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 ジルコニア

イラストやら漫画やら小説をまったりと載せていくつもりです。

ごゆるりとお過ごし下さいませ

まず、今回の東北関東大震災で被害に遭われた方々に心からお見舞いを申し上げます。

地震って本当に怖いですね…
いまだに緊急自身速報の音を聞くと、体が固まります。

私も今自分で何が出来るかを考えて行動したいと思います。



短いですが、小説+ポエムちっくなものを一つ…



「春よ恋」



冷たくなった手が何かを求めて 空を切る。

何か 何か 何か

そう呟くながら、私は誰もいない校庭を歩く。
遠くで晩ご飯のカレーの香りがしている。
焦る気持ちをこらえ、ひたすらあの木を目指して行く。

今度はいつ会えるかな?

彼の前で小さくそう呟いた、卒業式の前日。
賑やかすぎる私のクラスでは届くはずも無いと思った。

卒業式の日。

私は彼をずっと見ていた。
もうお別れなのね。

桜の木の下にいる彼は、笑っている。
ねぇ、桜。
私はあの笑顔を絶対忘れないわ。

今日はその区切りの日なの。
夕焼け雲の下、私は桜の木の前。

ねぇ、桜。
私は絶対に負けないわ。
だからね、早く春を呼んできてちょうだいな。



本当にご無沙汰しておりまして、すいません…
天霧ありすです。

今日からぼちぼちとこの「ジルコニア」も始動していきたいと
思いますので、皆さんどうぞよろしくお願いします!

たぶん近況報告なんかもちょくちょく入れていきますので、
お時間があれば覗いてみてくださいね^^

また、同人誌のイベント参加も現在考えております!!
詳しく決まり次第、こちらにアップしますので
よろしくお願いします。

「八十八日間、恋の始まり」


 「米」っていう字は八十八って書くのを知っているか? 昔米を作るためには八十八日間ぐらい手間暇がかかるって言われていたんだ。苦労してやっと実った稲穂っていうのはまた農家の人にとって格別なんだろうな。
 なんの因果か俺の恋もちょうど八十八日間ぴったりで実った。しかも苦労して作った米を炊いて、ぎゅっと丸め込んだ「おにぎり」で俺はあいつに恋をした。
 訳が解らない? ま、その通りかも知れない。なにしろあいつの作ったおにぎりは果たしておにぎりと呼べるかどうかも怪しい代物だった。ただ丸めただけ、俺が手を付けるとすぐモロモロと砕け散るような、そんなもの。
 でも俺はそれより、そのおにぎりを握ったあいつに興味を持った。そう食べる直前に俺にあんなことを言ったから。
「それ、中身何も入ってないから」
 ただ米を握っただけ。にぎり。
「これは……おにぎりですか?」
「にぎってあるから、おにぎりです」
 俺とアーコの八十八日間、恋の始まり。

***

 高校受験に失敗しました。もうやる気も出ません。一応第二希望の高校に入れたけど、所詮は第二希望。描いてた未来像とは全く違います。俺は毎日が気だるかった。全く教室で嬉しそうに自己紹介なんかしてる場合じゃないっての。俺はこんなとこ、来たくなかったの。本当はあっちの制服を着て、今頃は楽しく友達を作って。
 なんか言ってたら悲しくなってきた。クラスで俺だけが取り残されている気分になった。そんな気分を紛らわしたくて、俺は部活を見に行った。何かの部活に入ろう。それで全てを忘れてしまえばいい。俺はそう思って、陸上部に入ることにした。走るだけだし、俺にも出来るかも知れない。なにより今は何かをしたかったから。
 陸上部は思ったより楽しかった。仲間が気の良い奴ばかりで、俺を歓迎してくれた。これでいいんだ、忘れろ。
 同じ新入部員の坂井とは結構仲良くなった。いつも冗談ばかり言って俺を笑わせてくれる。
「中西、今日の練習お前へばってただろ? 後ろから見てて切なくなったよ。お前さ、もっと体力つけたほうがいいよ。俺のプロテイン飲むか?」
「ほっとけ」
 そう言って俺たちは笑い合った。
 練習はきつかったが、仲間といるのは楽しい。俺は心の何処かでまだぽっかり空いた穴をふさぐように、走った。きっとこれは気のせいだと信じている。これから何か変わると夢見ている。でも俺の中のくすぶりはまだ、収まらない。
  
 俺が所属している陸上部は練習が終わってからマネージャーがおにぎりを作ってくれる。いつも選手のために握ってくれるおにぎりは愛情たっぷりで、疲れた体に染みこむようだった。まず先輩がおにぎりを取ってから、新入部員の俺たちも群がった。
「マジ、うまいっす。俺はこれのために今日この練習をしてきたって思えるっす」
「坂井、取りすぎだ」
「いや、だってこんなにうまいのを目の前にして……」
「どうした?」
 突然言葉を無くした坂井の視線を俺は追ってみると、弁当の隅に良く言えば俵型のおにぎりらしきものがぽつんと残されていた。
「これ、何? 中西、これ何?」
「いや、おにぎりでしょ」
「おにぎりか」
 じゃあ、食べて。坂井の目は俺にそう語っていた。せっかくマネージャーさんが心を込めて作ってくれたおにぎりを残すわけにはいかない。別に俺じゃなくてもいいのに、なんで俺なのか。仕方なく俺はそれに手を伸ばした。
 そして冒頭部分へと繋がるのだ。

 そのおにぎりを作ったあいつは俺と同じでマネージャーの新入部員で、名前は白石アヤコ。黒いショートカットに猫目。どこか電波な雰囲気を漂わせる、不思議な奴だ。みんなからはアーコとあだ名を付けられている。
 坂井曰く、「あいつの作った料理は料理じゃない」だそうだ。とりあえず作るもの全てが、ぐしゃぐしゃだった。毎回それを食べさせられる選手の身にもなって欲しい。先輩であるアネゴマネージャーは彼女の作る料理を見て、「いつかはうまくなるわよ」といって聞かない。もう一ヶ月以上経つのにあれだから無理だろうと思う。ま、俺自身はアーコのおにぎりに問題があると思っているので、アーコ自身にはそれほど嫌な感情は持っていなかった。
 そんなアーコと俺は初めて喋る機会を持った。部活が終わった帰り、偶然スーパーで買い物をしているアーコに出会った。アーコはスーパーのかごに佃煮やら、ふりかけやらを大量に購入していた。
「すごい量のごはんのお供だな。好きなのか、コメ」
「おにぎり作るの。それの中身よ」
「おにぎり……」
 俺はいつものアーコが作るおにぎりを思い出した。もしかしてアーコは練習して居るんじゃないだろうか、あのおにぎりをもっと良くするために。
「練習してるの。うまくなるように」
 やっぱり。俺は感心してアーコを見た。アーコはべつに得意げでも、何でもない顔をしてただ材料の方を見ていた。
「うまくなると、いいな」
「なるなじゃだめなの、絶対うまくなるの」
 アーコはそう言って俺を見た。その目はただ純粋すぎて俺には少し眩しかった。

 それから俺とアーコは少しずつ部活内で喋るようになった。アーコは相変わらず変な奴だったし、おにぎりも上達しなかった。
「アーコ、お前全く上達しないのな」
「上達って言うのはいつもいつも目に見えるばかりじゃない。何かが毎日変わっている、だからそれでいいの」
「やっぱアーコは分かんねえ」
「別にあなたになんて理解されたいとも思わない」
「ごめん、俺が悪かったです。許してください」
 アーコは別に顔色一つ代えずに、スタスタと自分の鞄を取りに行った。俺は怒らしてしまったかなと不安になったが、あのアーコのことだ。何も考えちゃいないだろう。するとアーコが鞄を抱えて俺の所に戻ってきた。そして鞄の中からなにやらアルミホイルで包まれた物体を取り出した。
「何、これ?」
「見れば分かるわ」
 俺はそのアルミホイルを恐る恐る開けてみた。のりたまがかかっている、おにぎり。
「シロご飯から卒業したの。これで味がついてる」
「……やっぱりアーコは分かんねえ」
 俺がじっと目の前のおにぎりを見ていると、アーコはくるりと後ろを向いた。短い黒髪がぱさっという音を立てる。
「今度の試合、頑張ってよね。みんな応援してる」
「アーコ」
 俺の中のざわめきがまた大きくなる。
「今度の試合相手、北校だって? あそこ強いよ」
「知ってるさ、北校がどんな所かっていうことも」
 だって俺が行きたかった高校なんだからさ、中学の頃から知ってるんだよ。陸上部が強いって事も、水泳部が全国レベルだってことも。俺の口の中で何か苦いものが広がっていく。やっぱり俺は忘れられないんだ。あそこに、行きたかった。
「北校……か」
「何か言った? 中西くん」
「いや、何も」
 アーコはちょっと俺を見て、つまらなそうに髪をいじった。その仕草が、アーコにしては可愛いと思ってしまい、俺は顔を背けた。
「北校、わたしは落ちてしまった」
「……え」
「落ちたの。結構本命だった。それは自分の弱さのせい。自分の弱さに、負けてしまったの」
「……」
「でもわたしは後悔はしていない。人は何か進まなければいけないの。私にとってはそれは、このおにぎりを作ること」
 アーコはそういうと俺の方を見つめた。その大きな猫のような目が俺を射抜く。アーコは、この人は、強い。
「だから、負けちゃいけないの」

 試合の日になった。俺なりにこれまで考えてきた。いったい何のためにここにいるのだろうかと。試合が近づくにつれて、練習も烈しくなってきた。坂井と俺はその厳しい練習に毎日耐えていた。しんどかったが、結果が伴ってきた。俺なりのタイム、俺なりの精一杯がそこに現れていた。
 つらくなったら俺はいつもアーコとしゃべった。俺はアーコに自分も北校を落ちたことを告白した。アーコは別になんと言うことはないという顔をして「そう」と軽く言っただけだった。それが逆に自分にはすんなりと受け入れられた。
 俺の中で何かが変わり始めた。ぽっかり空いていた穴が、何かで埋められていく。その思いは自分の中でじわじわと自覚されていく。苦かった味が、甘酸っぱいジャムに変わる瞬間。
「中西くん、いよいよ出番だね」
「俺は勝つよ、北校であろうと、どこであろうと」
「怖い?」
「いや、不思議と怖くないんだ」
 アーコは鞄の中から見慣れたアルミホイルを取り出した。
「開けてみて」
 いつもの、のりたまにぎり。
「違う、食べてみるの」
 俺は一口かじった。中から佃煮がちょこんと顔を出している。
「これ」
「のりたまにぎりを卒業。これからが本当のおにぎりだから」
 いつもは無表情のアーコが、顔を赤らめて笑った。初めて見たかもしれない。アーコの笑顔を。
「俺、負けないから」
「そろそろ時間」
 アーコはそう言うとくるりと後ろを向いた。今しかない、今なら言える。ちょうどアーコに出会ってから八十八日目。もう迷わない。
「アーコ」
「俺、アーコのことが好きです」
 アーコは俺の方を振り返った。黒髪がアーコの顔を隠す。そして猫のようなその瞳が俺を見つめた。顔は俺が見たこともないくらい真っ赤だった。
「それ、反則だから。わたしが先に言おうと思ってたのに」

 米が育つのは時間も手間もかかる。それを思うと恋なんて、と思うかも知れないけど、俺にとってはこの八十八日間が大切なんだ。
 アーコ曰く「大切なものはそれだけ時間をかけないと、育たないの。目に見えるものでも、見えないものでも。そうして育ったものは、きっと、素晴らしいわ」だそうだ。


<終>



お久しぶりです、ありすです。

読んでいただきありがとうございましたはーと

今回のお題は「米」でした。なかなか難しくて苦戦しましたが、

なんとかへぼへぼながらも書かせてもらいましたガ-ン(|||  

クリスマスが近いので、とりあえず可愛らしい小説を書きたいなと思い、筆を取りましたニコニコ

まあ時期があってないのは、スルーでお願いします(笑



ではセイさん、次のお題は「着物」でお願いします。

楽しみにしておりますキラキラp