戦争と資本主義 」 ヴェルナー・ゾンバルト(著), 金森誠也(翻訳) 講談社学術文庫
ISBN-10: 4062919974 ISBN-13: 978-4062919975
抜き読みにて読了。




まず表紙が美しい。カバー図版は、フェルディナンド・ジグムント・バック「フランス軍、マレンゴからの帰還」というものらしい。蟹江征治さん、ありがとう。

練兵場の経済学、王宮から農奴に至る一連の社会システムの動きの内、経済としての戦争活動を描いた1913年の力作。第1次世界大戦開戦直前の刊行であった。

近代国家の成立と共に、近代的軍隊が整備されるまでの歴史、軍隊の財政、装備の調達・維持・更新、給養(糧食)、被服、造船について、膨大な参考文献を読み解いて緻密な考察がなされる。

ミリメシやミリカジ的視点からは、給養および被服の章が興味深いのだが、ここでは、序文から早くも本書の真髄を示す幾つかの文章を抜粋しよう。

--
戦争は資本主義の組織をたんに破壊し、資本主義の発展をたんに阻んだばかりではない。それと同様に戦争は資本主義の発展を促進した。いやそればかりか――戦争はその発展をはじめて可能にした。それというのも、すべての資本主義が結びついているもっとも重要な条件が、戦争によってはじめて充足されねばならなかったからである。
--
P.24から。
多分、ここだけを読むと、多くの人は「ああ、重要な条件っていうのは大量消費のことかな。」と思うだろう。俺も思った。

--
戦争には二つの顔がある。ここでは破壊し、あそこでは建設するのだ。
--
P.29から。
「ま、まちるださぁぁぁぁぁん!」って叫んじゃいそうなのは置いといて。
関係ないけど、マチルダ中尉って「踊る~レインボーブリッジを封鎖せよ」の沖田警視正(真矢みき)っぽい。
物理的に、例えば工兵大隊が架橋するとかいうのはもちろんあるね。
因みに自衛隊は平時から橋やら学校やらの建設工事をやっておりますですよ。
田舎の人なら知ってるかもね。
ただ、そういう物理的な建設だけではなくて、戦争は、商取引のスキームであったり、商慣習・商法であったり、安全・安心であったり、そういう形のないものも建設しているのであります。

--
わたしが関心を抱いているのはむしろ、戦争がはるかに直接的に資本主義経済組織の育成に関与したことを証明することである。なぜ関与したかといえば、戦争の近代的軍隊をつくり出し、そして近代的軍隊が資本主義的経済の重要なもろもろの条件を充足させたからである。ここで観察の対象となるもろもろの条件とは、資金の創出、資本主義の精神、そしてとくに大市場である。
--
P.30から。
おお!ここで完全に種明かし。
予算と市場の形成は推測できたが、2つ目の資本主義の精神に唸った。
「志向の形成者」とな。
これがつまり冒頭に記した練兵場の経済学という訳。
ミリタリズム(militarism)、日本語で言うと「軍国主義」となって何だか誤解されそうなので片仮名で書くけど、ミリタリズムこそが資本主義を育てた母である訳だ。
資本主義がやたらにに戦闘的なのも頷けるのでは?
あ、軍隊が常に好戦的であるというのは誤ったイメージだということは承知の上です。


あと、指導(士官)と行動(下士官・兵卒)の分業化というのも再確認。


※この記事は戦争礼賛でも資本主義万能主義に基づくものでもないので誤解無きよう。念のため。つっても誤解する奴にはどうせ分からんのだが。