大学生の数学力が低下しているのではないかという危惧から、日本数学会は大学生の数学力の調査を行い、その結果が発表された。理事長の東大教授の宮岡氏は「かなりショッキングなことが起こっている」と発言。小中学生レベルの基礎的な数学が理解できていない大学生が散見されたのである。国立情報学研究所の新井教授は「論理的コミュニケーションの前提が崩壊している答案が非常に増えた」と発言。AO入試・推薦入試の拡大、ゆとり教育などが影響しているとみられる。科学技術立国の日本にとって知的水準を高めることは不可欠と指摘している。


しかし、こうした調査を鵜呑みには出来ない。というのも、1990年の大学進学率は24.6%だが、2009年には50%を突破している。大学生の数が増えたのだから、相対的に質が落ちるのは当然な気もするが。しかも、この調査は今回初実施で、最近になって大学生の数学力が低下したかどうかまでは分からない。報告によると難関大学の正答率は高かったそうだから、昔からある上位大学の数学力はさほど低下していないのかもしれない。数学力低下のニュースより、こうしたニュースを鵜呑みにするメディアリテラシーの欠如の方が問題だと思うが。とはいえ、数学力は重要という点を否定する気はない。数学力アップは良いことだ。だが、大人が勝手にゆとり教育を導入しておいて、最近の大学生は数学力がないというのは、若者からするとやや迷惑である。


あと、数学力向上もいいが英語力向上も必要かと思う。高校卒業程度の英語力は英検2級程度(TOEIC に換算すると500点代程度)と言われるが、埼玉大学入学生のTOEIC平均は406点だったそうだ。広島大の平均は471点。埼玉大・広島大も平均以上の国立大だが、平均点が500点にすら達してない。TOEICは技術的な要素が強いというがさすがに高校卒業程度(500点)はあっていいと思うが。英語教育も改革が必要だろう。


あと、話がややそれるが、大学進学率の話を書いて思い出したが、大学進学率は都道府県格差が酷い。

大学進学率(平成22年のデータ、一部抜粋:小数点第一位切捨て))

東京都65%

神奈川61%

愛知県60%

鹿児島41%

岩手県40%

沖縄県36%

東京と沖縄では29%の差。だいたい進学率と平均年収のランキングは相関性があり、経済力のある県ほど大学進学率が高い。平均で大卒と高卒は年収で150万円以上の差がある。結局、経済力のある県に生まれると大学に進学しやすく、結果的に高い給料をもらえる確率が高くなる。そもそも田舎じゃお金のある家庭でも、ろくな予備校がないので勉強をしたくても思うようには出来ない。数学力向上もいいが、都道府県によって受けられる教育に差が出るというのも是正して欲しいものだ。