胸から鮮血があふれ出し、ウルブレードはうずくまる。これでも太刀筋は心臓をそれていた。あと少し下だったらそのまま絶命していた可能性だってある。
いや、ダークザウラーはわざと外した。薄々ながらもウルブレードはそう感じていた。なにせ、不意を突いた一瞬とはいえ、ウルブレードは丸裸だったのだ。ダークザウラーほどの戦士が急所を逃すとは考えにくい。
とはいえ、胸を大きくえぐられている以上、反撃に転じるのは困難だった。それでも無理に立ち上がろうとすると、首筋に大剣を当てられた。
「いい加減認めたらどうだ。これ以上の戦いは無益だと。今ならまだ降伏すれば許してやらんこともない。まあ、どちらにせよ、そなたの命を奪うのは気が進まんのだがな」
「今もみねうちみたいなマネしやがって。一体何を企んでやがる」
ウルカリバーに対する憂さを晴らしたいだけなら、あの一撃で葬り去っていてもいいはずだ。幾度か「殺す」という発言をしながらも、実質はそれをためらっている節がある。
すると、ダークザウラーは大剣を引っ込め、鞘におさめた。瞠目するウルブレードをよそに、腕を組んで話を続けた。
「そろそろ、我の計画を話してもいいころか。まあ、正確にはそこのじじいから入れ知恵されたのだがな」
「ノロイムカデが」
目くばせすると、ノロイムカデは狡猾な笑みを浮かべている。この耄碌じじい、襲撃を受けた際に最後っ屁でもくらわしたらしい。
「聞けば、我が封印されている間に周辺の勢力は着実にその力を伸ばしてきているそうではないか」
「言われてみればそうだな」
地底帝国は帝国内での皇位決定戦に従事していたが、その長き争いの間、周辺諸国がのうのうと暮らしていたとは考えにくい。少なくとも、ダークザウラー封印前より力をつけてきていることは事実だろう。
「我としてはこの地底帝国だけを統治するのでは飽き足らん。どうせならば周辺諸国、いな、この世のすべてを我が手中にしてこそ、新の王者といえるだろう」
「まさか、貴様」
野望の片鱗が分かり、ウルブレードは身を乗り出した。