年老いたマリーが実験室にいる。娘のイレーヌが熱を測りにくる。死期が近いマリー。
マリーの死後に発表すべき最後の言葉を渡されたエレーヌは、こんな最後の言葉を聞かされる子供が他にいるだろうかと反発する。
なぜ自らを罰するかのように生きてきたのか、ママのことは理解できない。ママを押さえつけているのは何なのか、と問う。
ママのことを知りたい。距離のある知らない人としてママを見送りたくない。
その言葉に応えて語り始めるマリー。童話の1冊も読んでやらなかったことが悔やまれる。自分は失敗した。すべき事を終えられなかった。約束したのに。
その友人に会ったのが、人生で一番大きな転換点だった。フランスへ向かう汽車…。
♪♪♪
世の中はわからないことで溢れてる
数千年も引き継がれてきた規則に従って
未知の世界 秘密と法則
私を急き立てる 早く自分たちを見つけろと
世界を構成している すべての物の地図
周期表の空欄を 私が満たしたい
呼ばれたことのない/名前のない物の
いるべき場所を見つけて
きちんとした名前を呼び
すべて知ることができるだろうか
道は果てしなく遠い
私を遮る壁に全力でぶつかり
その度に高くなるその壁
私に見つけられるだろうか
名前を探し出そう
呼ばれたことのない名前
私の頭の中を埋め尽くした地図を
完成させよう
♪♪♪
マリー:すみませんが、この席…
男1:なんだ、どこから来たんだ。ポーランド人か?このポレックめ!(ポーランド人を卑下する言葉)
(男2がマリーのカバンを持ち去ろうとする。)
アンヌ:隣に警察がいたわ。私が大声で叫びましょうか?
男2:何言ってるんだ!
アンヌ:ここです! ここ!
男1:お前、覚えてろよ。
アンヌ:これ。中身は大丈夫?
マリー:入学もできずに家に戻るところでした。本当にありがとうございます。マリー・スクウォドフスカと言います。
アンヌ:アンヌ・コバルスキです。ところで、入学って?学校?
マリー:ええ、ソルボンヌ大学です。
アンヌ:ソルボンヌ大学ですって?そこは天才だけが行く学校じゃないんですか?うわー、ポーランドの女性がフランスの大学に行けるだなんて。
あ、誤解しないで下さいね。とても胸がいっぱいで、ドキドキして、痛快…痛快だからそういったんです。
だけど、あなた、本当に天才なんですか?
マリー:私が?まさか。
♪♪♪
変な女、強情な女、のさばるポレック
家庭教師を転々としながらよく言われたこと
♪♪♪
アンヌ:よく我慢しましたね。もし私がそんなこと言われたら、手が先に動いちゃう。
マリー:私も気持ちとしては一発ぶっ飛ばしてみたいけど。でも、それよりもうちょっと確実な方法があるのよ。
アンヌ:そんな方法があるの?
♪♪♪
私も自分の名前を見つけたい
周期表に自分の名前を残すことを
想像したの
♪♪♪
アンヌ:周期表って何ですか?
マリー:ああ、それは…つまり、
これがその周期表なの、地図みたいなもの。
左から右に向かっては元素の重さ別に並んでいて、縦の列は同じ性質を持つ元素を集めてあるのよ。
アンヌ:難しいですね
マリー:だから…世界を作っている全ての物のうち、一番基本的な単位を元素と言うのよ。
誰かが新しい元素を発見したら、時代や国を超越してその人が決めた通りにしか呼べないの。それがロシア治下のポーランド人であれ、異邦人であれ、女性であれ、誰であれ…。
♪♪♪
誰も知らない 暗闇の空欄
明るく輝く名前を見つけてあげたい
誰でも道を辿れるように
アンヌ:
夢のような話 私を連れて行く
新しい場所に
夢さえも見られなかった
過ぎ去った日々から自由になる
マリー:
すべて知ることができるだろうか
道は果てしなく遠い
私を遮る壁に全力でぶつかり
その度に高くなるその壁 私に
見つけられるだろうか
名前を探し出そう
呼ばれたことのない名前
私の頭の中を埋め尽くした地図を
完成させる
♪♪♪
アンヌ:素敵だわ!私もかっこよく生きます。
それで、ポーランドで私が成功する道は農場主の第3夫人になることだって言う人たちに、目に物見せてやるわ。
だから私、ラルーシュ・ガラス工場に就職したんです。また戻ったらまずトラクターを買います。小さい頃から、セミポータブルエンジンの音を聞くだけでも、ここがバクバク弾んだんですよ。
(ワルシャワ発パリ行き列車まもなく到着します)
その紙、地図、貰えませんか?
マリー:これはただ、私が書き殴った落書きみたいな物だけど。どうぞ。
アンヌ:この空いた所に「マリー」って書いてください。
マリー:私の名前を?「マリー・スクウォドフスカ」それじゃあ、この横にアンヌの名前も書くわね。「アンヌ・コバルスキ」。
(停車する汽車)
アンヌ:あの、ちょっと待って。これは故郷の土なんです。道しるべの土。どこで何をしても、帰る場所を教えてくれるそうです。
マリー:そんな大切な物を貰ってもいいの?
アンヌ:私もこれを貰ったじゃないですか。はい。
マリー:本当にありがとう。
アンヌ:マリー、それ、必ずやってね。
この地図に必ず、星みたいに名前を残して。
あなたは、ポーランドの星になるわ!
♪♪♪
マリー:今向かう その場所がどこでも
止まらずに 走って行くわ
マリー/アンヌ:
一度も 誰も 呼んであげた事のない
名前の無いものたち
私たち
冷たい暗闇の空欄
私の名前を探し出すわ
新しい人生の始まり
今こそ始まり
ずっと待っていた瞬間
私をときめかせる
夢見てきた私を
輝く自分を
見つけるわ
♪♪♪
アンヌ:マリー!きっとやり遂げてね!
さよなら!
マリー:さよなら!