最近ニュースで、セレブな生活に憧れて身を滅ぼしている若者が散見される。

 

経産省のキャリア官僚2名が給付金詐欺を行って逮捕され、2021年12月に実刑が出ている(LINK)。経産省係長の桜井真被告(29)は、懲役2年6カ月(求刑・懲役4年6カ月)の実刑で、桜井被告の指示に従ったとされる課員の新井雄太郎被告(28)は、懲役2年執行猶予4年(求刑・懲役3年)とした。桜井真は都心のタワマンで高級車に高級時計を購入して羽振りが良かったそうだが、資金の出元は給付金詐欺で得た金だった。

 

東京国税局の職員など男女7人が逮捕された事件も衝撃的だった(LINK)。東京国税局鶴見税務署の職員、塚本晃平容疑者と中村上総被告、大和証券の元社員中峯竜晟被告などが含まれる。世間的にみれば社会的には真っ当な勤め先である。逮捕された元不動産会社社員の佐藤凜果被告は、セミナーで中峯被告に知り合ったそうだ。犯行におよんだ理由として、裁判で「後に2000万円が必要だと聞き、将来への不安がありました」(LINK)で回答している。

 

さらに直近で衝撃的だったのは、高井凜容疑者(28)である。資産家女性を保険金のために殺害した容疑に問われて逮捕され、留置施設で自殺した(LINK)。関西の名門の関西学院に中学から学び、アメフト部で、アクセンチュアを経てプルデンシャル生命と、はたからみれば順風満帆である。赤坂のタワマンに住んで高級車を所有していたそうだが、プルデンシャル生命で強引な営業が問題となり職を失い、金銭に困っており、今回の事件におよんだとみられていた。

※ちなみに、アクセンチュアは外資系コンサルだが、2万人規模の大手で、就職はそこまでの難関ではない。外資系コンサルというと凄そうだが、超難関なのは、あくまでマッキンゼー・ボスコンなどの戦略コンサルのみである。アクセンチュアの採用大学のトップは慶應で、次いで早大で、7位に明治大、9~10位には上智・同志社・理科大が並ぶ。東・京・一・工・海外トップ校しか採用しないみたいな超エリート企業ではない。

 

加害者になる者もいれば被害者もいる。「モノなしマルチ商法」被害が20代で急増し、自殺しているケースも報道されている(LINK)。なんでこんなことになっているかといえば、日本はここ30年給与は上がらず増税が繰り返されて手取りは減少。経済はピークアウト、高齢者が増加しており、年金額も現在の水準は維持される可能性が低く、老後の生活の心配が大きい。しかし、ネットの普及で、SNSではセレブ生活をアピールする人を容易に見つけることができる(社会全体でアノミー化が進む)。そして、この格差が生じているのは投資をするかしないかであり、単に真面目に働いても稼げないなら稼げる投資をしようと考える若者が多いのだと思う。しかし、投資知識が乏しくマルチ商法やネズミ講・ポンジースキームなどにコロッと騙されてしまうのだろう。

 

これを解決するには、①若者の老後への不安等を軽減する、②金融知識を身に着けさせる、③金商法違反等を厳罰化する、④メディアリテラシーのみならずSNSリテラシー教育を行う、等が考えられる。①は日本経済の状況を踏まえて仕方がないにして、②については、最近は金融教育が進んできているとは聞く。③は被害者団体の国政への働きかけに期待したい。問題は④である。SNSリテラシー教育は必要だと思う。SNSでセレブアピールしている人の多くは、タワマン暮らしで、これ見よがしなブランド品に、海外のリゾートをアピールするが、真っ当な富裕層は極一部であろう(ちなみにいうと、賢い富裕層はあえて国税に狙われるような露出はしない笑)。マルチ商法やネズミ講・ポンジースキームのツールとして使われている場合も多い。一時的によくても逮捕されて消えていくが、すぐ次に新たな詐欺師が現れて新たな被害者を生み出す。

 

本来であればなかなか目にすることができないセレブ生活がSNAで容易に垣間見えるようになるが、しかし、現実には高給取りになれるのは極一部であり、このギャップゆえに「アノミー化」が進む。そのギャップを手軽に埋める手段として給付金詐欺や、マルチ商法やネズミ講・ポンジースキームなどの投資詐欺が増えているのだと思う。

 

投資界は勝敗が分かりやすく分かれる。一部の勝ち組に憧れる人が多いが、多数の屍に目がいかないのだ;典型的な「生存バイアス」である。問題なのはここらへんの投資・金融の基礎知識を概念が理解できない人の多さである。社会の下層は想像以上に大きいマーケットなので詐欺師などにとっては格好のカモなのだ。残念ながら、詐欺師が馬鹿を食い物にすることはなくならないだろう。バカならバカなりに、理解できないものには近づかないという本能ぐらいあってほしいものだが、残念ながらその願いはかなわない。