4年前の今頃

夫の甥っ子の結婚式出席のため

2人で熊本に行きました


お祝い事に夫婦でお呼ばれするのは

始めてでした


夫は

とても嬉しそうでした


私の洋服選びにも

珍しく付き添って

一緒に似合うものを探してくれました


高速バスで約3時間


1泊の滞在でしたが

季節も天気もよく

久しぶりの遠出で 

2人とも浮き足立っていました


昨日のように思い出す

夫がいつも隣に居る安心感


座席の横には夫

荷物を持って私の前を歩く夫


何かに興味を引かれて

私が道を逸れても

振り返れば視界の範囲内には

夫の姿が見える…


それが自然で

当たり前だと思っていた私は

夫の後ろ楯の下

自由奔放に動き回り

笑顔を振り撒いていました


世間知らずなのに

怖いもの知らず…


夫さえ居れば

何があっても大丈夫だと

過信していました


その翌年

そんな思い込みが

ガラガラと崩れ落ちていくとは

これっぽっちも考えていませんでした


甥の結婚式の後

式場の教会の階段前で

写真を撮ってもらいました


幸せそうな笑みを浮かべて

2人並んで写っています


まさか

その写真の夫が

遺影写真として使われるとは

思ってもいませんでした


すでに

病魔は潜んでいたのかもしれません


けれど

血色の良い肌と

ぷくぷくとした頬…

がっしりとしたスーツ姿で

元気そのものだった夫に

そんな気配は全く見当たりませんでした


私達には

『癌』という言葉など

全く無関係だと思っていたあの頃…


あれから3年足らずの間に

夫は命を削り

逝ってしまいました


また同じ季節が巡ってきて

旅先で元気にはしゃいでいた自分達を思い出します


いつでも

どこにでも

何度でも

これから先

2人で旅行できると思っていました


運命とは残酷なものです


あっけなく

大切な人を奪ってしまうのですから…


あの時の2人の写真は

家の1階と2階に飾ってあります


自分達に起こる試練を

まだ知らなかった

心穏やかだった日…


私の横で

にこやかに立って写っている夫が

今はもう居ないという事実は

夫婦という対の写真半分を

切り取られてしまった感覚です


私が逝ったら

その写真を

夫と同じように

遺影写真に使ってほしいと思っています


夫の横で

嬉しそうに

無防備に笑っている私…


あれ以上に

自然な笑顔は

今後はもうあり得ないからです


夫を喪うという経験から

抱え込んでしまった哀しみや寂しさは

目の奥に刻まれたまま

隠し通すことができません


いくら笑っているつもりでも

どこか以前とは違うのです


レンズは正直です


夫も

あの写真の私なら

きっと見つけてくれるだろうと信じてます