マルグレーテ2世女王が4人の孫から王子、王女の称号と「殿下(His/Her Highness)」の敬称を取り消すことを発表した。該当するのは次男のヨアキム王子の4人の子どもたち。最初の妻アレクサンドラ・マンリーとの間に生まれた23歳のニコライ王子と20歳のフェリックス王子、現在の妻であるマリー妃との間に生まれた13歳のヘンリック王子と10歳のアテナ王女である。4人は2023年1月1日からモンペザ伯爵子女と呼ばれ、敬称は「閣下(His/Her Excellency)」になる。王位継承権は今後も与えられ、順位も現在のニコライ王子の7位からアテナ王女の10位まで変わらない。-ELLE

 

英国では、ヘンリー&メーガンさんが、子どもへの称号授与を熱望しているが、一方で、欧州王室では、王室のスリム化が進んでいる。スウェーデン王室でもデンマーク王室に先んじてスウェーデンのカール16世グスタフ国王が、5人の孫を王室から除名。肥大化する王室をスリム化するのが狙いである。原則的に直系以外の子孫については王子・王女の称号を与えないという風潮となっている。

 

ちなみに、現在のデンマーク王室は、グリュックスブルク家であるが、ノルウェー王も同家である。なお、ギリシャ国王も輩出しているが、それはゲオルギオス1世であり、その孫が実は現英国王のチャールズⅢ世である。現在、大騒ぎになっているロシア・ウクライナ戦争であるが、もともとロシアを統治していたのがロマノフ王朝で、最期の皇帝がニコライⅡ世であるが、イギリス国王ジョージ5世は従兄関係にあったりする。そのほかにもスウェーデン・ルクセンブルクの王家・公家などとも縁戚関係にある。

 

ここらへんが現代の日本人には分かりにくいが、ヨーロッパは政略結婚で王族同士が婚姻関係を結び、領地の取り合いをしていたのだ。ギリシャは王制を廃止しているが、血筋の関係でギリシャ王家の血筋の人は、承認されればデンマーク貴族の称号を得ることができるようである。

 

フランスはフランス革命で貴族は断頭台に送られ、その後に王政復古もあったが現在は共和制であり、公的に貴族制は存在しない。ギリシャ・イタリア・ドイツ・ルーマニア・ブルガリアも王室を廃止し、ロシアも革命で皇室が廃絶されている。現在、ヨーロッパはイギリス・スペイン・ベルギー・ルクセンブルク・リヒシュタイン・モナコなどが君主制となっているのみである。ただ各王家の血筋は現在でも続いており、王位継承権などは相続されている。ただビザンチン帝国(東ローマ帝国)の末裔を自称する人もいて、日本でもパーティを開催していたりするが、実際どの程度の信憑性があるのかは謎である。

 

なお、ルクセンブルク・リヒシュタイン・モナコなどはいずれも小国である。デンマークも北欧では影響力があるが、人口580万程度で、千葉県の人口630万よりも小さい。リヒシュタインは約4万人で、日本だと”市”になるに人口5万人必要なので、日本だと”村”の扱いである。とはいえ、リヒシュタインの国家元首ハンス・アダムⅡ世は、7000億円程度を保有する大富豪であるので、人口規模と豊かさはイコールではない。英国王の個人資産が600~700億程度であることを考えると、相当リッチである。日本でいうと、”藩”が残っていれば、かなり豊かな”藩主”の感じだろう(加賀百万石の前田家みたいな感じだろうか)。

 

ちなみに、元王族・元貴族がそのまま没落する場合もあるが(眞子様は小室氏に嫁いだが没落皇族になりそうで不安だ・・・)、上流階級の社交界は現在でも残っているようで(直接は知らないので伝聞(笑))、その血統を求める超富裕層も多い。ギリシャ元国王コンスタンティノスⅡ世の長男パウロスさん(元王太子)に嫁いだのはマリー・シャンタルさんだが、父親はラグジュアリートラベルリテーラーのDFS創業者(空港免税店などを経営)。父親の総資産は3000~4000億円だそうだが世界1513位の大富豪で、結婚式に10憶余りをかけ、持参金は300~400億程度だという。

 

2019年には、ナポレオン・ボナパルトの子孫であるジャン=クリストフ・ナポレオン・ボナパルトと、オーストリア帝国最後の皇帝の曾孫にあたるオリンピア・フォン・ウント・ツー・アルコ=ツィネベルグが結婚して話題を集めた(LINK)。ヨーロッパを席巻したハプスブルク家の現在の当主は、カール・ハプスブルク=ロートリンゲンであるが、資産家のティッセン=ボルネミッサ男爵家のフランツェスカと結婚していた(王家と下級貴族との貴賤結婚に当たる。その後、離婚し再婚)。

 

いまだに共和制のフランス・イタリア・ドイツでも元貴族はそれなりに社会的な地位を占めているようであり、代々の貴族称号を自称する場合も多いようである。ただ実際には称号に見合った資産を維持できているのは一部であろう。免税特権などもないのであれば、称号にそもそも実益はない。ただ称号が象徴する高貴な血統と社会階級はやはりいまでも一定の威光が存在する。特に華族制を廃止した、総中流社会の日本などでは、称号の高貴な響きは興味をさそう。