この回から第3部の開幕です。
第3部 侵略編
地底帝国の中央部に位置する神殿。そこは転生の儀といった重要な儀式で使われる、地底帝国の中枢ともいえる場所であった。
その地下には古びた銅像があるのだが、それは決して触れてはならないいわくつきの像となっていた。幼子をしつけする際に「言うことを聞かなければ神殿の像の前に置き去りにしますよ」という定例文が使われるぐらいだ。血気盛んな戦闘民族といえど、好き好んでこの像に近づく者はいなかったのである。
しかし、そんな像に近づくものが2体もいた。怖いもの知らずの愚か者か。否、そんな大層なものではない。
「ブルドリラー、こっちは終わったよ」
「よし、あとはこの像の周りだけだ」
長期間誰も踏み入れてない割に、塵やほこりがたまりにたまっている。もちろん、いわくつきの像もほこりをかぶって汚い化粧が施されていた。その埃を木の枝を使ってかき集め、一か所にまとめていく。
本日は、年に一度の大掃除の日であった。生活環境にはあまり頓着しない気質ではあるが、それでも最低限は清潔にしておかないと居心地が悪いのである。なので、定期的に掃除が行われているが、それを担当しているのがブルドリラーやガゼルスピアーといった下位クラスの戦士なのであった。
特に、皇帝にウルブレードが就任しているためか、獣刃大将軍の戦士が掃除を一任されていた。本来ならあと2体は戦士がいるのであるが、1体は反逆罪で監禁中、もう1体はその際の戦いで殉職してしまったため、実質ブルドリラーとガゼルランサーで主要施設の清掃をすることになっている。
この神殿も、残すはこの像が安置してある地下の間だけとなっていた。悪い噂が込められている像を前に、掃除をしていても気が気でならない。特に、像そのものを掃除するときは小一時間ぐらい言い争い、結局ガゼルスピアーがおっかなびっくりとりかかる始末だ。
「まったく。いつまでこんな心臓に悪い像を飾っておくんでしょうかね」
「それは前から思っているが、耄碌じいさんによると、この像はむやみに壊すとまずいらしい」
「壊すとまずいって、どういうこと」
「そこまでは知らない。ただ、どうやらウルブレード様の親父さんが関わっているみたいなんだ」
「へえ。じゃあもしかしたら、ウルブレード様が何か知ってるかもしれないね」
「ちょうどいい機会だ。掃除が終わったら聞いてみることにするか」
そう合意した二体は、心持スムーズに掃除を終わらせていくのだった。