働いていた店のトラブルで一銭も貰えず追い出されたエマ。腹いせに石を投げて店のガラスを割ってしまい、追われることになる。
逃げ回っているうちに求人募集らしき紙飛行機を見つけたので、その邸宅に飛び込む。
部屋に入っていくとまだ吸血鬼に成りきれない屋敷の主人アーサーが飛行訓練をしているところに出くわす。
暗闇の中お互いを恐れる2人だったが、執事のジョンが登場し、働きたいというエマを追い出そうとする。しかし主人のアーサーの命令(お願い)で、ひと月後のアーサーが成人する誕生日まで雇うことになる。
エマは空腹すぎて吸血鬼の幻を見たのだと思い込む。
ジョンは執事だが、アーサーの兄か父のようにアーサーに接している。
人間の研究が必要だと訴えるアーサーに対し、その時が来れば分かるようになるし、自分がずっと一緒にいるから心配するなと励ます。愛さえ遠ざけておけば、成人したアーサーは正しい選択をするはずと信じるジョン。
採用されたエマだが、広い屋敷の掃除でクタクタ。しかもどこから見ていたのか、高価な椅子に座って休んでいたことや、触るなと言われた棚を覗いたことをジョンに咎められてストレスも最高潮。しかし自分を追い出したがっているジョンの作戦に負けじと対抗する。
張り合う2人を見て、今までの雰囲気と違うのを喜ぶアーサー。
エマがクッキーを焼く。天国の味だと喜ぶアーサー。私たちは天国と無縁だと言うジョン。自分達は神に捨てられた存在と言うアーサーを、自分達が神を捨てたのだと諭す。アーサーの変化を恐れるジョン。
近づいていくアーサーとエマ。アーサーはエマの描くロンドンの街や花火の絵に惹かれる。実際に行けばいいと言うエマに、陽に当たると死ぬ病気だと説明するアーサー。オルゴールの曲を一緒に聴き、歌手エリザベスの話になる。ある日交通事故が起こるが、乗っていたはずのエリザベスは死体も見つからず行方も分からないので大ニュースになったのを教えるエマ。
2人はロンドンの事とアルファベットを互いに教え合うことにする。
未来など考える余裕が無かった。今日が幸せならそれでいいと言うエマ。それを聞き、ロンドンに行こうとエマを誘うアーサー。今晩はジョンが出かけているから朝までに戻れば良い。
2人のいない屋敷に戻ってきたジョン。アーサーの母であり、かつて愛した女性エリザベスに想いを馳せる。
街に出た2人は歌手エリザベスの追悼公演のポスターを発見する。命日と自分の誕生日が同じなのに気づくアーサー。
エマはその日一緒に見に来ようと誘うが、昼間は外出できないアーサーは複雑な感情に囚われる。
エマはある聖堂にアーサーを連れて行く。入口に「誰にでも門は開かれている」と書かれている。だから自分と妹がここに捨てられていたのかも、とエマ。
ここで拾われたが、大きくなって工場に売られたから、人は誰も信じられないと語る。無理やりアーサーを誘って中に入る。中で祈れば願いが叶うらしい。
一大決心をして恐る恐る中に入るアーサー。栄養失調で死んだ妹が天国で笑って暮らしているようにと祈るエマ。自分にも祈れるのか、祈って良いのかと疑いながらも、自分の罪を許してほしいと全身全霊で祈るアーサー。
複雑な思いに耐えられず外に飛び出すと花火が上がる。音に怯えるアーサーを落ち着かせるエマ。アーサーは花火を見ながら涙を流す。
「今まで会った人の中で一番純粋で良い人だ」と言うエマにキスするアーサー。ヴァンパイアである自分。エマに対する激情に恐れを抱いて屋敷に駆け戻る。
ジョンが外出を咎める。混乱して、悪いのは自分だがエマには出て行って欲しいというアーサー。表面上は元の日々に戻る3人。
ヴァンパイアになるはずなのに、全く兆しが無いのを怪しく思うアーサー。まだその時が来ないとしか答えないジョン。
ジョンはアーサーの誕生日になったら秘密を打ち明けるつもりでいる。美しい歌声を持つ愛するエリザベスを守れなかった後悔。二度と同じ過ちは繰り返さない決意。気持ちを綴った手紙を密かにオルゴールに隠す。
クッキーの袋を残して行ったエマ。十字架のペンダントも入っているのを発見したアーサーは、それを手にして見ていても何も感じない事に衝撃を受ける。
ヴァンパイアである事に対する疑念が膨らみ続けるアーサーは、死をかけて朝日を浴びる。
エリザベスとの最後の瞬間を思い出すジョン。瀕死のエリザベスに自分の血を飲むように促すが、永遠は美しくないと言って断るエリザベス。お腹の子を託して息絶える。
嘘を確信したアーサーはジョンに詰め寄る。ジョンは答える。エリザベスのように失いたくはない。大人になったら選択させるため誕生日を待っていた。大切なアーサー、永遠に共に生きよう。
別れの時にアーサーから貰った荷物の中にオルゴールを見つけたエマ。ジョンの手紙を読み驚く。屋敷に駆けつける。永遠に生きる、同じ繰り返しの日々、それは死だと割って入る。アーサーを愛しているのは良く分かるが、暗闇に閉じ込められた人生は幸福なのかと問いかける。
エマを選択するアーサー。アーサーの選択を受け入れ、光の中に出て行く2人を見送るジョン。アーサーの椅子に腰掛けると開いたカーテンから陽が差し込んでくる。そしてジョンは…。
ハイライト(1)
ハイライト(2)
初演の棺桶のようなベッドは無い。立って寝るなんてナンセンスだったと思う。
まだ時が来ていないからアーサーはヴァンパイアらしくない設定。つまり立ち居振る舞いも人間的。ただし飛行訓練はしている。
笑いを誘うシーンはあるものの漫画的キャラクターではない。自由と外の世界に対する憧れを消すことができない。純粋な青年でエマに対する愛と自分のアイデンティティに真摯に悩む。
ジョンは100%執事のように堅苦しくない。温かみのある存在だ。
エマは盗みで追われている訳ではなく、不幸な生い立ちでも必死に生きている娘。
3人とも少しづつまともに、いい人になっている印象。
コミカルな前半から驚きの終盤が衝撃的だった初演に比べ(今回再演で合ってる?)、納得のいくストーリー展開だった。
伏線が張られているので、もしかして?とは思っていたが、そう来たか❗️な終わり方。衝撃的なのは同じだが、フィ君が死ななくて本当に良かった。