ウルブレードがルートの森への侵入を果たしたのを見送り、エレキバットはフミンミンゼミに向きなおった。同じ音波の使い手同士の対決。そうなると、単純に体力や技術力で競い合うこととなる。破壊音波の威力からして、使う技のレベルはほぼ互角だろう。だが、あの狡猾な老人の隠し玉だ。音波攻撃以外にも得意技があるとみて間違いない。
そう思案していたせいか、先制攻撃はフミンミンゼミに許してしまった。相手も、二度にわたって音波が打ち消されたため学習しているようだ。なので、仕掛けた攻撃は、純粋な右ストレートだった。
とっさに腕をクロスして受け止めるも、激しい痛みが襲う。かつて、ブルドリラーと一騎打ちで戦ったことがあったが、その時にくらった拳に引けを取らない威力だ。
エレキバットはもともと、肉弾戦に優れた戦士ではない。音波攻撃を主軸に、敵を惑わす、いわば技工士であった。フミンミンゼミもまた、同じようなタイプかと思いきや、あてが外れたようだ。いや、テクニシャンでなおかつパワーファイターという、戦闘においてもっとも戦いたくない相手なのかもしれない。
「私のパンチを受け止めるとは、なかなかやりますね。でも、これからが本番ですよ。不休連撃」
フミンミンゼミは、腰を落とすや、目にもとまらぬ連続パンチを繰り出した。腕を盾にしてダメージを軽減させているものの、攻撃は一向にやむ気配がない。耐えきれずにガードが緩んだ隙を、フミンミンゼミは見逃さなかった。
不意打ちしてきた一発目ほどの威力はないものの、それでも強力な一撃がもろに腹に入った。エレキバットはたまらず、地面に崩れ落ちる。フミンミンゼミはエレキバットの翼をつかむや、無理やり立ちあがらせた。
「どうです。私の第二の得意技、不休連撃。技の名前の通り、相手に休む暇を与えることなく連続で拳を打ち込む技です。虫の私が言うのもなんですが、あなたはすでに虫の息。さ~て、どう料理しましょうかね」
さすがは、ノロイムカデの隠し玉だ。ワザワイカブトやゲンワクアゲハとははっきりいってレベルが違い過ぎる。主であるソニクジャクでさえも、苦戦するやもしれぬ。
しかし、まだ希望は捨ててはいなかった。風切頭領軍の戦士は陰と陽にたとえられる。光あるところに影があり、またその逆も然り。反撃ののろしは実はもうあがっていた。