子供の頃、あるオモチャが大人気になりました。
「ミニ四駆」
頭を使い、金を使い、手間をかけ
「どう改造すれば、より早く、安定して走るか」
まるでエンジニアのように向き合ってました。
穴を空けて軽量化し、モーターと電池を選び、その両方とタイヤ、リングなどで安定した走りを保ち、歯車を選び、グリースの量を考え、色やステッカーを変え、好みのデザインにしたり…
とても豊かな遊びでした。
そしてみんな、試行錯誤してがんばってました。
1度、奇跡的に、恐ろしく速く、すごく安定してコーナーを疾走する、最高のマシンが出来ました。
コースで走っても負け知らず。
デザインも我ながら最高の出来。
もう2度と作れないであろう最愛のマシンでした。
ある日、友達の家のコースで何人かでレースをしていました。
初めて一緒にレースをした友達に
「なにそれスゲー早い!、なのにコーナーで落ちないじゃん!」
というような事を言われ、最高に上機嫌でした。
「早いだけ」、なら誰でも出来ますが、コーナーを最速で安定して、コースアウトしないで曲がるのがなにより難しかった……
それを実現していました。
その日までは。
そう、その日は雨。ドシャ降りの1日
友達の家の2階で4~5人でレースをしていました。
また、圧勝。
無敵でした。
そして運命のレース…
そのレースでもぶっちぎりです。
他のマシンを周回遅れにするほどに。
そして、運命のコーナーにさしかかり
また奇跡的なスピードで曲がる
「はず」でした。
あいつは…初めてコーナーから飛び出しました……
そして畳の上へ…
あまりの早さが仇となりました。
つかまえる暇も無く
ビーーーン
モーター音をたてて、2階のベランダへ疾走
追いつきません。
最速だから。
雨が、降っていたのに、何故かベランダの窓が開いていたんです。
10cmくらい…
言わば「すき間」です。
もしも、窓に当たっていれば、方向を変えたでしょう。部屋の隅でつかまえられたはずです。
ミニ四駆ピッタリ1台のすき間を、奇跡的に綺麗にすり抜け
ベランダを突き抜け
友達の家と、隣の家のすき間へ落ちて行きました…。
ドシャ降りの雨の中、外へ慌てて取りに行きました。
友達の家と、隣の家のすき間は30cmも無く…
いくら子供でも入れません。
別れです。
その後の俺のへこみ具合……わかりますか?
もう2度とあいつは作れません。
しばらくは友達の間でも
「あれはすごかった」
と、言われ続けました。
別れはあっけないもの。
子供ながらになにかを悟った1日でした……。