1978年は空前のアニメ・ブームが起きた年でした。
その中心に在ったのは『宇宙戦艦ヤマト』だったのですが、一方でNHKがTVアニメ・シリーズの放送を開始した事が大きな話題となりました。

NHKと言えば当時は堅いイメージがあり、テスト放送時代の『新しい動画 3つのはなし』、小松左京さん原作で一部にアニメが使用されていたドラマ『宇宙人ピピ』、5分番組『みんなのうた』を例外とすれば、本格的なTVアニメとは無縁だと思われていました。

そのNHKが、1978年4月よりTVアニメ・シリーズ『未来少年コナン』の放送を開始。世界名作童話的な作品ではなく、SF作品が放送された背景として、上述の様に当時のアニメ・ブームは『宇宙戦艦ヤマト』が中心だった事が挙げられます。
(この『未来少年コナン』が巡り巡って、スタジオジブリ創設に繋がります)

同年11月より『未来少年コナン』に続くTVアニメ・シリーズ第2作として放送されたのが『キャプテンフューチャー』です。エドモンド・ハミルトン原作のスペース・オペラ小説のアニメ化であり、如何に当時はSF作品が求められていたかが窺えます。

1978年12月31日。NHKは午後7時50分から午後8時50分の枠、つまり『紅白歌合戦』の放送直前の番組として『キャプテンフューチャー』の特番を放送するという、当時のアニメ・ファン驚愕の編成を行いました。

『キャプテンフューチャー・スペシャル 華麗なる太陽系レース』
シリーズの第8話と第9話の間のエピソードとなっています。

当時の大晦日のTV番組と言えば、午後7時からTBSの『輝く日本レコード大賞』、午後9時からNHKの『紅白歌合戦』を見るというのが視聴者の定番であり、両方の番組に出演するのが歌手のステイタスであり、赤坂のTBSから渋谷のNHKに急ぎ移動する歌手の姿が大晦日の風物詩でもあった時代でした。
(上記のラ・テ欄を見ても『輝く日本レコード大賞』の放送を終えたTBSは、午後9時より同年3月放送の単発ドラマ『きみちゃん』の再放送を行い、その後は『すばらしき仲間』『もうひとつ旅』と、レギュラー番組を放送。特番の類いを放送していません)

そんな中で『紅白歌合戦』の直前、『輝く日本レコード大賞』の裏番組としてアニメ特番が放送される……テレビ朝日系が『大晦日だよ!ドラえもん』の放送を始める2年前の事です。

しかし、この日。日本全国のアニメ・ファンを悩ませたのは、フジテレビ系で放送中のTVアニメ・シリーズ『ペリーヌ物語』の最終回が放送され、10分だけ『キャプテンフューチャー』と放送時間が被った事です。

1978年12月31日は日曜日。『ペリーヌ物語』はレギュラー放送でしたが、『キャプテンフューチャー』のレギュラー放送は毎週火曜日。この日の『キャプテンフューチャー』の放送はタイトル通り「スペシャル」だったのです。

『ペリーヌ物語』の放送が午後7時30分から午後8時。ペリーヌとビルフランがダンスを始めるラストシーンに差し掛かる頃に『キャプテンフューチャー』の放送が開始されるという……(当時は家庭用のビデオデッキは高額で、まだ普及していませんでした)
『ペリーヌ物語』放送開始は1978年1月1日。1年間見続けてきたシリーズの最終回のラストシーンを見逃す訳にもいかず「NHK、キャプテンフューチャーの放送開始を10分後ろにずらしてくれよ〜」……日本中のアニメ・ファンが嘆いたのでした。(笑)

今から45年前、(2023年と同じ)大晦日の日曜日に起きた話です。

『キャプテンフューチャー・スペシャル 華麗なる太陽系レース』は、1979年3月17日公開の『東映まんがまつり』内で劇場上映も行われています。