少し前のニュースで、数学・物理が得意だと年収が高いというニュースをやっていた(京都大・同志社大らの調査)。なお、同じく京都大・同志社大の調査だと、文系より理系の方が年収が100万円ほど高いという調査結果を発表していた。また、キャリアコネクションの調査でも、理系の方が90万円近く文系よりは年収が高いというデータがある。最近、理系が有利というニュースが多いように感じる。しかし、実際、理系の方が年収が高い傾向はあるのだろうか?

キャリアコネクションのデータだとたしかに全体では理系の方が文系より年収が高い(文系551万・理系638万)。しかし、学部別でみると様相は大きく異なる。

学部  年収   男女比
工学部 661.1万 90:10
理学部 616.1万 81:19
法学部 615.3万 77:23
経済学 608.3万 83:17
商経営 604.3万 76:24
薬学部 551.4万 52:45
農学部 526.3万 58:42
社会学 464.9万 57:43
文学部 409.5万 25:75

工学部が高いが、理学部と法学部・経済学部・商経営はデータの誤差の範囲内だろう。また、農学部・薬学部であれば法・経済・商経営の方が年収が高い。学部を見てわかるように、文系の平均年収は、社会学・文学部が押し下げていることがわかる。つまり、社会科学系の学部(法学・商学・経済・経営)の年収は理系と比べて低いとはいえない。

なお、東大・早稲田・慶應大では興味深い結果となっている。
・東京大:法学部:1158.7万・工学部:1057.6万・農学700.5万
・早稲田:政経部:762.7万・理工学:758.3万
・慶応大:法学部:728.2万・商学部728.1万・理工学:677.0万
この3大学においても、社会科学系の文系学部が理系に年収で劣るということはいえない。

次に男女比に注目してみよう。工学部は9割が男性、法学・経済・商経営も7~8割が男性である。年収が600万を割る学部、薬学・農学は4割が女性、年収が500万を割る社会学は4割が女性、文学部にいたっては8割近くが女性が占めている。平均年収が高い学部は男性の割合が高いといえるのである。いまだに企業では男性が総合職、女性が一般職という傾向が強いが、総合職は一般職より年収が高い傾向がある。つまり、男性は総合職などの年収の高い部に配属される可能性が高く、その結果、男性が多い学部は年収平均が高いのだろう。

しかも、このキャリアコネクションなどの調査は大学で理系・文系を分類しているが、理系の場合、院への進学率が高く、理系は院卒が多いために平均年収が高いという可能性も否定できない。

以上のようにみてみると、文系でも社会科学系学部か人文科学系学部かによって大幅に年収に差があり、性別によっても差が生じている可能性が高いといえるだろう。また、理系でも、工学部・理学部が年収を押し上げているが、農学部・薬学部の年収は必ずしも高くないといえよう。

なお、文系の方が分母数が多いというもあるが、社長になりやすい大学・学部ランキングをみてみると、1位東京大学経済学部・2位東京大学法学部・3位慶應義塾大学経済学部となっており、トップ30のうち理系は5つしかランクしていない。企業経営はやはり文系が有利のようだ。1億円以上の報酬をもらう役員も約3割が経済学部出身となっている。

だが、理系・文系というが、最近はAO入試・推薦入試のような非学力入試で入学する人も多く、理系か文系かという問題以前の学生が多いのも事実だろう。ま、好きな学部に行くのが一番ですけどね。


(参考)
・キャリアコネクション:http://careerconnection.jp/review/weekly20090810.html
・NHKニュース:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111023/t10013444074000.html