『超電磁マシーン ボルテスV』は、1977年6月4日~1978年3月25日にテレビ朝日系で放送されたTVアニメ・シリーズです。(全43回。40話+再放送3回)

この枠で前番組として放送されていたTVアニメ・シリーズに『超電磁ロボ コン・バトラーV』があります。1976年4月17 日~1977年5月28日に放送された同作品は日本の巨大ロボット作品の歴史に於いて、1つの転換点となった作品です。その最大の特徴は、劇中で展開される巨大ロボットの合体・変型が、玩具で再現可能だった事です。


1974年4月4日~1975年5月8日にフジテレビ系で放送されたTVアニメ・シリーズ『ゲッターロボ』及び、1975年5月15日 ~1976年3月25日に後番組として放送された『ゲッターロボG』が日本の巨大ロボット・アニメ作品で最初の合体・変型モノでした。しかし同作品内で展開される合体・変型はかなり飛躍のある描写で、玩具で再現する事は殆ど不可能なものでした。(後年になって、TVアニメとは異なる手間のかかる過程を経て合体・変型が再現された高額な玩具が発売されましたが……)


その一方で、1975年4月4日~1976年3月26日にNET系(現:テレビ朝日系)で放送されたTVアニメ・シリーズ『勇者ライディーン』では、劇中で合体こそ無いものの、ライディーン➡ゴッドバードへの変型があり、これを再現出来る玩具が発売され、大変な反響を呼びました。『超電磁ロボ コン・バトラーV』の製作にあたってはスポンサーである玩具メーカー(ポピー)の意向が働き、五台のマシンが合体・変型し巨大ロボになるという設定が導入されました。


『超電磁マシーン ボルテスV』では、玩具メーカー(ポピー)の意向がより強いものになり(その為かデザインの変更などがあり、放送開始が当初の予定から後ろにズレ込みました)、この頃からアニメーション作品に限らず、特撮ヒーロー作品に於いても、玩具として発売する事を大前提としたデザインや設定が用いられる様になりました。因みに当時テレビで放送された『超電磁マシーン ボルテスV』の玩具である超合金シリーズのCMを手掛けたのは、後に『さよならジュピター』『ガンヘッド』「平成ゴジラ・シリーズ」等の特技監督に起用される事になる川北紘一です。


『超電磁ロボ コン・バトラーV』は一話完結スタイルのシリーズでしたが、『超電磁マシーン ボルテスV』は大河ドラマ的なストーリーとなり、前作と比べるとコアなファン層をターゲットにしている事が解ります。特に第38話「大宇宙へ出撃せよ!!」第39話「ボアザン星の大攻防戦」第40話「崩れゆく邪悪の塔!!」……この最終3話のボルテージの高さは、当時のファンの間で語り草になったものです。

(また全編にわたり「Vトゥギャザー」「天空剣Vの字斬り」等、Vに拘った演出が醍醐味となっていました)


当時、坂丘のぼる執筆によるコミック版『超電磁マシーン ボルテスV』は、小学館「小学二年生」と徳間書店「テレビランド」に出版社を跨いで(若干異なる展開ながら大筋は同じ内容)連載されていましたが、TV放送に先駆けて最終話が掲載されています。その最終話では両誌共に、主人公の剛健一とプリンス・ハイネルが兄弟である事が明かされるのですがTVアニメとは展開が異なり、お互いの身体に同じ痣があった事から兄弟だと判る展開になっていました。またザンバジル皇帝の容姿がTVアニメと異なっています。恐らく雑誌連載のスケジュールの都合上、アニメ本編では採用されなかった草案が元になっているのではないかと思われます。


さて……『宇宙戦艦ヤマト』の特集を組んだ雑誌「月刊OUT」創刊号の発売が1977年4月で『宇宙戦艦ヤマト』劇場版の公開が同年8月6日。アメリカで『スター・ウォーズ』が公開されたのが1977年5月25日。『超電磁マシーン ボルテスV』の放送開始が上述の様に1977年6月4日。……当時の感覚からすれば、商業的に成功するかどうか賭けであったコアなファン層を狙ったSF作品が、殆ど関連なく同時期に世に出るという……歴史的な偶然が其処に在りました。


『超電磁マシーン ボルテスV』の総監督は長浜忠夫ですが、一部のエピソードの演出を『機動戦士ガンダム』等で知られる富野由悠季が“とみの喜幸”名義で担当しています。『機動戦士ガンダム』のTVアニメ・シリーズを基本とした劇場版の興行的成功を受け、1982年頃に『超電磁マシーン ボルテスV』の劇場映画化が企画された事がありました。しかし富野由悠季 監督は既に日本サンライズ所属で『戦闘メカ ザブングル』を手掛けていましたし、長浜忠夫 総監督は故人であった事もあり幻の企画となりました。


『超電磁マシーン ボルテスV』は日本での放送から間を置くことなく、1978年にはフィリピンでの放送が開始されます。最高視聴率58%という驚異的人気を獲得しますが、当時のフィリピンに於ける社会情勢を理由として1979年に放送が打ち切られます。

エドゥサ革命後の1986年に放送が再開。1999年にリバイバル・ブームが起きる等、フィリピンの国民的人気作品となります。1991年放送のNHKのTV番組『ドキュメンタリー・アジア発』に於いて、その熱狂ぶりが日本に伝えられました。


その後、2020年にフィリピンでの実写化が発表され、紆余曲折の末に、2023年5月より『ボルテスV レガシー』がTVドラマ・シリーズとして放送が開始されました。それに先駆け、予告映像がインターネットに投稿されたのですが、それを見た日本のファンが、そのクオリティの高さに驚愕します。

『ボルテスV レガシー』は2023年5月8日~2023年9月8日に全90話がGMAでオン・エアされました。(4ヶ月ほどで90話が放送されていますが、フィリピンと日本とではTVドラマ放送形態が異なり、一話30分前後のエピソードが月~金の帯番組としてオン・エアされているからです)


この『ボルテスV レガシー」は、フィリピン国内ではABS-CBNが同時間帯に放送していたTVドラマ・シリーズ『BATANG QUIAPO』と激しい視聴率競争を展開します。この『BATANG QUIAPO』は1986年10月16日にフィリピンで公開されたパブロ・サンティアゴ監督の同名の劇場映画をリブートした作品で、『ボルテスV レガシー』に先駆け2023年2月13日より放送が開始されていました。


興味深いのは『超電磁マシーン ボルテスV』が全40話であるのに対し『ボルテスV レガシー』が全90話ある事です。つまり実写ドラマ化に於いてフィリピンのオリジナル・エピソードが追加されているのですが、そのオリジナル・エピソードが放送される回になると視聴率が下がるという事が起きた様です。

勿論、裏番組の『BATANG QUIAPO』の人気が高いという事もありますが、原作には無い要素を加えるのは中々難しいという点は、日本もフィリピンも同じ様です。


それでも最終回間際になると『ボルテスV レガシー』の視聴率が巻き返し、同日に両番組の最終回が放送された時は、僅差ながら『ボルテスV レガシー』が『BATANG QUIAPO』を視聴率で上回り、無事に有終の美を飾りました。

(因みに翌週から『BATANG QUIAPO』はシーズン2の放送が始まり、強力なライバル作品が終了した故か、視聴率が上がった様です)

この『ボルテスV レガシー』の好評を受け、フィリピンでは『闘将ダイモス』の実写ドラマ化の企画が開始された様です。(『闘将ダイモス』は『超電磁マシーン ボルテスV』の後番組)


『ボルテスV レガシー』の日本での展開ですが、2024年10月18日より劇場公開される事がアナウンスされました。これはTVドラマ・シリーズ放送に先駆け、2023年4月18日にフィリピンで限定的に公開された劇場映画版で、TVドラマ・シリーズの第1話~第15話を107分に再編集した作品の事だと思われます。日本語吹替版の上映も予定されている様ですが、気になるのはキャラクター名です。「剛健一 ➡ スティーブ・アームストロング」「ハイネル ➡ ザルドス」という具合に、フィリピンでは名前が変更されていますから……やはり、字幕版はフィリピンに準じ、日本吹替版は日本に準じた名前になるのでしょうか?

また日本語吹替版は吹替版製作スタッフのクレジット映像が追加され、BGMとして堀江美都子&こおろぎ'73&コロムビアゆりかご会が歌唱する主題歌が流れたりするのでしょうか?


更にTVドラマ・シリーズはTOKYO MXでの放送が予定されている様です。(地方在住の身としては、取り敢えず劇場版しか見られない様です。一部エピソードはYouTubeで見られますが……)


『超電磁マシーン ボルテスV』初回放送
東海地区 新聞ラ・テ欄
※画面上のクレジット表記は「白石ゆきなが」ですが、新聞のラ・テ欄では字数の制限の為か、本名の「白石幸長」と表記されています。

『超電磁マシーン ボルテスV』最終回放送
東海地区 新聞ラ・テ欄
※奇しくも『無敵超人ザンボット3』(制作∶名古屋テレビ)も同日最終回。



『超電磁マシーン ボルテスV』

1977年6月4日~1978年3月25日

日本

テレビ朝日/東映/東映エージエンシー

【出演】

白石ゆきなが(現:白石幸長)

曽我部和行(後:曽我部和恭)

玄田哲章

小原乃梨子

上田みゆき

市川治

加藤精三

近藤高子

飯塚昭三

二瓶秀雄

【総監督】

長浜忠夫



『ボルテスV レガシー』

VOLTES V∶LEGACY

2023年4月18日/劇場編集版

2023年5月8日~2023年9月8日

フィリピン GMA

【出演】

ミゲル・タンフェリックス

ランドン・フローレス

マット・ロザノ

ラファエル・ランディチョ

イザベル・オルテガ

マルティン・デル・ロサリオ

ニール・ライアン・セセ

カーラ・アベラーナ

リーゼル・ロペス

ジェフリー・クイゾン

【監督】

マーク・A・レイエス