Stage2
急な登りと、風が強く
暑さ寒さの入れ替わりが
激しい1日だった
Stage2では
2人のメンバーが
代わる代わる
一緒に伴走してくれた
私の前を歩いてくれて
「石があるよ」
「トゲがあるよ」
「段差があるよ」
と、伝えてくれた
レースが始まってから
自分の目の状態が
思っていたよりも
遥かに悪い事が分かった
私は、乱視が酷く
凹凸や、段差、遠近感が
分かりにくかった
でも、日常生活で困る事は
ほぼ無かった
しかし
レース地の山道や
草が沢山生えている場所や
細かい段差がある下り坂など…
あらゆる所で
速度が極度に落ちた
リーダーは
Stage1で「おかしい」と
気づいたらしい
ニュージーランドのレースには
全盲の男性が参加していて
お友達がサポートしていた
リーダーは
「全盲の人も出ているんだから
何かしらのフォローの仕方が
あるハズだ」
と言ってくれた
初日に、
ストックで引っ張ってくれていたメンバーは
両膝の靭帯を、レース前に痛めていた
前日、フォローしてくれていた為
悪化させてしまった
なのに、フォローしてくれる
しかし途中で
「ごめん、厳しいわ…」と…
謝るのは
私の方なのに
自分が情けなかった
そんな状態にも関わらず
フォローして貰っている自分
腹が立って涙が出た
そして
もう一人のメンバーも
朝から体調を崩していた
私は、大した怪我もしていないし
体調も崩していない
ただただ、遅れを取ってしまう…
メンバーに着いていきながら
涙が止まらなかった
悔しくて、情けなくて
涙が止まらなかった
仲間に負担を掛ける為だけに
来ちゃったんだろうか…
と言う問いで
頭が一杯になってしまった
前を歩くメンバーが
「大丈夫シンドい
」と
聞いてくれる…
「大丈夫」としか言えない
二人は
他の耐久レースで完走している人
だから
ニュージーランドでも
確実にメダル獲得を
狙えるハズだった
しかし
CP2で、タイムアウトに
なってしまった
ニュージーランドレースでは
タイムアウトになっても
その先に進む事が許された
しかし時間的には
かなりタイトになる
CP3に向かうか否か…
選択をしなくてはならない
CP2に着いた時は
次に向かうと決めていた
しかし
気温が急に落ち始めていた為
一度荷物を降ろし
レインジャケットの下に
ダウンジャケットを着て
レインパンツを履き
再度、荷物を背負おうとした時に
尻餅をついた
スタッフが
すぐに駆け寄って来て
大丈夫か
行けるのか
と聞いてくる…
言葉に詰まった
荷物の重さに耐えられず
尻餅をついた事で
一瞬不安になってしまった
その心の動きを
捕らえたかの様に
スタッフの言葉
この先
レスキューが入れない
本当に行くのか
大丈夫か
と、畳み掛けてくる
「行く‼」と言えなかった
考えている時間は無かった
行くなら、すぐに出なくてはならない
私は
行かない選択をした
「リタイヤします」
と言った私に
一緒に居てくれたメンバーが
翔ちゃん
後悔しない
本当にいいの
自分の心に
正直になって
俺に負担かけるとか
思ってるんだろ
と、声を掛けてくる
いつもは優しく
ゆっくりと話す 彼が
とても強い口調で 声を掛けてくる
言葉には しなかったけれど
翔ちゃん
諦めるなよ
と
言ってくれているのが、分かった
涙が止まらなくなり
言葉も出ない
号泣する私を見て
ごめんね
サポート出来なくて
と…
違うよ❗
それだけは、ハッキリと伝えた
体調が悪い中
必死に私をサポートしてくれた
私一人だったら、厳しい山道を
CP2に来れたか分からない
彼は、一人だったら
タイムアウトにならなかった…
ゴール出来ていた…
私が呼吸が苦しくなり
立ち止まって
ゼーゼー言ってる時に
笑いながら言った…
下ネタ話す
ガラじゃないけど
これは、靭帯を痛めていたメンバーが
「下ネタ言うと、笑うから
緊張と疲れが緩む」
と言っていたそうだ
思わず笑ってしまった
丁重にお断りしたけど
彼は
次のCP3に向かう事を選択し
出発した
CP2には、足を痛め
休んでいた チームメイトが居た
私は涙が止まらず
しばらく泣いていた
すると
スタッフの人たちが言ってくれた
「あなたのチームメイトは
みんなステキね」
「あなたのチームは
本当に素晴らしい」
「ここまで来れた事だけでも
凄いことなのよ
だから、泣かないで
自信を持って欲しい
あなたは 素晴らしいのよ」
先へ進んだメンバーと、私の様子を見て
言葉は通じていなくても
どんなやりとりを しているのか
伝わっていたのだと思う…
スタッフの人たちまで泣いてた
泣きながら抱きしめてくれた
涙が止まらない私に
タイムアウトになった他国の選手が
「泣かないで
今回のコースは、とても難しい
それを、ここまで来たんだから
君は凄いんだよ
だから、笑って」
「グミ食べるかい」
「チョコレート食べるかい」
と、話しかけてくれる
そんな中
一人の男性が話してくれた
その人は
通算で、13回
団体のレースに出ていて
全て完走し、メダルを獲得していた
写真も見せてくれた
しかし
まさかの、その人がタイムアウト
今回のコースは
ハードだ
と言っていた
暫く涙が止まらなかった
それは明らかに
自分に納得していない証拠だった
悔しくて
情けなくて
不甲斐なさに
自分の弱さに腹が立っていた証拠
その悔しさと
先へ進んだメンバーの言葉が
Stage3で、物凄いパワーになった
Stage2は
仲間の心からの想いと
スタッフの優しさと
他国の選手の優しさに
胸が一杯になった
そして
チームのメンバーで
ほんとに良かったと実感した
☆。・:*:・゚'★。・:*:・゚'☆
先に進んだ彼は
「あの時さ
悔しくて大泣きしながら歩いたんだよ
あんなに泣いたの初めてだった」
と
レース後に話してくれた
「ごめんね。
私をサポートしていなかったら
ゴールできてたのに」
と言うと
「違う違うよ
もっと自分に体力があれば
翔ちゃんを、引っ張ってでも
連れて行けたんだよ
あそこで、諦めさせずに済んだんだよ
それが悔しかったんだ」
と
言葉を失った
そして大号泣した
☆。・:*:・゚'★。・:*:・゚'☆
仲間の想い
スタッフの想い
他国の選手の想い
自分の想い
すべての想いに
向き合った日だったように思います
側にいる人の
想いに、心を傾けていますか?
では、また