笑う男 2020 変更点 その2 | 韓国ミュージカルを 訳しまくるブログ

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(注意: 目標はネタバレ100%)
近頃はメモ付き写真アルバムとしても使用中。

再演の笑う男を観て参りました。
(1/31ソクフンさんで2度目の観覧。他のキャストは同じ。)

大々的な変更ではないと聞いていた通り、あれ?この辺違う?何が違う?ちょこっとセリフが増えた?演技プラン進化した?くらいだったような気がします。

でも何かが変わっているのは確かなので、手元を見ないで書いた謎のメモを頼りに初演と再演を比較してみたいと思います。

まず、1幕で変わったこと。……そんなにないですね。個人的な感覚のレベルで変わったことが一つ。

「幸福の権利」から「涙は川の水に流して」を挟んで「君は僕のすべて」まで。グィンプレンの言ってることに一貫性がなくて、初演は納得がいかないシークエンスでした。

さっき「これからは自分のための人生を生きてやる!」と言ったその口で、「君は僕の人生のすべて」とか言ってるし。どっちなん?という具合。

再演は不自然さをあまり感じませんでした。なぜか?

まず、「幸福の権利」ではウルススがグィンプレンを責めるところから始まります。

ウルススも動揺してますから、何があったか説明もせずグィンプレンを怒鳴りつけます。

「貴族に興味を示されたからって何を浮かれているんだ。自分だけノコノコ出かけていって1人で幸せになればいいってのか?」ある意味、八つ当たり?

私が見たカンプレンは、微笑み型ベンチ(?)から転がり落ちて逃げたり、奪われそうな唇を必死に守ったり、本当に大変だったんです。自分1人で幸せになろうなんてこれっぽっちも思っていなかったと思います。

グィンプレンは、ものすごい誘惑に抵抗してちゃんと帰ってきたのにそんな言われ方をしたので、売り言葉に買い言葉、「幸せになっちゃいけないのか!僕にだって幸せになる権利はある!」と反抗するのです。

そしてウルススパパは事あるごとに「世界は残酷な所で、庶民は命があるだけで儲けもの、人生に幸福を夢見るなんて間違っている」と言い続けてきました。

グィンプレンがムキになっているのは、不幸な人生を世の中のせいにして希望を持とうとしないパパ、その人生観に対する反抗ゆえ。

初演では「これからは自分のための人生を生きてやる!」という歌詞に注目してしまいましたが、ポイントはそこじゃなくて、ウルススのような考え方、生き方に反抗する激しさなのだと感じられたので、それほど矛盾を感じなかったんじゃないかと思います。

川での水遊びが終わると、グィンプレンが駆け込んできて「君は僕の人生のすべて」がスタート。

先程言い争っていた時はデアに何が起きたか知らないグィンプレンでした。でも今はすべてを聞きました。慌てふためいて駆け込んできます。今や先程のウルススと同じくらい動揺しています。

慌てふためく姿が初演ではここまでじゃなかった気がするんですが、とにかく今回は凄く感じ取れました。

もはやウルススの人生観だの、未来の希望だのはどこかにすっ飛んでしまい、デアに対する申し訳なさ、不甲斐ない自分に対する後悔、いかにデアが大切であるか、それがひしひしと感じ取れます。

(ソクフン・グィンプレンは「デア、ごめんよ。バカみたいな事ばっかり考えてた。」と口走りながら駆け込んできたので、ますます違和感が和らぎました。) (その後さらにキュヒョンさんや2回目カンヒョン君も言ってたし、なんならシッツプローブでも言ってたんで、全員もれなく言ってたようです。)

そして、初演と同じナンバーに自分を卑下するグィンプレンのセリフが追加されて、いつもは守られる側のデアが逆に彼を励まし、お部屋に誘っちゃう…という流れでした。

なんだか長くなってしまいましたが、意味が通じてるかな?カンプレンから私が感じたこと、でした。

他に違うこと…。

雷が落ちて船が裂けるシーン。迫力アップ。

ガーデンパーティーがかなり短縮されて、姉妹の罵り合いと「女王の命令」がカットされてた。

デルモア卿に襲われる前にグィンプレンを探して不安がるデアのナンバーも変わっていたかも。
(再演: 「どこに行ったの?とても不安 涙が出る
あなたが遠くなっていくみたい
私の目になってくれる声が聞こえない」
グィンプレンが今いない事と、いつか自分から離れていきそうな不安が強調されました。)

「涙は川の水に流して」の詩が若干変更されています。
 (初演では「グィンプレンは貴族の後を追いかけてった。永遠なんてどこにもない」と、悲観的なアドバイス。

反して再演では「デア: 男はみんな怖いのかも」「ビーナス: それは違う。自分の周りを見てごらん」「デア: 私の横にはグィンプレンが」「ビーナス: きっとグィンプレンが守ってくれる」と励ます内容に)


2幕からは少しシーンの入れ替えがありました。
初演と再演の順番を書いてみます。

【初演】
⑴ (グィンプレンの宮殿) 閣下の所有物

⑵ (涙の城の前) 死体を目撃するウルススたち

 (涙の城の前) グィンプレンが死んだと誤解して絶望

⑷  (テドキャスター旅館)  旅館に戻るウルスス、ペドロが服と金貨を持ってくる、デア登場

⑸ グィンプレンが出ていったと偽装

⑹ 崩れ落ちる心 

⑺ (グィンプレンの宮殿) 僕は誰 両親の子守唄

⑻ 幼い日の回想

⑼ 世界は変えられる

⑽ (孔雀の部屋) 何も言わないで 女王が結婚を命じる
何もかも持っているグィンプレンにジョシアナ興味を失う

(11) デルモア卿との決闘 

(12) 誘拐の犯人

(13) 上院


【再演】

⑴ (グィンプレンの宮殿) 閣下の所有物


⑵ (涙の城の前) 死体を目撃するウルススたち


⑷ (涙の城の前) ペドロが服と金貨を持ってくる


⑶ グィンプレンが死んだと誤解して絶望


(?) (グィンプレンの宮殿) グィンプレンが金貨を渡したか、家族が元気かペドロに確認する。ペドロは安心させ、自分の財産を楽しめとけしかける


⑽ (孔雀の部屋) 何も言わないで 女王が結婚を命じる

[女王がジョシアナに言うセリフ: おめでとう。お前も笑いなさい。あいつのように。]

[愕然とするジョシアナ。あんたと結婚するですって?また言いなりにならなきゃいけないなんてうんざり!運命の意のままにならないための存在だったのに、運命そのものの存在になってしまった。夢が呪いに変わった。興味を失う]


⑷  (テドキャスター旅館) 旅館に戻るウルスス、デアは寝ている、もっと深い眠りにつく練習をしているんだろうとウルスス、デアが知れば死んでしまうかもしれない、グィンプレンが死んだことを皆が知る、デア登場


⑸ グィンプレンが出ていったと偽装

⑹ 崩れ落ちる心 

⑺ (グィンプレンの宮殿) 僕は誰 両親の子守唄

⑻ 幼い日の回想

⑼ 世界は変えられる

(11) デルモア卿との決闘 

(12) 誘拐の犯人

(13) 上院

シーンが入れ替わるだけでなく、ちょっとしたセリフで説得力が増すものだと思いましたが、もちろん一つ一つは覚えていないのである!

涙の城の前でペドロが登場することにより、ウルスス一行はグィンプレンの死を確信するしかなく、ペドロの残忍さも強調され、とても効果的な変更だと思いました。

この後宮殿のシーンとなり、自分の剣を物珍しげにいじってみたり、キョロキョロ見物している呑気なグィンプレンが登場。戻ってきたペドロに、金貨を渡してきたか、劇団のみんなに変わりはないか尋ねるので、彼らを忘れたわけではないのがわかります。両者の距離を遠ざけようとしているペドロの悪意がここでも明らかに。

その延長で孔雀の部屋に迷い込むグィンプレン。なぜ突然ジョシアナがそこにいるのか、初演から?な場面。結局、昨夜突然女王に呼ばれたからここに泊まっていた、というジョシアナのセリフしか説明がないのは相変わらず。

けれどもこのシーンを、グィンプレンがまだ夢見ごごちなうちにやってしまう流れは良いと思いました。

迫るジョシアナから逃れるため、グィンプレンから助けを求められたバイオリニストが、何もしてやれることは無いとばかりに悲しそうに頭をふる演出は、どのグィンプレンでも同じようです。

そして次の場面は旅館。孔雀の部屋の変更によって2幕の流れが①呑気なグィンプレン。②絶望に満たされている旅館。③自分のアイデンティティを確認し、すべきことに気づくグィンプレン。④上院シーン。⑤旅館に戻る。と整理されたかな。

デルモア卿もそれなりに気の毒な立場だったと思わせて欲しい決闘シーン。今のところ、そこまで感じられなかった。観ているこちらの問題かもしれないが。一方、ジョシアナに良いところを見せようと旅館に連れて行ったシーンでは、皮肉にも彼女の目はグィンプレンに釘付けで、それを見る複雑な心のうちがよくわかる演出に変わっていました。

「その目を開いて」を聞くジョシアナが頬の涙を拭っていた気がしますが、前からやっていた?グィンプレン一点集中で見ているので気づかなかった。女王が感服したフリで話し出す時も、あなたがそんな殊勝なことを?!と二度見する芝居。
(「その目を開いて」を聞きながら、おそらく一生の間接したことのない考えに衝撃を受けて心を開いていく様子、涙を流している自分自身に驚く様子。さらに心を揺さぶられている様子。ずっと見ていると興味深い。目が届かなかったけれど、反対側のデルモア卿も何かやっているかもしれません。)

あちこちで色々な芝居をされると、どこに視線を持っていけば良いやら。


観たキャスト
グィンプレン: パク・カンヒョン
ウルスス: ミン・ヨンギ
ジョシアナ: キム・ソヒャン
デア: カン・ヘイン
デリモア卿: カン・テウル
アン王女: キム・ギョンソン

カンヒョン君。声は聞いてるだけで気持ちいいし、演技も細かくなって、ますます堂々としたスターの風格。歓声を聞くと男性にも人気ありそうだし、アイドルばりの黄色い歓声も少なくないですね。

ソクフンさん。声質も雰囲気も独特なグィンプレン。フレッシュなグィンプレンのおかげで見慣れたストーリーがとてもフレッシュに見えました。歌もお上手だし、表現力もある。1列目という近すぎるくらいの距離で充分堪能しました。

惜しいのは、先にガンヒョン君を聴いてしまったこと。あの、伸びて突き抜ける声。ひたすらうっとり気持ちいい、あの声。どうしてもあの快感は得られなかったので残念さが残ってしまいます。階段式観覧↗︎↗︎↗︎は結構大事だと思った次第。

ヨンギさん。今まで観たヨンギさんの中で一番似合っていた。独特のクセみたいなのが気になっていたけど、それが逆にウルススそのもの!しゃがれ声にしていてクマさん感を出していたけど、いつもの声でも私は全然ウルススだと思いました。(そして言葉が驚くほど聞きやすい!)

ソヒャンさん。綺麗で歌の上手いソヒャンさん。過不足なし。ジョシアナって何歳設定なんだろう?孔雀の部屋でキャッキャとはしゃぐ姿がマリーアントワネットを彷彿とさせて、どうしてもソヒャンさん本人の"善"な部分が見えてしまう。若干の毒?禍々しさ?が欲しいような気もしました。

ヘインさん。小さくて華奢で、守ってもらわなければ死んでしまいそうなデア。高音が出にくいのか、今期の演出的に下げているのか、初演と違う歌い方が何ヶ所かありました。しかしヘインさんの華奢な感じは1日で死んでしまうデアに似合っていた。

ギョンソンさん。憎らしさの中に可愛らしさが隠せない新アン王女。

全体として流れが良くなったのと、セリフの変更で各人の行動の理由や感情が分かりやすくなったのではないでしょうか。私としては初演より楽しめました。そこまで大きな変更ではないから次にどうなるか分かっているのに、目を離せない、呼吸を忘れる、そんな緊迫感と迫力のある3時間でした。

今回改めて意識できたのは、グィンプレンが宮殿で過ごしたのはたった1日だってこと。初演でも良く考えれば分かったことだけど。

夜捕まって涙の城で気絶した翌朝、宮殿で目覚めるとペドロがアン王女の金貨を持ってやって来る。自分で渡すと言うグィンプレンに、今日は王宮の馬車で上院に向かいアン女王始め議員たちに会う予定だ、とペドロが言う。着替えてブラブラしているとジョシアナに出会う。さらに両親と自分の肖像画を目にして、世の中を良くしようと決心。そこへデルモア卿登場。決闘の勝負がつきそうなところで、上院に向かう時間だとペドロが迎えに来る。上院から旅館に戻る。

デアはグィンプレンが居なくなったと知ったその日のうちに息を引き取ってしまったというわけですね。あの子が知ったらロウソクの炎がフッと消えるように死んでしまうだろうとウルススが言ったのは、例え話でなく本当のことだった。

あと2回、キュヒョンさんとガンヒョン君で観覧予定です。楽しみ、楽しみ。