吟行は続く。

ここ田原地区は茶生産にも力を入れていて、県の茶研究センターもある。

ただ衰退する農村の常で、茶生産から離農する人も多いという。儲からないらしい。

ただ周りを見渡すと山の斜面に茶畑が広がっていて、下から見るとゆるく反り上がるように山頂へと向かっていた。

この地区の茶畑の整備事業の過程で昭和54年古代の墳墓が見つかった。墓には銅板の墓誌が残っていて、この墓が太安萬侶という古事記の編纂に関わった人だと分かった。

古代に生きた人の墓が特定されるのは珍しい。

ただ墓の前に建てられた案内板には、今では全く識別がつかない墓誌が載っていた（写真？）のは皮肉が効いていた。

この墳墓は茶畑の中にある。

茶畑は傾斜地にあるため坂道はきつく、耕作放棄されてぼうぼうに延びている茶畑の道をハアハアいいながら登って行った。

墓が発見された時からおよそ四十年が経ち、随分とこの地区の風景も変わってしまったのだろうな？

そんなことを考えながら茶畑を下った。

吟行句会 田原地区5