(あいつらもやられたというのか)
ダークザウラーの部下であるカオスプテラにより、ブルドリラーとガゼルスピアーが深手を負っている。風切頭領軍も無事では済まされないだろう。短時間で、地底帝国の中心勢力をズタボロにするとは、改めてダークザウラーの恐ろしさを思い知らされた。
(下手に抵抗しては、軍勢が全滅するのは必至。ならば、無理に逆らわず、奴を懐柔してみようと試みたのじゃ。過去に己を封印した張本人の説得に従うか、かなりの賭けであったが、奴はあっさりと従いおった)
話の流れからして、ノロイムカデが何を持ちかけたかは大体想像がつく。大かた、「こんな辺境の地で貴方様の力をくすぶらせておくのはもったいない。もっと広大な世界で、その力を発揮し、いずれは全世界の王となられてはいかがでしょう」とでも説得したのだろう。
(そのような感じのことを言ったのじゃ。察しが良いの)
(だてに貴様と長年戦ってるわけじゃない)
(それはともかくとして、ここはいったんわしの策に乗ってはくれぬか)
(この俺に負けを認めろというのか)
それはできない相談だというのは、ウルブレードのプライドの高さからすれば自明であった。それでもなおノロイムカデは続けた。
(このまま戦い続けても、被害は広がるばかり。冗談抜きでやつにこの帝国が支配されてしまう。ならば、一旦奴の目標をこの帝国の外にずらじ、隙ができたときに一気に攻め込むのじゃ。おまけに、外国侵略が成功すれば、当然我らの利益にもなる)
(早い話が漁夫の利を狙うってことか)
多少卑怯ではあるこの作戦を、正直ウルブレードは良しとはしなかった。だが、現時点ではやつを制圧できるほどの力がないのは事実。苦渋の末、ウルブレードは結論を出した。
胸を押さえながら立ち上がると、ダークザウラーの元に歩み寄る。後方からはベノムブラキオが睨んでいる。腕組をするダークザウラーの足元で、ウルブレードは片膝をついた。
「ダークザウラー様、ここは我らの敗北を認めましょう。これより、貴方様の計画に従います」
それを聞いたダークザウラーは口角を持ち上げ、大剣をつきつけた。
「その言葉に偽りはないな。もし、下手な企てでもしてみよ。その時には、その首をいただくぞ」
「異論はない」
ウルブレードと視線がぶつかる。不思議とその目に悲壮感はない。若干の気にくわなさを感じながらも、ダークザウラーは剣を収めた。
「よかろう。他国侵略の詳細は追って伝える。それまで十分に体力を回復しておけ。カオスプテラ、ベノムブラキオ、今日は引き上げるぞ」
「了解しました」
「へ、命拾いしたな、若狼」
ベノムブラキオが去り際に挑発する。ウルブレードはただ頭を下げるだけであった。だが、その心中ではフツフツとやり切れぬ思いが沸き立っていた。