突き飛ばされたワザワイカブトは、起き上がるやその手で複雑怪奇な印字を結んだ。そして、楔を取り出すと、地面に突き刺し、鎚を振り上げた。
「幸福逆転」
楔が地面に打ち付けられる。その隙間から禍々しいオーラが発生し、べアックスとエレファンマーを包んだ。
「貴様らが得意とするまやかしの術か。そんなものがこの俺に通じると思ったら大間違いだぞ」
言うが早いか、べアックスはワザワイカブトにつかみかかろうとした。だが、その直前に、小石に蹴躓いて転倒してしまう。失笑するエレファンマーをべアックスは睨みつける。
無言のままべアックスの命令を受け取ったエレファンマーは、ワザワイカブトへ向けて突進する。そのままハンマーでたたきつぶそうとするが、あろうことか肝心のハンマーが手からすっぽ抜けてしまった。
「ハハハ。いくら実力があるとしても、運に見放されたのではどうしようもあるまい。まさに、運も実力のうちというわけだ」
居丈高にふんぞりかえるワザワイカブト。不幸を呼び寄せることで、成功していたはずの攻撃も強制的に無効化してしまう。これには、いかなる戦士も太刀打ちできない。
そう思われたのだが、実は意外な盲点があった。幸福逆転は、運を悪くするだけであり、確実に不幸を呼び寄せるわけではない。あるいは、もともと不幸な結果になるはずなのに、それを否定してしまうこともあるのだ。
小難しい理論を抜きに、現実の出来事に立ち返ると、エレファンマーの手から飛び出し、あらぬ方向に旅立つはずだったハンマーは、あろうことかワザワイカブトの顔面に直撃したのだ。
ただでさえダメージが大きい箇所のうえ、油断しきっていたのが災いだった。ワザワイカブトがよろめいたところで、べアックスは両腕に力を込めた。
「断首獄斧(ギロチン・ヘルアックス)」
アクアヒルを葬り去った技が、ワザワイカブトの胸に炸裂した。
鎧をまとっていただけ、致命傷は免れたといえる。しかし、仰向けに寝転がる彼に、もはや戦う力はほとんど残されていなかった。
「雑魚が。次はお前だ、じじい」
あっさりと自慢の部下を倒され、ノロイムカデはたじろぐ。
「これは、私の出番じゃないですかね」
ルートの森の最深部から、不気味な声が響いた。