NHKでムチェについてやっていた。メキシコ南部のフチタンという町に住むサポテコ族という少数民族は、自由に性の選択がなされ、ムシェ(女性として暮らす男性)、マリマチャ(男性として暮らす女性)と呼ばれる人々がいるらしい。メキシコというと勝手に男らしさを重視する社会だと思ったが、こうした民族もいるのだ。インドでもヒジュラと呼ばれる女として生きる男性もいる。
歴史的にみると日本は性的少数者(LGBT)には寛容で、伝統芸能の歌舞伎も男色の温床だったといわれる。LGBTの映画祭も毎年日本で開かれている。日本がLGBTに差別観を持ち始めたきっかけは、明治期にキリスト教的な価値観が輸入されてからである。しかし、もともと日本は様々な物事に寛容なので、現在の同性愛許容度をみても日本は決して低くはない(電通総研調査)。許容度を0~10で示すと(10が最も許容度が高い)、同性愛の結婚が可能な米国は4.6だが、日本は4.8である。なお、スウェーデン8.4・オランダ7.7・フランス6.5・カナダ5.7・タイ3.1・インド3.0・韓国2.8である。タイはゲイが多いというが、実が日本の方が許容度は高い。
※「LGBT」は、ゲイ・レズ・バイ・トランスジェンダーの略で、「性的少数派」の総称である。カリフォルニア大の調査だと、約4%がLGBTだという。
米国企業のゴールドマンサックスはLGBT専用の説明会を開いているらしい(日本でももちろん開催されている)。LGBTは高学歴・高IQが多いので、LGBT採用は合理的だという。また、LGBT市場は巨大なので、彼らの需要を取り込もうとする戦略の一つともいわれる。田舎だとLGBTは同類に出会える確率が低いので都会を目指すらしいが、都会に出るために人一倍努力するので学力が高い傾向があるらしい。女性的な思考と男性的思考の両方を持っているために、思考能力が高いとも言われる。
GoogleもLGBTフレンドリーなことで知られる。東大京大などの最優秀なLGBTほどそうした外資系企業を目指すらしく、日本にとっては頭脳流出になっている。明治期に輸入した制度を日本の伝統と哀れにも勘違いしているお馬鹿な保守派政治家は、制度や法改正に消極的だが、古い制度を改正して自由度の高い多様性のある社会に切り替えないと、世界の潮流に日本は置いて行かれるだろう。東京がLGBTのカップルの権利を保護すれば、海外の優秀なLGBTも東京を目指し、国益になるだろう。
米国はLGBTの結婚を保護した結果、LGBTの結婚が急増し、結婚市場が活性化した。NY州だけでも経済効果は数百億に及ぶ。LGBTの市場は米国だけでも数十兆円といわれ、日本でも数兆円規模はあるだろう。もし東京がLGBTの権利を保護すれば、海外の優秀なLGBTが東京の企業を目指すだろう。IT革命を起こした企業が密集するのがLGBTやヒッピーの多かったカリフォルニアなのが興味深い。寛容さと多様性を尊重する都市ほど発展するのだ。リチャード・フロリダが「クリエイティブ都市論」で指摘する通りである。クリエイティブな社会へと日本は移行する岐路にさしかかっているが、地方自治体の首長の選挙で原発か脱原発化を争点にするような老害政治家が幅を利かしているようでは日本の未来は暗いだろう。