卒業式の思い出
卒業式──もう何十年も前のことだ。あまりに遠く、まるで太古の記憶のようにさえ思える。
小学校、中学校、高校、大学と、それなりに卒業式を経験してきた。どの式も、それぞれの時代の終わりを告げる儀式として存在していたはずなのに、不思議と強く印象に残っているのは中学の卒業式だけだ。

1999年の春。世間ではノストラダムスの大予言が話題になり、この年に世界が終わるのではないかという、今思えばばかばかしいような話が、どこかしらの空気に漂っていた。そんな時代の中で迎えた卒業式だったが、意外にも、その日は何の変哲もない一日だった。
厳粛な雰囲気に包まれた体育館、形式的な式辞、卒業証書を受け取る順番待ちの退屈な時間。どれも記憶にはある。けれど、それらよりも心に残っているのは、式が終わった後のことだった。
卒業の日なのに、あまりにも普通だったのだ。
教室に戻ると、仲の良かった級友と、いつものように他愛もない話をした。未来の話なんて大層なものではなく、昨日観たアニメのこと、ハイパーヨーヨーのこと、そんな些細なことばかりだった。まるで、また明日もここに集まるかのように。
それでも、帰り際に「じゃあね」「またね」と声をかけ合い、家へ向かって歩き出した。そのときは、「また」は当然のように訪れるものだと思っていた。
だけど、あれから数十年が経った今、その「また」は一度も訪れていない。
時間の流れとは残酷なものだ。
かつて日常のすべてだったものは、気づけば遠い記憶の中の存在になっていた。
旧友の何人かは連絡を取ることもなく、今どこで何をしているのかさえ知らない。
卒業式とは、終わりと始まりの象徴であるはずなのに、あの日のぼくらにとっては、単なる「いつもの続き」だった。
今流れている何気ない日々の延長にも別れがあったり終わりがあったりするんだろうなと、延々と続く子供のお世話を頑張っている。
こんな日々も、愛おしく感じる未来が来るんだろうか。
しんどい。