再演バージョンで安定感いっぱいの〈笑う男〉
🎫 8/9
🎫 8/12
前週に公演休止となりヒヤッとしたけど、9日からは無事再開。
今回チケットオープン後に渡韓を決めたので、落ち穂拾いのようなチケットは全部2階席。2階にでも潜り込めれば上等。
舞台の構成や作品の展開に無駄がなく、3時間があっという間だった。
もはや記憶が朧げなヒョシン・グィンプレン。セリフにも出てしまうビブラートが減っていた印象。ディクションが良くなったかな?(ヒョ神様に対していきなりの上から発言!)
全体的にはコレだよ、コレ!と思いながら観ていた。歌い上げるところは定番の音割れ。囁くようなセリフ部分と爆発的なフォルテシモの差がありすぎて、音響的な調整が追いつかないのだそう。音響チーム泣かせである。
以前は人が言うほどジュンモ・パパに特別な感じはしなかったけど、今回は素晴らしさが分かった。歌唱力は説明がいらないが、無駄のない演技の正確さが好き。豪快なウルススを繊細な演技で描き出していた。
ヨンギさんはウルススが演じた中で一番似合ってる役柄と思っているのだけど…言っちゃいます。ヨンギさんは、グィンプレンを招き入れる最初の馬車のシーンとか、無駄にやかましい。セリフも含めてずーっと大音量。若干勘弁してという気分。
再演までのヨンスク・ジョシアナは近くから見ると貫禄が見えてしまう印象だったが、今回2階から見るとコケティッシュでイケてる女性だった。発声自体も以前より更に研究されてたような?可愛かった。
ソヒャン・ジョシアナは言うことなし。綺麗でキャピキャピで歌は凄い。
2人とも聴かせどころは見事としか言えない。
女優の聴かせどころと言ったらアン王女のキム・ヨンジュも負けてはいない。クレイジーなアン女王をコミカルに演じ、ロングトーンも見事。ビーナスの時は包容力のある暖かさが気持ち良い。
今回ちょっと残念だったのはスビン・デアに一度も当たらなかったこと。
9日に正面入口がまだ開いてないとは知らずに裏から入って、誰もいないキャスボを余裕で撮影したらスビンデアだったので、変更されたのかな?ラッキー!と思って観ていた。
だが実は古いキャスボで、歌っていたのは新入のユ・ソリだった。スビンちゃんにとても似ている。スビンちゃんが少し鼻炎を患った感じ。コロナだったのかなと思ったりした。
だんだんいつもの調子になってきたかな?でも今日は透明感が少〜しだけ少ないな、なんて思っていた。てことは、そう悪くない、いや、新人にしたら立派と言うべきだろう。
ウンテ・グィンプレンは3人の中でいちばんお茶目で天真爛漫。貴族になんてことを言う!と怒られても、全然平気でおどけている。
「木の上の天使」や「夢だろうか」は囁くような歌い方で、グィンプレンの若さを「軽さ」で表現しようとしたのかな?
ジョシアナから逃れる時に、いきなり「実は僕は有名な人なので忙しいんです」なんて言い出す。
ジョシアナのあっけに取られた「はぁ?」というリアクションが面白い。その分余計に怒りが湧いてきて「私の中の怪物」にうまくつながっていく。
去り際にジョシアナに投げキッスなんてするのはウンテ・グィンプレンだけ。
そういうグィンプレンなので、宮殿に来ると有頂天でペドロの話なんて聞いちゃいない。
「グィンプレンは死んだのです。お分かりですか?」
グィンプレン、あちこちキョロキョロ見回して、はしゃいでいる。ペドロの言葉が聞こえていない。
ムカっとしたペドロ、更に大声で
「お分かりですか!」
意味わかってないけど、何か話しかけられてるから適当に「あ、はい」と答えるグィンプレン。
他の2人は言葉の意味を理解して「はい」と答えるのに対して、理解していないウィンプレンの方が自然かもしれない。
さて、最後にガンヒョン・グィンプレン。
ヒョシン/ウンテの2人は、そりゃあもう歌唱力の神と言われるだけのことはある。
でもあえて言う。ガンヒョン君が最高!眠気が吹っ飛んだ。
ウンテさんは努力で獲得した歌唱力という気がする。そして繊細な演技力も兼ね備えてはいる。
ヒョシンさんは天賦の才能+努力の歌唱力だが、演技力は同等ではない。
ガンヒョン君は、天賦の才能+努力+演技力センス=最高
最初の歌い出しで初演再演の時と違う!と思った。成長してる。聴いていると溶けてしまいそうな深い響きの滑らかな声。
ミュージカルのナンバーは歌ではあるが本質はセリフだ。神2人の歌唱力は素晴らしいが、感情を伝える表現、セリフとしての歌唱はガンヒョン君がダントツと感じた。
他の作品で吸収したことがたくさん生きているのだろう。
キャラクターに一番はまりやすい俳優はガンヒョン君という有利さはあると思うが、とにかく、私にとってはガンヒョン君のグィンプレンが一番凄かった。
ガンヒョン回で心に残ったシーン。
最後息絶えたデアを抱きしめながら
「のえげ(君のところに)」と歌った後、
ふっと顔を上げて、パパを見ながら
「かるっけ(行くよ)」と歌う
決心を告げながら、許しを乞うように。
しばらく見つめあってからパパが近づき
グィンプレンの頬に手を触れ、そっと離れる。
去っていく2人に背を向けて号泣するウルスス。
唇から絶叫が迸っているのに、その声は聞こえない。狂おしいほどの悲しみを胸の中にしまったまま声なく泣き叫ぶ姿。
とてもとても胸が痛む。
死のうとする息子を黙って行かせるのはおかしいと、初演の時は納得できなかった。
だが、デイビッドの狼藉の後、永遠の愛を誓い合う2人をそっと見守るウルススの姿とか、
「天国でグィンプレンを愛して、愛して、グィンプレンとずっと離れずに幸せに暮らす」という最愛のデアの言葉とか、
天国は現実に存在する場所であり、この地上は地獄よりも酷い場所だと考えるなら、デアを一人で旅立たせるより、2人揃って送り出すのが正解だと考えるのは無理もないと感じた。
「大劇場作品は所詮ショー」と言ったけれど、〈笑う男〉は極上のショーだと思う。
12日と17日の光化門広場