カメラマン塚原(浅野忠信)は居酒屋で酒を飲んだあと、帰って来た自宅のトイレで大量に吐血する。塚原の母弘子(香山美子)から連絡を受けた元妻の由紀(永作博美)はすぐに駆け付けるが、いたって冷静に対処する。それもそのはず、塚原が吐血して運ばれるのはこれで10回目だ。救急車で行きつけの病院へ運ばれ3日間昏睡状態だった塚原だが、見舞いにやって来た由紀や二人の子供と無邪気にふざけあう。医師と相談し通院治療する事に決め、抗断酒薬を処方される。「断酒」を誓う塚原だが酒の誘惑に勝てず、コンビニで大量に酒を買い込みあびた挙句公園で昏倒する。そんな塚原に母の弘子や由紀はただあきれかえるばかり。母の勧めで精神病院のアルコール病棟に入院し、今度こそ「断酒」を決意する塚原だったが・・・・。序盤の吐血シーンや由紀と喧嘩になり、暴言をはいて暴れる回想シーンはリアルだ。精神病院のアルコール病棟に入院してからの入院患者たちとの一連のやり取りも面白いし、退院前の塚原の「体験告白」も真に迫る。それでも何か物足りなさを感じるのは塚原を取り巻く家族や入院患者たちが余りにいい人ばかりのためだろうか。元妻の由紀にしても理解と寛容さにどこか嘘くささが感じられてしまう。それなりに描いてはいるが、葛藤不足。実話の映画化に対する制作サイドの配慮があったのだろうか。<幸せないい家族>を描いたようにしか見えない。それを東陽一監督が描きたかったのなら成功なのだが。エンディングに流れる忌野清志郎の主題歌も違和感が漂う。いい映画なのに、強く推すにはどこかためらってしまうのが残念。志賀廣太郎をはじめとするアルコール病棟患者の面々が見せるバイプレーヤーならではの演技は見もの。☆☆☆★(☆5が最高)