ちょっと早めの更新。より読みやすくするために、これまでの記事に、第1話と次の話へのリンクを貼ってみました。
木の根が入り乱れるルートの森。その最深部にノロイムカデが鎮座していた。この森では、彼が配下としている昆虫型の戦士が数多く暮らしている。そして、不可思議な魔術を得意としていることから、この場所は、他の部族から「入ったら絶対に抜け出せない迷宮」として恐れられているのだ。
「先の戦いで、ついに勝ち星100。我ら、呪術軍師軍の勝利は堅いですな」
「その通りじゃ。あの男が亡き今、若造と小娘相手じゃ、はじめから勝負は見えとるわい」
ノロイムカデとワザワイカブトは、ワイングラスを片手に悠々自適に語り合っていた。ちなみに、グラスの中身は濃厚な樹液だ。
この戦争の協定が結ばれるにあたって、普通であれば猛反対したであろう。なにせ、あの男のたくらみは分かり切っていたからだ。だが、ノロイムカデはあえて反論しなかった。それは、不確定情報ではあるものの、「近いうちに獣を侵食する脅威あり」との占いが出たからだ。ノロイムカデは、呪術を使うことで、近い未来の出来事を占うことができる。その的中率は8割ぐらいか。それでも、このときの占いが正しかったことは、伝説の男の病死をもって証明された。
現在、ノロイムカデが一番の戦績をあげているのは、これまでの戦いの経験もさることながら、この占いによる力が大きい。敵がいかなる作戦を立てようとも、ある程度把握できてしまうのだ。
「さて、次に戦いでは何が起こるのか、占ってみるとするかの」
勝利の晩さん会を終えたノロイムカデは、さっそく水晶玉の前に陣取った。不可思議な文言をつむぎ、杖を不規則に揺らす。すると、水晶が淡く輝き、そこからもやが発生した。そばで見物しているワザワイカブトには、その変化しか確認できないが、ノロイムカデには、水晶の中に映りこんだ映像を見ることができた。
すると、ワザワイカブトは、怪訝そうに身を乗り出した。水晶が光ってからというもの、ノロイムカデがなぜかうなっているのだ。的中率8割とはいえ、こういうときは、たいてい次の戦は負け戦となる。それも、今回はうなり方が尋常ではなかった。まるで、樹液に毒でも混ぜられていたかのようだ。
「ノロイムカデ様、いかがなされましたか」
「まさか、こんなことが。獣と鳥。二つが混じりて天命を覆すなり」
「獣と鳥。まさか、ウルブレードとソニクジャクが」
「そこまでははっきりせん。だが、次の戦争は、気を抜かん方がいい」
そして、その言葉は次の瞬間、現実味を帯びるのだった。
「ノロイムカデ様」
無数のりんぷんが漂ってきたかと思うと、それらは一か所に集まり、女性戦士の姿をかたどった。彼女はゲンワクアゲハ。呪術軍師軍の参謀役として活躍する戦士である。
「獣刃大将軍と風切頭領軍より、電報を預かってまいりました」
ゲンワクアゲハは、ノロイムカデに一本の巻物を差し出した。それを広げ、中身を確認する。すると、ノロイムカデは苦虫をかみつぶしたような表情になり、巻物をくしゃくしゃに丸めた。
「なめたマネをしおって、若造と小娘が!」
その怒号は、長年使えてきたゲンワクアゲハとワザワイカブトをもってしても、聞いたことがないものだった。
問題の巻物にはこう記されていたのだ。
「獣刃大将軍と風切頭領軍は、これより同盟関係となる。そして、次なる戦争を皇帝決定の最終試合とし、勝利した軍の頭が皇帝となることを要求する」
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