見えない何かを追求する人間の物語〈マリー・キュリー〉 | 韓国ミュージカルを 訳しまくるブログ

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〈マリー・キュリー〉劇作家チョン・セウンの手記


見えない何かを

追求するということ 


ミュージカル〈マリー・キュリー〉は人間の話です。一生をかけて見えない何かを追い求めたマリー・キュリー。人間の高貴な価値は、まさにそのような没頭と情熱にあるという話をしたかったのです。  

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私は優秀な学生ではありませんでした。周期律表はただ試験のための外界語であり、私を苦しめたそれを再び見る事はありませんでした。そうこうするうちマリー・キュリーという人が目に入りました。  

100年前、30代後半の女性です。乱れた髪は無心に結い上げられていて、ドレスは誰が見ても粗悪で退屈そうな黒でしたが、眼つきだけは明るく光っていました。 

彼女は今何を見ているんでしょうか。 

この問いがこの劇の始まりで、4年間走ってきたこの劇のルーツだと言えるでしょう。

この作品はフィクションです。 歴史的人物や事実に基づいているものの、数多くの設定や架空の人物、出来事が中心となります。


劇中で、マリーは周期律表を「世の中を成しているすべてのものの地図」だと言います。当時空欄だった元素について「呼ばれたことのない/名前のない物の場所を探してきちんとした名前を呼び、私の頭の中を埋め尽くした地図を完成します」と歌います。

「変な女、強情な女、がさついたポレック(ポーランド人を卑下する言葉)」と呼ばれた彼女はソルボンヌ入学後、


「誰もいない静かな実験室

精密機器を設置した実験台

ここがいい

実験服を羽織る

輝く目盛りを凝視すれば

宇宙の真ん中に立っているかのよう

生まれて初めて脳がすっきりする気分だ」


こう言いながら、自分だけの堅固な世界を築いていきます。

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マリの夫であり、同僚だったピエールは、初めての出会いでこのように聞きます。  


 あなたはなぜ科学をするのですか?


これにマリーがどんな答えを出せるだろうかと、作家として長く悩みました。 


多くを学び一風変わった人だから、なにか「マリー」らしいすてきなことを言っただろうと苦心しましたが、自分の器が小さいせいか難しかったですね。そのうち、私がマリーをあまりにも遠く偉大な人としか見ていないのではないか、と思った瞬間、見つけました。


「気になるからです

気になることを我慢できません

ところで、それを実験と呼ぶんですね

だからするんです、科学を」


多くの方々が、この場面のマリーを特に愛して支持しています。 

私たちが見たかったのは、生まれつきの天才科学者ではなく、限りなく弱く、もろい人間的なマリーだったということを、もう一度確認することができました。


マリーは自分を排斥し、そっぽを向く世間を気にせず、自分だけの空間である実験室で、夫であり研究仲間だったピエールと幸せな没頭の時間を過ごしましたが、世界への影響力が大きくなるにつれて、完全に自由ではいられませんでした。

劇ではルーベンという資本を象徴する人物がマリーに対抗します。マリーに研究材料を支援したり、圧迫したりする役割です。いくら純粋な学問でも、奥行きと広さを加えるためには資本との融合が避けられないのが事実です。そういう点でルーベンはお金だけを追う企業家というよりは、もっと良い未来を見たかった欲望家と言った方が近いです。

研究者が正しくないと判断する状況でも、資本がプロジェクトの根幹を揺るがすなら、これを無視するわけにはいかないでしょう。 


ミュージカル「マリーキュリー」は、そのような歴史的には記録されたり現れなかった行間に、虚構的な想像力を加味してマリーの葛藤や苦悩、成長を描いた作品です。



ミュージカル〈マリー·キュリー〉の劇場ロビーには、1911年マリーがアインシュタイン、ラザフォード、プエンカレらと一緒に参加したソルベイ学会の写真が掛かっています。唯一の女性参加者だったマリーの堂々とした姿に、またもや観客が涙を流す姿を多く目にしました。

公演前には「本当に女性として、異邦人として、簡単ではなかっただろうな」程度の視線だったとすれば、公演後に再び見る写真の中の彼女の目つきに、それ以上の何が込められているのかを見ることができるからです。

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私は最近見えないものを追い求める人だけが持っている、彼ら特有の輝く目をマリーではない他の場所でも見ています。舞台を準備するスタッフたちから、マリーを何とか舞台の上に立て直そうとする俳優たちから、マスクをしっかりつけて距離を置くことを実践し、劇場を訪れる観客たちからです。


2020年、大韓民国のどこかにいる、多くのマリー·キュリーたちが、各自の場所で見えない光に向かって没頭していることを知っています。少しでもその方たちの純粋な情熱と尊い魂をのぞき見ることができたという事実に胸がいっぱいで嬉しいです。


ミュージカル〈マリー·キュリー〉を通じて、見えない何かを追う多くの人々が人生に励ましを受け、力を出すことができることを期待しています。



(以上、WISETのブログ記事より)

「韓国女性科学技術支援センター(WISET)は、科学技術情報通信部所管の公共機関で、理工系の女性の成長と発展をサポートしています。」