現在公開中の映画『サンクスギビング』。元々はクエンティン・タランティーノ&ロバート・ロドリゲス監督による2007年の映画『グラインドハウス』内のフェイク予告編として、イーライ・ロスが監督し製作した映像。それが16年の時を経て今回長編作品として映画化されたものです。

このフェイク予告編の製作は、イーライ・ロスのインタビュー発言によれば「これまでに色んな記念日を舞台にしたホラー映画があったけど、サンクスギビング=感謝祭を舞台にした映画はなかったから、作ってみた」との事。(実際には1984年作品で、日本ではビデオ・スルーとなった『血の週末 暴獣のいけにえ』があります)

今回の長編映画『サンクスギビング』は、あちこちに1970年代末〜1980年代に製作された記念日ホラーのスタイルを踏襲した表現があり、イーライ・ロスの意図が伺えます。

そこで……そんな1970年代末~1980年代に製作され、日本で劇場公開された記念日ホラーを簡単に記しておきます。



『ハロウィン』
HALLOWEEN
1978年 アメリカ
【主演】ジェイミー・リー・カーティス
【監督】ジョン・カーペンター
【東京公開】1979年8月18日 
【名古屋公開】1979年9月1日
【地方併映作】『雨のしのび逢い』
【配給】ジョイパック・フィルム
【解説】記念日ホラー映画の原点と言って差し支えないでしょう。
謎の殺人鬼ブギーマンのマスクは、当初はピエロ・マスクを予定していたものの、マジック・ショップで購入した『宇宙大作戦(スター・トレック)』のカーク船長のマスクを簡単に改造したものを試しに使ってみたら、その場のスタッフが不気味さに言葉を失い、即採用……という事だった様です。
アメリカではテレビ放映の際、残酷場面をカットし新たにドラマ部分を追加した別バージョンが製作されています。日本ではJVDから発売されたDVDに、この別バージョンが収録されました。
その後、続篇、番外篇、リメイク、別の続篇など、シリーズとして総計13本の映画が製作されています。
【名古屋上映劇場】
名宝スカラ座



『テラー・トレイン』
TERROR TRAIN
1980年 カナダ
【主演】ベン・ジョンソン
【監督】ロジャー・スポティスウッド
【東京公開】1981年5月2日
【名古屋公開】1981年5月16日
【地方併映】『オーメン 最後の闘争』
【配給】20世紀フォックス
【解説】タイトルからは分かりませんが、大晦日を舞台にした作品です。
キャスト・クレジットは列車の車掌を演じるベン・ジョンソンがトップですが、ホラー映画ファンから見れば『ハロウィン』に続きジェイミー・リー・カーティスが出演している事が高ポイントです。また劇中でマジックを披露しているのは、あのデビッド・カッパーフィールド。彼の映画初出演です。
この作品も含めて下記で紹介する作品の多くがカナダ映画なのは、カナダの税金保護下で製作されている為です。
2008年にリメイク版が製作されています。
【名古屋上映劇場】
毎日ホール大劇場/中日シネラマ


『13日の金曜日』
FRIDAY THE 13TH
1980年 アメリカ
【主演】ベッツィ・パーマー
【監督】ショーン・S・カニンガム
【日本公開】1981年8月15日
【地方併映作】『ブロンコ・ビリー』
【配給】ワーナー・ブラザース
【解説】ショーン・S・カニンガムは1978年に少年野球チームを描いた『GO!GO!タイガース』(HERE COME THE TIGERS)を監督した際、タイトルを巡って映画会社と対立、「だったら『13日の金曜日』というタイトルにしやがれ!」と吐き捨てるのですが、その後「本当に、そのタイトルの映画を作ってみようか」と思い業界紙に出資者募集の広告を出したところ、あっさり資金が集まり製作に至ったとの事。
主演のベッツィ・パーマーは、アメリカでは主にTVドラマで御馴染みだった女優。人の良い婦人役を多く演じてきたので、『13日の金曜日』の出演オファーに対して「ホラー映画なんてとんでもない」と思ったものの、自家用車の修理費用を捻出する為に出演を決めたとの事。「どうせ、こんな映画は誰も見ないわ」と思っていたパーマーの予想に反して、映画は世界各国で大ヒット。パーマーは「ジェイソンのおっ母さん」として知れ渡る事になりました。
続篇、リメイクなど、映画のシリーズとしては12本が製作。内容は異なるものの同名のTVドラマ・シリーズも製作されています。
『13日の金曜日 ~地獄のフライデー~』『序曲 13日の金曜日』の邦題でビデオ発売された作品は、シリーズとは無関係です。
【名古屋上映劇場】
グランド劇場/今池国際劇場


『血のバレンタイン』
MY BLOODY VALENTINE
1981年 カナダ
【主演】ポール・ケルマン
【監督】ジョージ・ミハルカ
【日本公開】1981年9月12日
【地方併映作】『13日の金曜日 PART2』
【配給】CIC
【解説】日本では「オリジナル・ハード版ノーカット上映」と銘打って、カナダやアメリカで上映した際には削除された残酷シーンを復活させたバージョンが公開されました。当時の日本は映画の残酷描写に関してはかなり寛容だったのです。「このバレンタイン・ショックはオリジナル版上映不可能!日本国内がオリジナル版初上映!」と、過激な作品である事を宣伝面でも強調していました。しかも地方併映作品が『13日の金曜日 PART2』。このオリジナル版のソフトは日本では中々発売されませんでしたが、2024年にようやくにしてBlu-rayの発売が決定しました。残念ながら2月14日には間に合わない様ですが……
2009年の『ブラッディ・バレンタイン 3D』は本作品のリメイクです。
【名古屋上映劇場】
名宝スカラ座


『プロムナイト』
PROM NIGHT
1980年 カナダ
【主演】ジェイミー・リー・カーティス
【監督】ポール・リンチ
【日本公開】1981年10月17日
【地方併映作】『夢のサーフシティー』
【配給】松竹富士
【解説】『ハロウィン』以降、立て続けにホラー映画に出演した事で、海外では「スクリーミング・クィーン」、日本でも「ホラー映画のクィーン」と呼称されていたジェイミー・リー・カーティス主演作。学園の校長役がコメディ演技開眼前?のレスリー・ニールセン。
ジェイミー・リー・カーティスは上記の『テラー・トレイン』に先駆けて本作に出演しています。
アメリカでTV放映された際は、『ハロウィン』同様に幾つかの場面が削除され、代替場面が追加された別バージョンがオンエアされました。
日本ではRCAレコードからサントラ盤レコードが発売されましたが、この発売は日本だけだった様です。
主題歌はブルー・バザールが歌う「オール・イズ・ゴーン」。
シリーズ化され計4作が製作され、リメイク版も製作されています。『プロムナイト5』の邦題でビデオ発売された作品はシリーズとは無関係です。
【名古屋上映劇場】
セントラル劇場


『誕生日はもう来ない』
HAPPY BIRTHDAY TO ME
1981年 カナダ
【主演】メリッサ・スー・アンダーソン
【監督】J・リー・トンプソン
【東京公開】1981年10月31日
【名古屋公開】1981年11月21日
【地方併映作】『昔みたい』
【配給】コロムビア映画
【解説】1974年~1983年にかけ、アメリカNBCで9シーズンにわたって放送され、1983年~1984年にかけ3本のスペシャル版が放送された大人気TVドラマ・シリーズ『大草原の小さな家』。日本でもNHKで放送され好評だった作品ですが、同作品でインガルス家の長女メアリーを演じていたメリッサ・スー・アンダーソンが主演。(『誕生日はもう来ない』は、恐らく『大草原の小さな家』のシーズン6とシーズン7の間に撮影されたのではないかと…:)
監督は『ナバロンの要塞』『恐怖の岬』『マッケンナの黄金』の巨匠、J・リー・トンプソン。
製作のジョン・ダニング&シビル・リンクは『血のバレンタイン』も製作。製作されたのは『誕生日はもう来ない』の方が先ですが、バレンタイン・デーに併せる為に『血のバレンタイン』が先行公開されました。
【名古屋上映劇場】
セントラル劇場


『エイプリル・フール』
APRIL FOOL'S DAY
1986年 アメリカ
【主演】エイミー・スティール
【監督】フレッド・ウォルトン
【日本公開】1987年3月14日
【地方併映作】『フェリスはある朝突然に』
【配給】UIP
【解説】孤島を舞台にした、最早定番となっていたスタイルのスラッシャー映画……かと思わせておいて、ラストシーンで大どんでん返しを見せる作品。殆ど反則なのですが、タイトルが『エイプリル・フール』……つまり4月バカ。映画の構造自体が実は4月バカ状態になっていると解釈すれば、まぁ納得の内容……でしょうか?
日本では、この『エイプリル・フール』が劇場公開された同時期に『ブラッド・エイプリル・フール』なる1985年のイギリス映画(主演はキャロライン・マンロー)がビデオ化されており、しかも原題が両作品とも同じなので、少々ややこしいです。
本作はビデオ化の際に『エイプリル・フール 鮮血の記念日』と、サブタイトルが付きました。
【名古屋上映劇場】
セントラル劇場