「ナック」 リチャード・レスター監督 1965年 | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

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 「ビートルズがやって来る ヤア!ヤア!ヤア!」(64年)「HELP! 四人はアイドル」(65年)「ジャガーノート」(74年)などの作品で知られるリチャード・レスター監督はイギリス出身ではなく、生まれはアメリカのペンシルベニア州フィラディルフィア。地元のペンシルベニア大学に入ったのは15歳の時。いわゆる飛び級入学の天才少年だったということか。

大学では臨床心理学を専攻し、卒業後地元のTV局に入社、その後1954年に渡欧し英国では様々な仕事につき、TVシリーズにも出演、多くのTVCMを手掛けている。父は劇作家。この経歴を知るとレスターの「ナック」という作品における天才ぶりが何となく理解できたような気がする。

 

「ナック」の魅力を箇条書き的に挙げると、<ジョン・バリーの音楽 ><映像(ポップかつシュール)><会話(セリフの応酬の面白さ)><多様な視点(大人から見た若者像)><英国流ユーモア><主要4人のコントラストの面白さ>となるだろうか。

 

小学校教師のコリン(マイケル・クロフォード)は真面目で女性に関しては奥手の若者。アパートに同居するミュージシャンのトーレン(レイ・ブルックス)は女を落とすコツ(knack)を知り尽くしたモテモテ男。コリンはトーレンに女性にもてるコツの伝授を請うが上手くいかない。田舎町からロンドンにやって来た娘ナンシー(リタ・トゥシンハム)はYWCAの場所が分からず街のなかで右往左往、ペンキアーティストのトム(ドナル・ドネリー)はコリンのアパートの空き部屋に上がりこんで勝手にペンキを塗り始める・・・

 

オープニングのクレジットシーンからレスターマジックが縦横に炸裂、白昼夢のようなめまいにおそわれる。ジョン・バリーがメインテーマ曲をシーンごとに巧みにアレンジし、ポップな作品に相応しい<軽さ><気取りのなさ><ごちゃまぜな感覚>の面白さを生んでいる。コリン、トム、ナンシーが初めて出会うスクラップ置き場からベッドを運んで行く街中のシークエンスは本作でも白眉の魅力を見せる。大人たちは若者たちの無茶、無軌道ぶりに眉をひそめ、嘆息する。コメディ、青春恋愛劇でありながら、大人vs若者、世代間のギャップ、世相をたくみに反映させたリチャード・レスターの才能に脱帽。ジェーン・バーキン、ジャクリーン・ビセット、シャーロット・ランプリングがこの作品でデビュー。並み居る美女の中から彼女たちを探すのもお楽しみ。

カンヌ国際映画祭グランプリ作品。☆☆☆☆☆(☆5つが満点)

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