一時期、何かしらの特別な日になると惨劇が起きるホラー映画が量産されていました。


『ハロウィン』『13日の金曜日』『プロムナイト』『誕生日はもう来ない』『エイプリルフール』……

そんな中で、やはりこの日も…といった感じで製作されたのが1981年のカナダ映画『血のバレンタイン』でした。


少し話は逸れますが……日本では、映画に於ける残酷描写に対して寛容な時代がありました。幾つか例を挙げると……


1967年のマカロニ・ウェスタン『情無用のジャンゴ』の日本公開版は、国際版ではカットされた残酷映像のてんこ盛り。「身の毛もよだつ問題の超残酷シーン!」と銘打って、件の映像が見せ場として宣伝され公開されました。


1977年の『ドクター・モローの島』の日本公開版は、アメリカ公開版にはないバッド・エンディング。その映像は現存していないのか、TV再放送時に解説の水野晴郎さんが「探したけれども見つからなかった」と語り、その後に発売された各種ソフトにも収録されていません。日本劇場公開時の惹句は「ラスト3分のショックは あなたの心臓をえぐり取る!」ですが、その「ラスト3分のショック」が現在は鑑賞が困難です。


1984年の『悪魔の毒々モンスター』は、日本では東京国際ファンタスティック映画祭で初御目。その際、アメリカでも公開出来なかったノーカット完全版が上映され、来日中だった同作のプロデューサーのロイド・カウフマンは大喜び。舞台挨拶で「続編は日本でロケする」と宣言。皆がリップ・サービスだと思っていたら本当に日本ロケーションを敢行しました。


『血のバレンタイン』も日本劇場公開版は、本国公開時ではカットされた数々のゴア・シーンが収録されたオリジナル版。当時の新聞広告では「オリジナル・ハード版ノーカット上映!」と称されていました。

チラシには「このバレンタイン・ショックはアメリカ国内にてオリジナル版上映禁止!日本公開がオリジナル版初上映!!」の記載もありました。


因みに『血のバレンタイン』の日本公開日は1981年9月12日。

地方都市では併映が『13日の金曜日 PART2』。“特別な日に惨劇が起きる”ホラー映画の2本立てでした。

しかも「12日」の公開で「13日」と「14日」を舞台にしたホラー映画2本立てという、出来過ぎの組み合わせでありました。


さて、この『血のバレンタイン』ですが……


日本劇場公開版の上映時間が記録によれば91分。


カナダ/アメリカの劇場公開版が90分。


CIC・ビクターから発売された「オリジナル全長版」と称したVHSが100分。


DVDは海外版と国内版は同一で90分。


アメリカで発売中のBlu-rayのコレクターズ・エディションが、90分のカナダ/アメリカ劇場公開版と、93分のアンカット版の2枚組。


……と複数のバージョンが存在します。


そう言えば……とある日本国内のメーカーが、以前から「とあるホラー作品の完全版」として、シークレット扱いで某映画のBlu-rayの発売を予告していたのですが、改めて販売待機作品として、タイトルを伏せたまま情報を更新しました。

わざわざ2月14日に情報を更新する辺り、どう考えても発売されるのは……?


“震えて待て”という事でしょうか。



『血のバレンタイン』

MY BLOODY VALENTINE

1981年   カナダ

【出演】

ポール・ケルマン

ロリ・ハリヤー

シンシア・デイル

ニール・アフレック

キース・ナイト

アルフ・ハンフリーズ

ヘレン・ユディ

ドン・フランクス

パトリシア・ハミルトン

ジム・マーチソン

【監督】

ジョージ・ハミルカ