『先週観た映画』『夏美のホタル』『溺れるナイフ』他 | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

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映画感想、読書感想を備忘録として書いてます。
三浦しをん氏のエッセイを愛読しています。
記憶に残る映画と1本でも多く出会えることを願っています。


 <先週観た映画> 

「あゝ、荒野(後篇)」(岸善幸、2017年)

「溺れるナイフ」(山戸結希、2016年)

「夏美のホタル」(廣木隆一、2016年)

「ムーン・ライト」(バリー・ジェンキンス、2016年)

「長く熱い週末」(ジョン・マッケンジー、1980年)

 

「あゝ、荒野(後篇)」。前篇では主人公の新次(菅田将暉)バリカン(ヤン・イクチュン)芳子(木下あかり)ら3人の生い立ちや大学の<自殺研究サークル>などがメインで描かれていたが、後篇では新次の父の死の原因が母(木村多江)の口から明かされ、<アニキ>と慕っていたバリカンと袂を分かち対決。

芳子も突然、新次の前から姿を消してしまう。後篇も147分と長いが、飽きさせず一気に見せる岸善幸の演出は流石にテレビの世界で数々のドラマ作りの経験を積んできただけに弛みなく力強い。新次とバリカンがリング上で死闘を繰り広げるクライマックスシーンも迫力満点。年間ベストテン上位候補。

ただ、もう一つ<物足りない何か>が残る作品でもあった。

 

「溺れるナイフ」待ち望んでいた映画を<TSUTAYA先行レンタル>でようやく鑑賞。原作はジョージ朝倉(女性漫画家、イラストレーター)が「別冊フレンド」に連載中のもので、山戸結希(やまとゆうき)井土紀州(いづちきしゅう)が脚本化。

不思議な感覚に捉われる映画だ。東京で売れっ子モデルだった15歳(中3)の望月夏芽(小松菜奈)が父の故郷<浮雲町>に引っ越し、そこで出会った土地の神主の跡取り息子の同級生のコウ(菅田将暉)に運命的に惹かれていく。舞台になっている<浮雲町>はジョージ朝倉による想像上のもので、話される言葉は広島弁と上方(関西)方言を混ぜた架空の言葉。実際のロケ地は和歌山県の新宮、那智勝浦周辺の土地。架空の<祭り>で<喧嘩火祭り>が登場する。夏芽をモデルにした写真集を撮る有名カメラマンが広能晶吾。<中上健次的世界>と<仁義なき戦い>、関西テイストに夏芽の東京テイストが混然となった世界。現実とイリュージョン、切れのいいショットと間の抜けたタイミングの悪い音楽の挿入。撮影時26歳だった山戸結希のアンバランスな才能に惹かれる。少女の揺れ動く繊細でヒリヒリした感情を大胆に表現したヒロイン夏芽の小松菜奈が抜群にいい。中学3年生を演じた菅田将暉に注目。夏芽に片想い、落ち込んだ夏芽を励ます同級生大友役の重岡大毅も好演。

 

「夏美のホタル」

東京の写真学科の学生夏美(有村架純)はクラスメートで同じく写真のプロを目指していた恋人の慎吾(工藤阿須加)がプロの道を諦め、実家の造り酒屋を継ぐと言ったことから喧嘩。亡き父との思い出の場所である千葉の田舎町へ一人バイクで旅立った。

飲み物を買うため立ち寄った小さな雑貨店で店主の恵三(光石研)と話を交わすうちホタルの写真を撮るため数日間恵三の家に泊めて貰うことになった。バイクにまたがり疾走する夏美とプロの写真家への道を諦めずホタルの写真を撮る夏美の対比、父との思い出、慎吾との別れ、恵三の過去、恵三の母(吉行和子)の思い、近所に住む仏師(小林薫)から掛けられる厳しい言葉。

ひと夏の出来事が夏美に<人生の大事な何か>を教える。大きな事件が起きるわけでなく、淡々とした日常の中にある<幸福とは何か>を考えさせるような映画だ。3年後のエピローグは不要な気がする。エンディングに使われるモノクロの写真、Uruの主題歌「星の中の君」がいい。

 

「長く熱い週末」日本では劇場未公開。<TSUTAYA発掘良品>タイトルバックから典型的なB級映画の出だしだが、中盤過ぎから本格派の犯罪映画の雰囲気が出てきて流石<発掘良品>と感じさせる。ボブ・ホスキンス、ヘレン・ミレンの共演。ギャングのボス、ボブ・ホスキンスが名演技を見せる。ヘレン・ミレンがホスキンスの妻役で熟女の魅力。英国映画協会「20世紀のイギリス映画ベスト100」21位選出。

 

「ムーン・ライト」本年度アカデミー賞作品賞受賞。しっかりと組み立てられた脚本で良く出来た作品も、型にはまった窮屈さ、破綻のない先が読めてしまう展開、次回作でどんな作品を作るのか期待。今年最後のブログになりました。この一年ご訪問、コメントありがとうございました。来年も宜しくお願い致します。

来年が皆様にとって良い一年でありますように。

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