歴史とは何か 【ジパング】 | 太平洋戦争史と心霊世界

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横須賀・海自7 


 『ジパング』は200×年に存在していたイージス艦と海上自衛官たちが、太平洋戦争中ののミッドウェー海戦の真っただ中に、タイムスリップしてしまうというコミック・アニメです。

 

 今週は現代の視点と、過去の視点についての話をアップしましたが、『ジパング』はこの話を検証するためには格好のストーリーです。

 

作者のかわぐちかいじ氏はこのタイムスリップを利用して、読者の視点(立ち位置)を現代から過去に移動させることで、話の臨場感を盛り上げることに成功しました。

 

 実際に彼はタイムスリップを取り入れたことは、過去の歴史を現実感のあるものとして読者に見せるための、狙いの一つであったとインタビューで話していました。

 

 では『ジパング』で行われていた「視点移動」とは、どんなものだったのでしょうか。

 ここで現代人の代表として、タイムスリップしたイージス艦、「みらい」の副長で海上自衛官・角松洋介二等海佐を登場させます。

タイムスリップ前 

 21世紀にいる角松二佐は、70年以上も前に行われた太平洋戦争や、ミッドウェー海戦を過去の歴史として振り返って見ています。

 その出来事はまさに教科書などの本に載っているような机上での知識で、角松は歴史の外に存在しているわけです。

 

コミック読者も角松と同じ現代人で、同じ立ち位置に立っていますので、見え方は同じです。


タイムスリップ後 

 ところがイージス艦「みらい」は航行中に突然雷に打たれ、1942(昭和17)年65日、ミッドウェー海戦の真っただ中にタイムスリップしてしまいます。

 

 太平洋戦争中のただ中に入ってしまったということは、ミッドウェー海戦はもはや過去として眺めていた古い歴史ではなく、時々刻々と情勢が変化してゆく現実となります。

 

 ここで読者の立ち位置もまた、21世紀の現代から昭和17年へと移動したことで、話の内容も俄然現実味を帯びてきます。

 

 タイムスリップした自衛官たちは、迷い込んだ昭和17年で米軍に攻撃されても、21世紀には日米同盟を結んでいる同盟国を攻撃できません。しかし反撃しなければ殺される。一体どうするのかと、コミック読者は見ていてハラハラします。

トマホークがワスプを攻撃 
イージス艦「みらい」が放ったトマホークミサイルが米空母「ワスプ」を攻撃(ジパング・6巻)


 このように作者は、タイムスリップにより読者の視点を、単なる歴史の一点であったミッドウェー海戦から、今まさに起こっている現実の事件として現在進行形で見せる事により、現実感を演出して読者の興味を引き立てています。

 

 以前も述べましたが、「過去の出来事を過去の視点(立ち位置)で見る」とき、それは既に歴史ではなく、その時代の時事問題となってしまい、歴史として扱えなくなってしまうのです。

 

従って歴史とは自分自身が今この瞬間に立っている、現在と言う立ち位置と、完全に終了した過去との間にある程度距離が無ければ成り立たないものなのです。