ライヨールのソムリエナイフを持っている。ワインは飲まない。スタッグホーンのハンドルが美しくて買ってしまったものだ。

と言う訳で全くの鑑賞用ナイフであるのだが、ただ一度、知人に貸したときにコルクスクリューを壊されてしまった。普段使うものでもないし、元々ハンドルが魅力なのだからと放置していた。

しかし偶然見付けたブログの記事によると、某有名刃物店に修理を依頼したところ、なんと無償でフランスのライヨール村へ送って修理してもらえたらしい。なんと夢のある話じゃないか。こういうことをしてもらえると、職人さんにチップでも弾みたくなるもの。

実際に修理するのかどうかは分からないが、この話を読んだだけで、壊れたナイフの価値がぐっと高まった。職人に見守られ続ける工芸品ほど幸せな存在はない。子供なんだよね。正に。

そういや昔、スイスかどっかの死にかけてる爺さんが一人で手作りしてるバーナーを買ったことがある。これもまた実に上手い具合に丁寧に作られた逸品で、眺めてさすってるだけで幸せなんだが、その爺さんがどうなったのか、少し気になる。もう十年以上経つから亡くなってるかな。壊れたら、出来るだけ自分で修理することにするよ。

熟練の技で丁寧に作られた道具って、道具の効用を超えて、それそのものが新たな価値を再生産するんだね。