横山リエ×吉澤健「天使の恍惚」 若松孝二監督 1972年 | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

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映画感想、読書感想を備忘録として書いてます。
三浦しをん氏のエッセイを愛読しています。
記憶に残る映画と1本でも多く出会えることを願っています。

 

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 ストーリーを書く能力がないので「ATG映画を読む」(フィルムアート社刊)より引用。<爆弾テロによる首都総攻撃を計画する革命組織「四季協会」の秋軍団は、武器奪取のため米軍基地を襲撃する。多大の犠牲を出しながらも奪取した武器は冬軍団二月組に徴収され、兵士たちはリンチに遭う。傷ついた十月組に、上層部から秋軍団を解散し、冬軍団と連合せよという命令が下る。孤立した十月組の生き残りは組織を離れ、個別に爆弾闘争を開始する。「本気で孤立できる奴!個的な闘いを個的に闘える本気の奴らが十月組なんだ!孤立した精鋭が世界を変える、世界を作る!」。次々と爆弾を抱え、壮絶な爆死を遂げる兵士の悲壮美ともいえる姿には、若松が前年ベイルートで製作した『赤軍ーPFLP・世界戦争宣言』で出会った兵士たちが、やがて戦死したことへの沈痛な思いが重ね合わされている。(木全公彦)>映画は1972年3月に公開されたが、映画が撮影開始されたのは71年11月下旬。12月に「警視庁土田警務部長宅への小包爆弾事件」12月24日に「新宿クリスマスツリー爆弾事件」など過激派組織による爆弾事件が続発、「天使の恍惚」も公開が危ぶまれた経緯がある。72年2月には「浅間山荘連合赤軍事件」が起き、マスコミ、世論からこの作品に対する非難も高まった。警察組織からの圧力、右翼、左翼からの脅迫などもあり、<アートシアター日劇文化>での公開は中止、結局東京では<アートシアター新宿文化>1館のみでの公開になった。過激派組織のメンバーの一人、金曜日を演じた横山リエは当初ジャズシンガー安田南がキャスティングされ、71年11月28,29日にはリンチ、ベッドシーンなど20分に渡るシーンが撮影されたが、12月1日に「内容がよくわからないし、思想的にあわない」という手紙を残し失踪、3日間アパートや新宿中を探し回ったが見つからずフィルム2、000フィートがふいになり50万の損害が生じたという。冒頭ナイトクラブで歌う横山リエは安田南の歌唱という山下洋輔の証言があるも、安田南は当時から歌唱力には定評があり声質や歌いっぷりは横山リエに似ているが、映画で歌われているのはお世辞にも上手いとは言えず、独特のアクセントなどから推測すればおそらく横山リエの歌唱だろう。安田南はその後ラジオ番組「気まぐれ飛行船」に片岡義男と共にパーソナリティーとして出演中1978年のある日、誰に告げることもなく忽然と失踪。2009年には既に鬼籍に入ったと言われている(正確な没年月日、死因は不明)。映画の内容に関して言えばこれほど1971年末~72年初めという生な時代の雰囲気をリアルに反映した作品はないのではないだろうか。内容に賛否はあっても、こういう映画が作られ公開されたこと自体驚きだ。ATGと提携だが、モノクロ、パートカラー、脚本出口出、撮影伊東英男、照明磯貝一、音楽山下洋輔、主演吉澤健などいかにも若松プロらしい作品。見所はナイトクラブ(組織の会議室)で歌う冒頭と終盤の横山リエ。☆☆☆☆(☆5が最高)