岩壁に寄りかかってうなだれるガゼルスピアーとブルドリラー。カオスプテラは旋回したのち、悠々と着陸した。
「これで邪魔はいなくなったわ。今度はあなたの番よ」
「貴様、俺の仲間をこんな目に遭わせてただで済むと思うなよ」
怒りにまかせたウルブレードの一閃は、上空に飛び去られたことで回避される。カオスプテラはそこから得意の突進攻撃を繰り出す。このまま岩壁に叩きつけようという寸法だが、そうも安々と思惑通りにさせるわけがない。ウルブレードはとっさに右に横飛びし、カオスプテラを通過させた。
カオスプテラはその勢いのまま上昇し、ウルブレードの頭上で一旦停止する。そして、脳天めがけ、両足の鉤爪を広げて急降下してきたのだ。
これに対し、ウルブレードは刃を掲げて迎え撃つ。刃を持つウルブレード相手に単純な突進攻撃では、逆に刃によって傷つけられてしまう。そこで、頑丈な鉤爪を用いて、刃に接触した際の衝撃を軽減しようという策だった。
あと数秒刃を掲げるのが遅ければ、頭上を鉤爪によって鷲掴みにされていたところだ。刃によって押しとどめられているが、カオスプテラはなお両足に力を入れる。強引に刃を弾き飛ばすつもりだ。
それを悟ったのか、ウルブレードは奇策を講じた。体全体を使いながら、刃で押し戻そうとしていたのだが、ふとその力をゆるめ、両手を離した。そして、刃を残したまま、カオスプテラの真下を潜り抜け離脱した。
急に張り合いがなくなったため、カオスプテラはつんのめって地面に不時着する。急に力を緩めるとは、予想外もいいところだ。だが、その一方でウルブレードはある過ちを犯した。
カオスプテラが砂埃を払いのけつつ立ち上がるや、眼下に自分の攻撃を受け止め続けてきた憎き刃が転がっているのだ。
「おバカな狼ね。自ら武器を捨てるなんて」
カオスプテラはそう言い捨てると、ウルブレード自慢の刃に手を伸ばした。