劇場映画『ヤマトよ永遠に』は1980年8月2日に公開されました。

『宇宙戦艦ヤマト』シリーズの最新作であり、前年にテレビ特番として放送された『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』の続篇という体裁でした。

『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』は当初1979年7月21日放送とアナウンスされていたのですが、直前で10日遅れて7月31日放送に変更されました。理由は明らかにされていませんが、恐らく製作の遅れでしょう。『宇宙戦艦ヤマト』シリーズの製作の遅れは当たり前の様になっており、現在の様にインターネットで逐一情報が発信出来る時代ではなかった事もあり、作品に関する情報が混乱する一因になっていました。(その最たる例が『宇宙戦艦ヤマト 完結編』)


『ヤマトよ永遠に』は劇場公開日の変更はありませんでしたが、雑誌の掲載を中心にした情報は新旧のものが混在し、公開初日に劇場に詰め掛けたファンは混乱しました。


例えば「暗黒星団帝国」の名称。『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』ではカタカナによる固有名詞が無かったのですが、『ヤマトよ永遠に』公開直前に「暗黒星団帝国ウラリア」の名称が雑誌に掲載されました。しかし映画本篇には「ウラリア」の名称は登場せず、代わって?「デザリアム星」なる名称が使われていました。(『宇宙戦艦ヤマト2』のテレサの宮殿の名前がテレザリアムだったので紛らわしい……?)


また暗黒星団帝国の将校として「キーマン少尉」なるキャラクターが登場すると雑誌掲載情報には在ったのですが、映画本篇では「アルフォン少尉」と名前が変更。「『デビルマン』に出てくる先生みたいな名前(アルフォンヌ先生)だな」等と言われていました。当時発売されたサウンドトラック盤では名前変更が間に合わなかったのか「キーマン少尉」なる曲が(初期に発売されたカセットテープ盤に在り。LP盤は未確認。「アルフォン少尉」と同曲)ありました。


更に劇中の挿入歌として岩崎宏美 歌唱の「銀河伝説」がアナウンスされていましたが、映画本篇では岩崎宏美 歌唱の「愛の生命」が使用され、「銀河伝説」は未使用でした。後日、西崎義展プロデューサーがラジオ出演された際に「曲を“銀河伝説”に差し替える為の作業をしており、近日中にはそちらのフィルムが劇場で上映される」と発言、ファンを騒然とさせました。実際にその様な作業が行われたかは不明で、本篇中に「銀河伝説」が流れる『ヤマトよ永遠に』の存在は確認されていません。


加えて『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』でヤマトの新クルーとして登場した北野哲、坂本茂が登場せず、暗黒星団帝国のグレート・エンペラーと『ヤマトよ永遠に』に登場した聖総統スカルダートが同一人物か判然としない、更にそのスカルダートが見せる“ヤマトの歴史”の映像に、何故かヤマトが白色彗星に向けて波動砲を撃つ場面がある(それは『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』の場面であり、『ヤマトよ永遠に』は『宇宙戦艦ヤマト2』から続くシリーズ作品)等、細かい部分でもファンは困惑しました。

個人的には『ヤマトよ永遠に』では古代守がヤマト艦長に就任すると思っていたのですが、思いがけない形で古代守は自ら命を断ち、ヤマト艦長には新キャラクターで、ガミラスのドメル将軍及び白色彗星帝国ガトランティスのズォーダー大帝と同じ声(演:小林修)の山南が現れた事にも、少々驚かされました。(後に発売されたゲーム版では古代守がヤマト艦長に就任)


『ヤマトよ永遠に』では、ワープ描写が大きく変化しています。劇中では連続長距離ワープが可能になったとの説明がありますが、映像面で言えば明らかに1979年製作の映画『スター・トレック』の影響でしょう。ただ『スター・トレック』の日本公開はアメリカ公開から7ヶ月遅れて、『ヤマトよ永遠に』公開の直前でした。


宇宙戦艦ヤマトの主砲の砲身に三本線が入るのは『ヤマトよ永遠に』からです。これは「ガミラス」「ガトランティス」「暗黒星団帝国」と、3つの戦いを経験したという意味で、更に艦首と両舷に錨マークが入ります。これは西崎義展プロデューサーの発案と言われています。宇宙戦艦ヤマトのデザインは第1作の段階で完成されているのですが、シリーズが続くと付加価値と云いますか、何か手を加えたくなる衝動が湧いてくるのでしょう。ただ艦首の錨マークはファンからの評判が悪く、両舷の錨マークと共に『宇宙戦艦ヤマト 完結編』では無くなっています。(補足すると『宇宙戦艦ヤマト 完結編』の初公開版のヤマト発進場面は、製作遅延の為に『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』の映像を流用しているので、錨マークが在ると辻褄が合わなくなる)


『ヤマトよ永遠に』は「ワープディメンション方式」なるシステムで上映されました。これがどの様なシステムなのか事前に詳細な解説がされておらず、また洋画では(主に東宝東和 配給作品)「◯◯方式上映」という実感の乏しいシステムが謳い文句として使用されていた事もあり、ファンも然程注目していませんでした。

しかし劇場に詰め掛けたファンは驚きの映像を目の当たりにしました。劇中、ヤマトが暗黒星雲に突入するまでがビスタ・サイズ画面、そしてヤマトが暗黒星雲を突破する直前でシネスコ画面に切り替わる、これが「ワープディメンション方式」でした。眩く煌めく銀河が視界一杯に広がる……劇場映画の醍醐味を感じた瞬間でした。(劇場公開時に間に合わなかった世代の人がソフト化された『ヤマトよ永遠に』を鑑賞すると、途中で画面サイズが変わる=上下のマスキング部分が増えるので、予備知識が無いと困惑するそうです)


『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』製作のアナウンスがあった際、その次作である劇場映画(つまり『ヤマト永遠に』)でシリーズは完結するという話でしたが、『ヤマトよ永遠に』公開当時に発売されたパンフレットには既に同年10月に放送が開始される新テレビシリーズ(『宇宙戦艦ヤマトⅢ』)に触れた記載があり、「“さらば” “永遠に” ……それでも、まだ続くのね」とファンを安心?させました。


1978年公開『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』は同時期に『スター・ウォーズ』が上映、1979年公開『銀河鉄道999』は同時期に『スーパーマン』『エイリアン』が上映、そして1980年公開『ヤマトよ永遠に』は同時期に『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』『スター・トレック』が上映……と、3年連続で日米SF映画が激突した夏でした。(因みに1981年夏は『さよなら銀河鉄道999 −アンドロメダ終着駅−』と『スーパーマンⅡ 冒険篇』が同時期上映。1982年夏は『わが青春のアルカディア』と『ブレードランナー』『コナン・ザ・グレート』が同時期上映。……松本零士作品がハリウッドSF大作と渡り合っていたのです)


『ヤマトよ永遠に』の主題歌は布施明 歌唱の「愛よその日まで」。この年暮れのNHK「紅白歌合戦」で布施明は同曲の歌唱で出演しています。NHK「紅白歌合戦」でアニソンが歌われる先駆けでした。


現在公開中の『ヤマトよ永遠に REBEL3199 第一章 黒の侵略』。

今回のシリーズは1980年『ヤマトよ永遠に』と1980年~1981年にかけて放送されたTVシリーズ『宇宙戦艦ヤマトⅢ』を併せたリブートとなっている様で、劇場公開版が全七章、TVシリーズに換算すると全26話の構成になるとの事。

『ヤマトよ永遠に REBEL3199 第一章 黒の侵略』は上映時間69分となっていますが、冒頭の19分強が「これまでのあらすじ」ですので本篇は約50分、TVシリーズに換算すれば2話分となります。

今回の「第一章」は『ヤマトよ永遠に』に置き換えれば上映時間145分の内の、27分辺りのエピソード迄となっています。故に何と言いますか、話の引っ張り具合が非常に巧みであります。


思い出してみると……『ヤマトよ永遠に』に於ける宇宙戦艦ヤマトは無双ぶりが際立っていました。イスカンダルまでが14万8千光年の距離であったのに対しデザリアムまでは、その3倍近い40万光年の距離。それを連続長距離ワープで難なく航行し、デスラー砲が全く通じなかったゴルバを波動カートリッジ弾で撃破。おまけに真田さんは重核子爆弾をメインパネル越しに一目見ただけで、ハイぺロン爆弾であると構造まで理解する天才ぶりを発揮……

流石に『ヤマトよ永遠に REBEL3199』では、その無双ぶりは控え目になるでしょう。(多分)

そして、相原はグラスを拝借するのか……?ロダンの考える人はどうなる……?


今回『ヤマトよ永遠に REBEL3199 第一章 黒の侵略』の劇中、アナライザーズが一斉に「ヤマトニ集結セヨ」のメッセージを受信する場面、これは松本零士の『新 宇宙戦艦ヤマト』の「ヤマトにきたれ」のメッセージを受信する場面に酷似しています。松本零士の『新 宇宙戦艦ヤマト』は未完ですが、元々は『ヤマトよ永遠に』製作時に松本零士自身が提供したアイディアが元になっている作品です。『新 宇宙戦艦ヤマト』の舞台は西暦3199年ですから、『ヤマトよ永遠に REBEL3199』との関連を指摘する声は以前から有りましたが、果たして?



『ヤマトよ永遠に』

1980年 日本

【出演】

富山敬

麻上洋子

仲村秀生

青野武

永井一郎

小林修

潘恵子

野沢那智

大平透

羽佐間道夫

【監督】

舛田利雄

松本零士

勝間田具治



『宇宙戦艦ヤマト REBEL3199 第一章 黒の侵略』

2024年 日本

【出演】

小野大輔

桑島法子

大塚芳忠

鈴村健一

鳥海浩輔

小島敏彦

松本忍

高垣彩陽

千葉繁

内田直哉

【監督】

ヤマトナオミチ



『ヤマトよ永遠に REBEL3199 第一章 黒の侵略』
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