東京大が秋入学への移行を検討している。世界的に多数派の秋入学に移行することで、留学生の受け入れを増やし、国際的な大学間競争に耐える教育環境を整備するのが目的だそうだ。春に大学入試を終え、秋に入学させることで、半年のギャップ期間が出来る。その期間は、留学・ボランティアに当ててもらうそうだ。

しかし、大学の国際化と秋入学は分けて考えるべきだろう。秋入学しても必ずしも国際化につながるとも限らない。それに半年間入学するのが遅れればその分家計への負担も増える。しかも、半年間は留学・ボランティアに当ててもらうなんてのは理想だろうが実際は難しいだろう。留学はある程度の金銭的余裕のある家庭じゃないと出来ないし、ボランティアやるぐらいならバイトするのが普通だろう。就職活動の時期もズレてしまう。例えば東京大だけが秋入学に踏み切れば、京都大・一橋大・東京工業大などの他の有力大へ優秀な学生が流出するやもしれない(これはこれで東京大への一極集中がなくなっていいかもしれないが)。そういうことはすべて織り込み済みでわざわざ問題提起しているのだろうけどね。

個人的には秋入学に賛成。とはいえ、いろいろパターンは考えられる。秋入学にして卒業も半年遅らせると現行就活時期とズレるから、秋入学にして半年大学期間を短くして卒業の時点で帳尻を合わせるとか。それかいっそのこと大学秋入学に合わせて就職時期とかも全部、秋入社にしてしまうとか。まぁ、ここらへんは国、大学、企業の方々がいろいろ議論するんでしょうが、どう動くか注目ですね。

ところで、なんでこんな東京大は国際化を図ろうとしているのか。それは国際競争力にあるそうです。例えば、QS世界ランキングによると、韓国の名門ソウル大は60位代から40位代へ個々数年上昇しているが、東京大はというと低下傾向で香港大へ追い抜かされた。シンガポール国立大も東京大に肉薄している。実はアジアの大学のみのランキングもある「Asian University Rankings 2011」。これによると、東京大はアジア4位(1位香港科技大,2位香港大,3位シンガポール国立大)。ただトップ10校のうち5校は日本の大学というのは見落としては行けないだろう。今後、インド(英語が公用語)の台頭も考えると日本もうかうかしていられないのだろう。

しかし、先のQS世界ランキングだが、総合では東京大25位だが、グローバル化がされていないとかいう今の状態でも、学部別でみると「Engineering & Technology」世界7位、「Natural Sciences」世界9位、「Life Sciences & Medicine」世界8位、「Arts & Humanities」世界11位とかなり上位。天下のハーバード大学は「Engineering & Technology」に関しては世界17位。だいたいこんなランキングなんてちょっとデータをいじれば順位は大きく変動する(だいたい世界各国にある大学のデータをどの程度正確に収集してるのか疑問)。 しかも、あくまで私企業のランキングだし、公平性の点でもやや疑問が。眉唾かもしれないが、フランスが出すランキングだと、ドイツは低く評価され、ドイツの出すランキングだとフランスが低く出る傾向があるらしい(結果なんていかようにもできる)。国際化が重要には違わないけど、世界ランキングの妄信もどうかしてる。というか、日本も日本基準の世界大学ランキングを出せばいいのに。

ちなみに、このまま低出生率が続くと、2050年の出生数の予想は43万人。ちなみに、1990年前後生まれは同年齢が約120万人。ちなみに、ベビーブームピークの1973年生まれは209万人。今後は大学の大淘汰時代になるのでしょうね。国際化もいいが、少子化どうにかしないと、このままじゃそもそも大学で学ぶ学生がいなくなってしまうぞ。

あとどうでもいいが、ちょっと気になったのが「桜の咲く春に入学するのは日本の伝統(だから秋入学反対)」ってどっかの大学の学長が言ってたこと。伝統とかいうが明治・大正期は秋入学だった。たしかに春入学が生活様式に定着してるのは分かるが、思考停止しているとしか思えない。「伝統だから」この一言で思考停止。そんなことだから制度改革が遅れるのでは。これは伝統の尊重ではなく、ただの改革の怠慢だろう。