戦史を読んでいると、日米の戦い方をしばしば武道とスポーツでの戦い方に例える表現が出てきます。
刀(日本)とフェンシング(西洋)では、刀で切りつける場合は一撃必殺で、短時間で素早く相手に致命傷を負わせるが、フェンシングでは小刻みに相手を傷つけて、隙を見て突くという長期戦だというのです。日米の戦い方もこれと同様であったと言われています。 暴れん坊将軍(刀)とフェンシングの闘いはいかに?
これを戦争に例えると、日本は真珠湾奇襲で短時間に米軍に大打撃を負わせました。
これに対しアメリカは、1942(昭和17)年4月のドゥリットル空襲(日本初の本土空襲)を行うことで小さな勝利を着実に重ね、同年6月のミッドウェー海戦ではついに日本に対し捲土重来で巻き返しました。
他にも駐米大使館付武官であった横山一郎が語っていた逸話を見つけましたので以下にご紹介します。
横山一郎
「日本の武道や相撲は近代戦に適さない。『メン』と打ったら終わりとか、土俵から足が出たら負けとか、そんなことが戦争に通用するわけがない。
アメリカやイギリスの競技は、野球でもフットボールでもボクシングでも、何回もやって、とことんまで戦って勝負を決する。相手が『参った』というまでやる。
また、負けていても、態勢をひっくり返すことができるような競技のやり方になっていて、戦争にも通用する。
日本の武道や相撲には、そういうものがない。日本海軍の図上演習にしても、四分五裂になった艦隊をどう立て直すかというようなことは、一度もやったことがない。
英国海軍には、ブルドッグ精神という伝統がある。日本海軍は英国海軍にならったのだが、そういう食いついたらはなさないしぶとい精神というものは受け継がなかった。そこが日本海軍の弱さになっている。」
食いついたらはなさない
また第四艦隊の航海参謀であった土肥一夫は、連合艦隊研究会で草加龍之介から居合いの話を聞きました。
「前と後ろに敵がいる。その両方を倒すには、まず前に斬りつける。これはトドメを刺さないでいい。返す刀ですぐ、うしろの敵を斬る。これが居合いの極意だ。」
これについて土肥は言いました。
「前と後ろの敵を斬るのは一秒か二秒の間だ。真珠湾と、インド洋方面のイギリスは、前と後ろで一ヶ月間も間がある。そんなものに居合いが適用できるのだろうかと思った。」
柔道も国際競技になりましたが、外国人と日本人では勝ち方によるこだわりが違うといわれています。柔道は詳しくありませんので間違っていたらご指摘ください。
日本人は大技がきれいに決まって勝つのを良しとするそうですが、外国人はルールの範囲内で、とにかく形にこだわらずどんなことをやっても勝つという意識が強いのだそうです。この闘い方はボクシングなどのスポーツにも共通していることだと思います。
これは日米の戦い方の意識にも見られます。アメリカ軍はどんな手段を使っても勝つと思い、日本人は美しく勝とうとして、それが達成されれば後にこだわりを残さない。
真珠湾攻撃はある程度戦果をあげたので、あとは石油タンクなどの施設を徹底的に叩かず、あっさり引き上げてきたことなどは、よく武道に例えられます。つまり柔道の例としては、技が美しく決まったのでもうそれ以上追及はしないということです。
また自決していさぎよく死のうという美学もあてはまるでしょう。潔い死=美しい死に方というわけです。もっとも自殺なんですから美しくも何ともないんですけどね、現場は悲惨だと思いますよ。