同時に放たれた拳は、そのまま同時に互いの横面に炸裂した。そのまま膠着状態が続く。当人はもちろん、観戦していた戦士たちにも分かった。この一撃が勝負を決していると。
極度の緊張感の中、べアックスが表情を綻ばした。まさか。一同は落胆しかける。
しかし、べアックスはそのまま片膝をついた。それがきっかけとなり、その場に正面から崩れ落ちたのだ。ウルブレードは荒い呼吸をしているものの、ついに倒れることはなかった。
ギリギリの攻防を制したウルブレードのもとに、ガゼルスピアーたちが駆け寄ってきた。その時になって初めて、ブルドリラーの肩にもたれかかるようにして体を預けたのだった。
「やりましたね、ウルブレード様」
「ああ。だが、ここまで苦戦するとは思わなかったぜ。さすがは狂者の血というべきだな」
ベアックスはというと、ノロイムカデとソニクジャクによって身柄を拘束されている。たとえ抵抗したとしても、あの2体から逃れることはまず無理であろうし、何より、ウルブレードとの戦いでそんな体力も残されていないはずだった。
「本来はお主の仕事じゃが、今回は特別じゃ。こいつは独房に戻しておくぞ。ここまで大事を起こしたんじゃ。もはや裁判もへったくれもない。厳重に監禁したうえ、終身刑と処するが異論はないな」
「もちろんだ」
裁判を執り行うとした張本人がこうした見解を述べているのだ。今さらながら、とんでもない大罪人と拳を交えていたのだなと実感する。
ベアックスを連行していく間際、
「そうだ、ウルブレード」
ソニクジャクが呼びかけた。
「あんた、この戦いで少しは成長したみたいね。私が、あんたを皇帝にふさわしくないとした理由分かってもらえたかしら」
「まあな。今のまま強くなっても、親父は浮かばれねえだろ。どうせ親父を超えるなら、死んだ親父に面目がたつやり方じゃないとな」
「ならいいわ。あと、こいつにアクアヒルを殺された憂さ晴らしが済んでなかったから、独房に突っ込んだらけちょんけちょんにしていい」
「勝手にしろ」
「分かったわ。エレキバット、コルコンドル、腕鳴らしをしておきなさい」
「御意」
今回は事情が事情なだけに、同情する気は起きなかった。
ウルブレードはエレファンマーの亡骸に目を伏せた。直接的に手を下したのはべアックスだが、ウルブレードも間接的に手を下していたような気がして罪の意識にさいなまれたのだ。あのソニクジャクの言葉の意味をもう少しかみしめていればもう少し違った結果になったかもしれない。だが、そのことを自覚するのに払った代償はあまりにも大きかったのだ。
第2部 反逆編完結
はい、ようやく第2部も終了しましたね。予定では第4部まで続くので、これでようやく半分というわけです。それまで半年かかったから、完結するのは10月ごろか?まあ、ペースも多少なりとも上がってきているし、3,4部はそこまで長編にする気はないからもっと早く完結するかも。
さて、第3部ですが、主役は地底帝国の中で唯一未登場だったあいつ。しかも、新キャラを2体もひきつれて登場です。さらには、あの組織まで登場する予定なので、乞うご期待。