最近話題となっている映画「永遠の0(ゼロ)」に、あまり話題に上らない特務士官が主人公として登場しましたので、特務士官の軍装を取り上げてみます。
特務士官自体については以前も取り上げましたので、詳細は以下をご覧ください。
●特務士官とは
●特務士官の待遇事情
特務士官とは、下士官兵から叩き上げで昇進してきた士官で、海軍兵学校出の士官とは区別されていました。
海軍では指揮権の優先順位も兵科であるなら、(海兵出身)大尉 ⇒ 中尉 ⇒ 少尉 ⇒ 特務大尉 ⇒ 特務中尉 ⇒ 特務少尉という具合に、ベテランの特務大尉が新人少尉の指揮下に入るような、海兵出身者が優遇される制度となっていました。
特務士官の軍服は、兵学校出身の士官とは見た目に分かるよう区別されていました。
■階級章(兵科)
兵科将校(兵学校出)の階級章(肩)。上から大尉(だいい)、中尉、少尉。
特務士官の階級章より中央の黄色いラインが幅広くなっています。
兵科特務士官の階級章(肩)。右から特務大尉(とくむだいい)、特務中尉、特務少尉。
中央の黄色の線が特務士官の場合、海兵出身の将校よりも幅が1/2と狭くなっています。横須賀の海上自衛隊・第二術科学校の史料館の展示物より。
■軍 服
特務少尉の第一種軍装(冬用)。
特務士官の場合、袖口に桜のマークが付いていており、海兵出身者との区別が明確になされていました。
特務士官の第一種軍装・全身(赤い矢印、映画より)。袖口に注目。
「士官同士にかかわらず、見た目で区別する嫌味な制度」などの意見も聞かれます。
特務士官用の桜のマークが付いた飛行服。(映画より)
昭和17年11月より、軍服の改変に伴い、特務士官制度は廃止されました。しかし制度はなくなっても特務士官と兵学校出身者の間の差別待遇は是正されず、終戦まで続いたと言われます。
左が兵学校出の飛行士、右が桜マークの特務士官。(映画より)
特務士官制度が廃止され軍服に差異はなくなっても、兵学校出と叩き上げの士官とでは見た目で区別がつきました。
それは兵学校出の尉官は20代と若手ですが、特務士官は30代~50代という年輩者が多かったためです。叩き上げからの昇進はそれだけ時間がかかりました。