現在、大評判となっているアメリカの配信ドラマ『SHOGUN −将軍−』。全世界で1350万部のベストセラーとなったジェームズ・クラベル原作の小説の映像化で、1980年にリチャード・チェンバレン主演でTVドラマ化された『将軍 SHŌGUN』のリメイクでもあります。(TVドラマ・シリーズを再編集した劇場版も有ります)
……と言う訳で、『将軍 SHŌGUN』以降に公開された“国際的に活躍するサムライ”が登場する映画を幾つか記しておきます。
『武士道ブレード』
THE BUSHIDO BLADE
1979年 アメリカ/イギリス/日本
日本劇場未公開
1990年12月28日 HRS FUNAIよりビデオ発売
【出演】
リチャード・ブーン
千葉真一
フランク・コンバース
ラウラ・ジェムサー
ジェームズ・アール・ジョーンズ
マコ岩松
ティモシー・マーフィー
マイク・スター
丹波哲郎
三船敏郎
【監督】
小谷承靖(トム・コタニ)
【粗筋】
幕末の日本。日米条約締結の為に来日したペリー提督に贈呈する宝刀が、尊王攘夷派の大和守の放った賊に奪われてしまう。幕府の全権大使であり開国派の林復斎からの命を受けた井戸守と、ペリー提督の命を受けたホーク大佐、ガル士官候補生、ジョンソン水兵長が、宝刀奪還の為に追跡を始める……
【解説】
製作が映画『極底探険船ポーラーボーラ』や長篇アニメ『町一番のけちんぼう』『ホビットの冒険』等で日米合作作品を数多く手掛けているアーサー・ランキン・Jr.とジュールス・バス。
『極底探険船ポーラーボーラ』のリチャード・ブーン、『愛のエマニエル』のラウラ・ジェムサー、『スター・ウォーズ』のジェームズ・アール・ジョーンズ(ダース・ベイダーの声)、千葉真一、丹波哲郎、三船敏郎という、異色と豪快な顔合せのキャスティングが実現しています。
『将軍 SHŌGUN』の便乗作品と思われがちですが、製作は本作の方が先です。ただアメリカ公開は『将軍 SHŌGUN』放送後の1981年でした。
92分のケーブルテレビ版と104分の劇場公開版があり、日本でビデオ化されたのは92分版です。
『狼男とサムライ』
LA BESTIA Y LA ESPADA MAGICA
1983年 スペイン/日本
日本劇場未公開
1986年7月26日
テレビ朝日「ウィークエンドシアター」内で放送
【出演】
ポール・ナッシー
天知茂
朝比奈順子
藤陽子
宮口二郎
ビオレッタ・セラ
ビアトリス・エスクデロ
コンラード・サン・マルティン
ジェラール・ティモシー
北町嘉朗
【監督】
ハシント・モリナ
【粗筋】
16世紀。祖先にかけられた呪いによって、満月になると狼に姿を変えるスペイン人のヴァルデマルは呪いを解く為に賢者を訪ねて日本へやって来る。しかし賢者を見つける事が出来ず、狼に姿を変えたヴァルデマルは京都で凶行を繰り返す。織田信長の命を受けた蘭方医の貴庵(賢者)は事態解明に赴くが、貴庵の命を狙う忍者軍団、更に織田信長に滅ぼされた武者の亡霊軍団を率いる女妖術師がヴァルデマルにかけられた呪いを悪用しようとして現れ、三ツ巴四ツ巴の闘いが展開する……
【解説】
主演のポール・ナッシーと監督のハシント・モリナは同一人物で、スパニッシュ・ホラー映画ファンには御馴染みの人。彼は日本のホリ企画の依頼でプラド美術館のドキュメンタリー映画を手掛けた事があり、それが縁でスペイン/日本合作の映画『残酷!狂宴の館』を製作。続く合作第2弾として、天知茂のアマチ・フィルムズとの提携で製作されたのが本作です。
日本でビデオ化された90分版と、スペインで劇場公開された115分版があります。
『SF ソードキル』
SWORDKILL
1984年 アメリカ
日本劇場公開 1986年12月20日(東京)
ベストロン 配給
【出演】
藤岡弘
ジャネット・ジュリアン
ジョン・カルヴィン
チャールズ・ウォルシュ
クリス・ウェルズ
ロバート・キノ
ミエコ・コバヤシ
ビル・モーレイ
フランク・シュラー
アンディ・ウッド
【監督】
J・ラリー・キャロル
【粗筋】
1522年、真壁一族の多賀義光は卑劣な敵によって重症を負わされ凍てついた川に沈んだ。400年以上の時が流れた現代、冷凍冬眠状態で発見された多賀義光はロサンゼルスの研究所に運ばれる。覚醒した多賀義光と唯一心を通わせる事が出来るのはジャーナリストのクリスだけであった。しかし刀を盗もうとした研究所所員を切り捨てた多賀義光は研究所から脱走、暴力の蔓延る異世界とも言うべき現代都市に身を投じる事になる……
【解説】
チャールズ・バンドが設立したエンパイア・ピクチャーズ初期の代表作。ストーリーのフォーマットは殆ど『キング・コング』。多賀義光は「拙者、真壁一族の多賀義光じゃ。己らは何者じゃ。此処は何処じゃ。」としか言いませんが、藤岡弘が演じる侍の凛々しさはしっかりと表現されています。(多賀義光の姿を見て「OH!トシロウ・ミフネ」と言う寿司BARの客や「三船敏郎知ッテマスカ?」を繰り返す寿司BARの店員が出てきますが……)
1985年のパリ国際ファンタスティック&SF映画祭で批評家賞を受賞。日本では1986年の東京国際ファンタスティック映画祭で初公開、10月17日に「ファンタスティック・ナイト」と称したオールナイト上映企画で『ZOMBIO 死霊のしたたり』『クロールスペース』『テラー・ビジョン』と併せて上映されました。
『兜 KABUTO』
JOURNEY OF HONOR
1991年 アメリカ/イギリス/日本
日本劇場公開 1991年4月27日
東宝東和 配給
【出演】
ショー・コスギ
ケイン・コスギ
クリストファー・リー
ノーマン・ロイド
高田美和
ジョン・リス=デイヴィス
ポーリー・ウォーカー
デヴィッド・エセックス
清川虹子
三船敏郎
【監督】
ゴードン・ヘスラー
【粗筋】
関ヶ原の合戦の後、来る豊臣家との戦いに備え、徳川家康は最新型銃の購入の為に、実子の頼宗と家臣の前田大五郎をイスパニアに派遣する。しかし彼らの乗った船は嵐と遭遇して沈没し、銃購入の為の黄金も海中に没してしまう。それでもイスパニアに辿り着いた前田大五郎と徳川頼宗は、時のイスパニア国王フィリップの王位を狙うドン・ペドロの陰謀に立ち向かう事になる……
【解説】
ニンジャ・スターとして日本に凱旋したショー・コスギが新たにショー・コスギ・コーポレーションを立ち上げ映画製作に乗り出します。バブル景気で沸き立っていた日本では僅かの間に20億円の資金が集まりました。その資金でショー・コスギは3本の映画を製作するつもりだったのですが、投資家に押し切られて1本の作品に20億円+自己資金を投入する事になります。そうして製作された『兜 KABUTO』でしたが、興行的には当時アメリカで起きていたジャパン・バッシングが災いする形になりました。ショー・コスギ自身「ムードに乗せられて失敗した典型的なケース」として自戒されています。
新日本プロレスが1991年3月21日に開催した「'91 スターケード in 闘強導夢」で組まれたグレート・ムタvsスティングの一戦で、両選手入場前に行われた鎧武者と西洋騎士のデモンストレーションは、この映画とのタイアップです。
『ヤマダ アユタヤの侍』
YAMADA:SAMURAI OF AYOTHAYA
2010年 タイ
日本未公開
【出演】
大関正義
カノルコン・ジェイチュン
ソーラポン・チャートリー
ウイナイ・クライブトル
タナウット・ケツァロ
ブアコー・バンチャメク
ソムジット・ジョンジョホール
ビン・ブンルエリット
浅井大
ビン・バンロエリット
【監督】
ノッポーン・ワルティン
ノッポーン・ワティン
【粗筋】
江戸時代初期、日本から海を越えてシャムに渡った山田長政。しかしシャムの日本人街で忍者軍団に命を狙われる事になってしまう。アユタヤの村の民に命を救われた山田長政は、村の女性ジャンパァと恋に落ち、ムエタイ戦士プラ・クルウの元でムエタイの修行をする事になる。やがて山田長政はナレスワン王の命を受け蛮族との戦いに臨む。蛮族を退けた山田長政は忍者軍団との最終決戦を向かえる……
【解説】
1612年に朱印船で長崎からシャム(現在のタイ)に渡り、現地の日本人で結成された傭兵隊に加わり、日本人街の頭領となった後、二度に渡るスペイン艦隊の侵略を退けソンタム国王の信任を得た事で知られる山田長政を主人公にした作品。歴史ドラマというよりは、トニー・ジャー主演『マッハ!!!!!!!!』に代表されるムエタイ・アクション映画の趣きの作品。タイ映画界で活動している大関正義の初主演映画でもあります。
……以下の2作品は幻の映画です。
『ザ・ゴールデン・サムライ』
THE GOLDEN SAMURAI
1992年 アメリカ/日本
【出演予定】
加藤雅也
三船敏郎
【監督予定】
ジョン・ギラーミン
【解説】
幕末ないしは明治維新の頃を舞台に、イギリスのビクトリア女王から日本の帝に贈られる黄金を受け取る為に、イギリスの植民地であったアフリカへ赴く侍を描く作品……と言われていました。製作発表が行われましたが、企画が頓挫しています。
『サクラ 青い目の侍』
SAKURA:BLUE EYED SAMURAI
2004年 アメリカ/日本
【出演】
ケーリー・エルウェス
ウィリアム・ボールドウィン
ジェームズ・レブホーン
Ami
勝野洋
菅田俊
加藤雅也
牧瀬里穂
六平直政
原田大二郎
【脚本】
スティーブ・チャヒーン
クリス・モーガン
【監督】
ディーン・パラスケボポラス
【解説】
1866年、アメリカの駐日総領事ハリスと日本人女性(唐人お吉がモデル?)との間に産まれた少女が命を狙われ、彼女を守って闘う侍を描いた作品。
元々は千葉真一 主演の企画。撮影開始直後に千葉真一とディーン・パラスケボポラス監督との間で激しい対立が起き、千葉真一は降板。キャストを変更して撮影が行われ、クランクアップはしたと言われていますが、未編集のまま放置されている様です。
……以上、国際的に活躍した+国際的に活躍する筈だった“七人のサムライ”でした。
名古屋市映画案内より
『将軍 SHŌGUN』劇場版
1980年11月8日公開