石仏 石 仏 ー晩秋 吉野 弘 うしろで 優雅な、低い話し声がする。 ふりかえると 人はいなくて 温顔の石仏が三体 ふっと 口をつぐんでしまわれた。 秋が余りに静かなので 石仏であることを お忘れになって お話などなさったらしい。 其処だけ不思議なほど明るく 枯草が、こまかく揺れている。