「淵に立つ」 深田晃司監督 2016年 | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

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 カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞。

キネマ旬報ベストテン第3位。近年、海外の映画祭に日本から出品、招待される作品は多いが、受賞となるとハードルは高い。「淵に立つ」のカンヌ審査員賞受賞は肯けるものだった。

キネ旬ベストテンの10位までの作品の内、1位のアニメ映画「この世界の片隅に」6位の「リップヴァンウィンクルの花嫁」(これから鑑賞)以外の8本を観たが、海外の映画祭でも通用するのは私見では「永い言い訳」(西川美和監督)と、この「淵に立つ」ではないかと思った。「永い言い訳」には十分なエンタメ性があったが、「淵に立つ」には前半の数十分以外、それがほとんど感じられない。ミヒャエル・ハネケの作品を観ているような、緊張、苦痛、忍耐を観客は求められる。問題は解決しないし、投げ出されたまま映画は終わる。

 

小さな金属加工工場を営む鈴岡利雄(古舘寛治)の前にある日、利雄の旧知で服役を終えたばかりの八坂(浅野忠信)が現れる。工場で雇うことになり、家の空き部屋に住むことになった。

鈴岡の一人娘・蛍のオルガン練習をみてやったり、言葉使いも丁寧で礼儀正しい八坂に鈴岡の妻・章江(筒井真理子)も好意を抱き始める。そんな中、八坂が起こしたある忌まわしい事件が鈴岡一家の運命を暗転させてしまう。浅野忠信が心の内が読めない不気味さをもった男を演じて際立った存在感を見せる。鈴岡を演じた古舘寛治も独特なリアリティを感じさせ、ドラマにメリハリのある緊張感を生み出す。鈴岡の妻・章江を演じた筒井真理子が傑出した演技で毎日映画コンクール女優主演賞、ヨコハマ映画祭最優秀主演女優賞、高崎映画祭主演女優賞受賞。キネマ旬報ベストテンでは、助演女優賞で選出した選者もいたので主演女優賞には届かなかったが、自分的には「湯を沸かすほどの熱い愛」の宮沢りえより(宮沢りえも良かった)むしろ筒井真理子を推したい。監督の深田晃司は「家族の不条理を描きたかった」と語っている。「永い言い訳」は主人公と家族の再生がテーマだった。

娯楽映画一辺倒の映画ファンには向かないが、欧州映画やミヒャエル・ハネケ、ロベール・ブレッソンなどが好きな映画ファンにはおすすめ。☆☆☆☆★(☆5が満点)

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