夏だしなー、怖い話でもするか。
こわくないけど…


約11年前、高円寺に住んでいた先輩のアパートに遊びに行った。
家賃二万とゆう破格で、二階、部屋の鍵はなんかよく壊れたトイレのドアみたいな、中からしか鍵をかけられないやつで、隣の部屋との境は、なんと障子一枚とゆう、暮らすには相当図太い神経じゃないと精神イカれちまいそうなアパートのひと部屋だったが、その先輩は、色んな意味で図太いかただった。

先輩不在でも勝手に上がり込み、時代錯誤のスーパーファミコンなどをやって先輩の帰りを待っていたのだが、一つ気になる事があった。

向かいの部屋。外からベランダとゆうか、落下防止の柵が見えるのだが、いつもずぶ濡れのダンボールがほしてあるのだ。

ある日、気になり聞いたが、
「向かいの部屋、どんな人がすんでんの?」
「あー、向かいには貞子が住んでてな、たまに窓の向こうから覗いてたり、冷蔵庫に話しかけたりしとるけえ、気をつけぇよ。」

さっぱりわからない。

貞子ってあれか、「リング」に出てくるバケモンか。
なんだかわからんが、危険な感じが全快である。

先輩は24時を回ったころ、先輩は帰ってきた。
くだらない会話などしていてもう2時を回ると、だんだん帰るのが、だるくなり、泊まっていくことにした。

さあ、寝るか。その前にトイレ…と立ち上がった瞬間、

「グッ…ぐぅぉぉぉぉおおお!!!!!」

ビクッ!
突然、玄関の向こう、階段の下あたりから叫び声がした。

「やべ!帰ってきた!早く寝ろ!音たてるな!」
先輩は、そう口早に言って電気を消した。

え?え!?なにそれ。なんか怖い!超怖い!
と、もれそうになるおしっこを我慢しながら急いで布団に入る。心拍数は時速140キロである。

カタン…カタン…

ち、近づいてくる。その間も女は叫び続ける。なんだこのホラーは。しかも心霊とかそんなもんではない。クリーチャーじゃないか!ジェイソンだ!ジェイソンが来る!
ガタガタ震えながら聞き耳をたてると、なにか喋っている。

「…××は…で…の鬼畜の…が死ねぇぇええ!」

…どうやらなにかに対して凄く怒っているらしい。

「…これさ、今出て行ったらどうなるの?」
「前一回うるせえって怒鳴ったら部屋に上がってきた」

怖すぎんだろが。

カタン…カタン…ガタン!

近づいてくる!なんか、なんかもうよくわかんないけどとりあえず怖い!

ガタン!…カタン…ピタッ

あれ?遠のいた?そして止まった?と、

「けい子さん…どうしてあなたはそんなにすてきなんだ…いやっ!よしゆきさんこそ、どうしてそんなに素敵なのっ!」

…まさか…まさかな…。

まさかの一人芝居を始めたようだ(恋愛物)
深夜3時過ぎに外付けの階段でまさか… 女が一人芝居をしているのである。しかもかなり大声で。更に言うならクライマックスじゃねえか。

しばらくウトウトしながら聞き耳をたていた。すると、
「なーんちって♪」
あ、今のでシメなわけね。終わったわけね。一人芝居。
その瞬間、「うごーーー!」とゆう叫び声をあげながら、女はダッシュで、まるで海賊王を目指すアニメキャラが猛ダッシュするがごとくスピードで自らの部屋に飛び込んで行った。

私は、緊張と恐怖で眠りこけていた。


翌日、先輩の姿はそこに無く、もうこんな家コリゴリだ!と、急いで部屋を出た。
階段を下りて右を向いた瞬間、

「あー、なんか用ですかー?」
女…か?
はっ!記憶が昨日の声とシンクする。こいつだ、貞子だ。
しかし、外見は、リング0で仲間由紀恵が演じたそれではなく、どちらかとゆうとお笑い漫画道場の富永先生…もしくはドラゴンボールZ の魔神ブゥにヅラかぶして眼鏡をかけたような感じである。

な、なにか話をしてかわさないと
「いや、なんか友人を訪ねてきたんですけど…留守だったみたいで…帰ります~」
「あー、お向かいさんね、なんか昨日の夜急いで引っ越してたみたいでもういませんよー」

おい

おい、貞子、なぜ嘘をつく。

そう思いながら「そうですか~、じゃ~」とすれ違う時に見えた貞子の持つ買い物袋には、黒い液体が溢れでていた。

あれ以来、私はそこに近づいていない。