外交の極意【佐藤優氏】(1) | 太平洋戦争史と心霊世界

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自身の病気(炎症性乳がん)について書いています。


モスクワ 



 元外交官の佐藤優(まさる)氏は2002年に国策捜査の対象となり、鈴木宗男氏が絡む背任事件などで512日間拘置所に拘留されていました。

 

 彼は同志社の神学部院卒という変わり種で専門はロシア外交、外務省のノンキャリアという出身にかかわらず、一言でいうと出過ぎたため国策捜査の対象となったと言われています。

 

しかし彼の著作を読むと、圧倒的な知識量とその慧眼に驚かされます。外務省は杉原千畝氏しかり、能力のある人物はみな外に放逐してしまうのでしょうか?


佐藤優 
 

佐藤 優

http://p.tl/onMA

 

 というわけで、佐藤氏の著作から参考になりそうな、主に外交関連の話を抜書きしてみました。


                           


■ナショナリズム二つの特徴

 

「私が見るところ、ナショナリズムには二つの特徴がある。第一は『より過激な主張が正しい』という特徴で、もう一つは『自国・自国民が他国・他国民族から受けた痛みはいつまでも覚えているが、他国・他国民に対して与えた痛みは忘れてしまう』という非対称的な認識構造である。

 

ナショナリズムが行きすぎると国益を毀損することになる。私には、現在の日本(2005年出版当時)が危険なナショナリズム・スパイラルに入りつつあるように思える。」

 

 

■外交の世界に純粋な人道支援はない

 

そもそも外交の世界に純粋な人道支援など存在しない。どの国も人道支援の下で自国の国益を推進しているのである。」

 

 

■外交官が高級レストランへ行く理由

 

「外交や情報の世界では、できるだけ高いレストランで『浪費』することには職業的な意味がある。まず、客人に対して『あなたをこんなに大切にしています』というメッセージを送ことになり、次に『私はこれだけのお金を使う権限をもっています』という自己の力をさりげなく誇示することになる。

 

 現在も東京の高級ホテルで毎晩外交団や情報機関員が日本の官僚、有識者、ジャーナリストを招いて、目が飛び出る高いレストランでフランス料理や和食懐石を奢るのも、そのような意味合いがあるからだ。」


東京拘置所 

佐藤氏が勾留されていた小菅(こすげ)にある東京拘置所



■国策捜査とは

 

「冤罪事件とは、捜査当局が犯罪を摘発する過程で無理や過ちが生じ、無実の人を犯人としてしまったにもかかわらず、捜査当局の面子や組織防衛のために自らの誤りを認めずに犯罪として処理する。従って、犯人とされる人は偶然、そのような状況に陥れられてしまうのである。

 

 これに対して、国策捜査とは、国家がいわば『自己保存の法則』に基づいて、検察を道具にして政治事件を作り出していくことだ。免罪事件と違って、初めから特定の人物を断罪することを想定した上で捜査が始まるのである。

 

 そして検察はターゲットとした人物に何としても犯罪を見つけ出そうとする。ここで犯罪を見つけだすことができるとすれば、それが微罪であるとしても、検察は犯罪を摘発したわけだから、犯罪が見つからない場合はどうするのか。理論的には検察は事件化を諦める。

 

しかし、世の中は理論通りには進まない。そのときは検察は事件を作るのである。この場合も国民は拍手喝采して検察の『快挙』を讃える。」

 


 

『自壊する帝国』、新潮社、2006

『国家の罠』-外務省のラスプーチンと呼ばれて、新潮社、2005