(〈ワイルドグレイ〉は感情のマッサージチェアの如く、痛気持ち良い刺激がグリグリ来るので、「ううっ、あっ」と顔をしかめながら観る。〈ザ・テイル・エイプリルフールズ〉より「回数は少ないけど文字数はこっちの方が多くて長い注意報」発令中。)
① 6月10日
初めてホンモノ見た!
いやいやいやいや(・_・;
何が私を集中させる?
「何か」に取り憑かれた人たちの
濃厚な感情の激しいやり取り、か?
ギョンスワイルドはステップも軽く陽気。〈狂炎ソナタ〉の「S」とは随分違う…けど、最近こんな姿を見たような気も…?〈ホープ〉で見たのをようやく思い出した。
37歳のワイルドを演じる…40歳?えええ??40歳なの⁈ミンソンさんと同い年だったのか!
するとボシと15歳差設定もなんとかいけるはず?でも若い!(後から思い出したが〈ランボー〉の時も同じことを言ってた気がする。)
はしゃいでる陽気なワイルド。身振りで人生を演劇のように生きてる感じが伝わる。青いコートをばかに大切そうに丁寧に扱ってた。(笑)
演出上、一瞬で時間が流れて場所も変わるのだけど、それが雰囲気とか言葉のトーンでよく分かる。
小説の中ではドリアンを殺さざるを得なかったけど、今度こそは!ってボシを守り抜く覚悟が見えた。自分の人生が壊れても。
ドリアンにとってのヘンリーのように、ボシにとって「この世で一番大きな悪」でいられたことに満足したから、ワイルドは最後に微笑んでいたのかな。
ボシもとても良かった。ジェファン君の演技が好きかも。初めて映像で見た(フィ)ボシの印象は邪悪な毒蛇。映像と違って全体が見えるからか、ジェファンボシが特にそうなのか、確かにワイルドを愛してたんだと思わせる。ボシの愛する能力が低いからそう見えにくいけど。
フィ君ほど狂気が噴出しないけど、あれはフィ君が特殊すぎるんだと思う。激辛と一緒で、狂気もクセになるらしく、次回のフィ君が楽しみではある。
ファントム・シンガーのキム・ジフン氏。うまい以前にまず声が魅力的。「肖像画」の3人のハーモニーは絶品。敢えて注文つけるなら、僕じゃダメなのか!とワイルドにすがる時、単に激しいだけじゃない、狂おしさ、やるせなさ、色気がもう少し欲しいかな。やはりここは感情を抑えてきたロスが正直になる所だから。
② 6月14日
☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
つまり言葉にならない喜び。
1番壁側なので早々に着席。Instrumentalでナンバーがずっと流れてる。何と言っても音楽が良い〜。
フィ君の歌う「霧」をタムソで偶然聞いて、ずっと欲しかったOST。ロスバージョンとは一味違った魅力なのである。今回買えて感涙!(観る予定無いのに初日に買いに来た。)
席は端っこながら5列目。キャンセルしてくれた人本当にありがとう
ワイルドに招待状を渡そうと目論んでいるボシや、激しい痴話げんかの後にワイルドにすがりつくボシが目の前。近くてよく見えた〜。良かった〜。
初演のビジュアルと変わったけど、全体の印象じゃない顔だけの良さが際立って、これはこれで良き!輝く照明の中に浮かび上がると、禍々しくも神々しい。萩尾望都が描く美しい男の雰囲気。
衣装は基本的に初演と同じだけど、前のようなもっさり感が無い。生地が違うような気もするが、痩せたのか?1~2月の〈オールド・ウィキッドソング〉の頃に比べると確実に痩せたと思う。
近いからそう思ったのか分からないが、2シーズン目のフィボシは完成度が高い!説得力のかたまり。
最初の頃は共感するのが難しいボシだったけど、彼は彼で仕方ない行動だったと今は思う。私が彼を理解したところで彼の不幸は変わらないけど。
しかしチョン・フィ君、週一のみの出演ペースで次のチケット買えるんだろうか。非常に心配。
今日はロスで泣いちゃった。ロス〜。やっぱりワイルドが残酷としか思えない。
ギョンスさんのはしゃぎっぷり程ではないけどミンソンワイルドもなかなか浮かれて登場。憎らしい。
③ 7月9日
リハしてるギョンスさんの声が聞こえる。
ふううう、今日も面白かった
見ながら、ロスよ〜あなたって人は〜(涙)、そう思うと同時に隣の方が深〜いため息。そんな事が何度もあった。心の同志と呼びたい。
中継の時よりロスの比重が高い気がするのは、やっぱりジフンさんの存在感のなせる技なんだろうか。歌だけじゃなく心情表現が素晴らしい。(最初、狂おしさ、やるせなさ、色気が足りない、とか言っていたけど。)
最後、最高刑が宣告されるとワイルドは顎をクイっとあげるいつものポーズをとる。(自分の道を守った矜持?)
初演ではうまく切り抜けるつもりでいたのに最高刑に処されてしまったワイルドだったが、再演では結末を予想しながらもそれを選択したというように変わったそうだ。
刑の宣告を受けたワイルドに、今日のロスは拍手した!今回が初めて!死刑と同じような判決を受けた人に拍手するというのは相当な事。人生という舞台を全うしようとするワイルドに拍手する「観客」…辛すぎる。
リヒョン・ボシは少し庶民ぽく感じたが、最初だけ。熱演に引き込まれた。正直、物語自体の吸引力が大きいので、誰が演じてるとかは意識しなくなっちゃう。
サロメ後半の踊りが滑稽に見えかねないが、妖しいタンゴの魅力が圧倒的!
④ 7月14日
2回目のフィボシ。これで最後になってしまうのか⁉️
フォトグラフィックメモリーてのが欲しい。静止画じゃだめだし、音声もつけなきゃいけないし、大容量が必要だ。そういうメモリーチップ的なものを脳に埋め込んでもらいたい…何言ってんだか。
フィボシだけのディテールな気がするのだが、大英博物館でワイルドを横目に招待状とパンフレットを見比べながら、どうしたらワイルドを釣れるか明らかに作戦を練っている。招待状を渡して優雅に離れた後、息を吐いて、実は緊張してました、やり遂げたぞ!みたいな様子も見せる。
お茶会で「知ってるのに名前を聞くファンに興味を持った」とワイルドが言うと、(成功だった!)とニヤリ。サロメの「誘惑は初めてじゃない」にも繋がる。そう言いながらチラッとワイルドに視線を投げる。
9日には気付かなかったが、後日リヒョン・ボシも似たような演技をしていた。
何気に好きなジファン・ロス。楽しみだった。抑制が効いているけどひたむきなロス。良いわ。淡白な味わいの俳優さんなイメージだったけど、重厚さも激しさも表現できていた。
⑤ 7月16日
メモなし。
⑥⑦ 8月15日
まち+そわ。
大英博物館で踊るワイルドと他人のフリをするロス。おもろい。
ギョンス・ワイルドは相変わらず軽快で楽しそう。踊るのもミュージカルだからじゃなくて、普段からふざけて踊ってるに違いないって感じで、とにかくロスと仲良し。からかったり、踊ったり。サロメの修正が必要と言われると、見逃してって目でシュンと見つめたり。
でもそれは演技と疑わせるような、何か二面性を感じるギョンス・ワイルドなのである。
フィボシはおぼろ豆腐でできていて、下手したらほろほろ崩れてしまいそう。そしてやはり美貌と声が妖しい。
おぼろ豆腐のフィボシは現実では恐怖と無力感で崩壊してしまいそうだから、芸術の世界に逃避するって事なんだろうか。一種の仮想世界?
「壊れていく自分を救うために芸術を貪る人」という人物紹介がようやく腑に落ちた。芸術を追求するとかは別にどうでもよさげ。
フィ君の強みは〈女神様〉のスノ、もしくは〈ベア〉のピーター的な守ってあげたい可愛い子要素と、高慢で自分勝手な最低なヤツ要素を1人の人間の中に表現できることじゃなかろうか。
だから感情の振れ幅の表現が凄くて、醜くゆがむことも厭わない。測定器があったら測定不能で壊れそう。的確に表現できる歌唱力と演技力があればこそ。思ったより歌唱力あるんだな。(今頃認定)
ジェファン・ボシは最初、声も太めで何となく健康な青年のニオイを感じてしまったのは私の先入観だろう。結論はかなり良かった。彼独自のボシ!「あなたの目」の後で抱き合う時、上から抱きつくように飛びついて、受け止めたワイルドが苦笑い。
兄の自殺後、自暴自棄になったボシを励ますワイルド。ジェファンボシは幼児がだっこをねだるかのように泣きながら両手をワイルドの方に差し出す。裸の心で頼ってるみたいに見えた。そりゃあワイルド、抱きしめるよね。
終盤に近付くと、普段は感情を表に出さないロスの感情的なシーンが続く。見ていると、やはりどうしても…泣かされる。彼がいたからワイルドは芸術と現実のバランスをとって、うまいこと生きてこられたんだろうに。
劇場を出る時後ろのお嬢さんが「もう私、ジファン病よー!」と切ない声。その気持ち、分かる。いつからかジワジワ好きになって、今や登場すると目がハート。アン・ジファンは魅力的!
ミンソンさんが、初演時は少年味が垣間見えたのに再演では格好良い大人の男になったと言っていた。私だけがそう思ったんじゃないらしい。
思い出した!サロメの時、ロスがジェファンボシに、いつも以上にすごい怒ってた。仕掛けるボシも良かったのかもしれないが、抑えてるけど体内でメラメラ燃える炎が見えた。
ジフンロスは歌も演技も良いけど、ジファンロスの方が感情のひだが細やかに表現されてる気がする。
⑧ 8月16日
リヒョン君がどんどん痩せていく。顎が尖ってた。衣装の着こなしもスッキリ。プラス姿勢や身のこなしがより貴族っぽくなっていたので、優雅な美しさが増量されてた。そして人格障害的な感情の乱高下も。
良いわ、このボシ。このボシもあのボシも、みんな良い
今期のワイルドは全員はしゃいでる。ロスと絡む時にアドリブが多いので、毎回笑いが起きる。新しい彫刻の場所を観客に聞くのは全員の定番だけど、ジョンミンさんはインスピレーションを送れと要求して客いじり。
〈ワイルドグレイ〉で客席が笑いに包まれるなんて、多分初演では無かったこと。
セジュン・ロスは歌も演技も良いのだけど、端正な貴族って感じがしないのがちょっと残念。ちょっとした立ち姿とかにもう少しイギリス紳士っぽい雰囲気があれば良いと思う。とにかく、とても良い人な感じはする。
⑨ 8月19日
最後のワイルドグレイ。観る前にランチしたソッコ君ファンのお嬢さんが「今日は音を外さないと良いけど」と言うので、マジですか!と慌てた。実際は危なげなくこなしていて、なかなか良かった!
一緒に観た友人は、若い感じが未熟なボシに合っているようだと言っていた。
「手紙」の最後。台の上からボシがワイルドを見下ろす時、透明な涙が光りながら落ちていって…芸術的だった。
これにて、今年の〈ワイルドグレイ〉は終了!
9月2日はフィボシのマッコンだったが、突然の腰痛ということで直前にキャスト変更があった。〈こんなに普通の〉と、とにかく過酷な〈グーテンバーグ〉との三本掛け持ちで疲労の極みだったかと想像する。
週1しか出ないってどういう事?!と不満だった私を𠮟りたい。
マッコン挨拶で、こんな手紙のメッセージが伝えられた。
親愛なる観客の皆さんへ
こんにちは。ボシ役のチョン・フィです。
初演に続いて、今回の「ワイルドグレイ」に参加することになり、とても楽しく、嬉しい気持ちで作業しました。
愛するのが難しく足りないところが多くても、それと同時に魅力的なボシという人物を演じながら、俳優としては非常に幸福でした。
最後の挨拶をこうして手紙で伝えることになり、とても残念ですが、これが最後ではないと考えて、今度また会えるその日まで、「ワイルドグレイ」を恋しがっていただけるとありがたいです。
では、残りの公演も楽しく観覧されることを願いながら、またお会いします。
今まで「ワイルドグレイ」を愛してくださってありがとうございます。
これは3演でもフィ・ボシに会えるということ?それを信じて恋しく待つことにしよう。次は週一よりは多い出演回数である事を願いつつ。