30歳という若きシェフが踏み出した最初の一歩「PRIMO PASSO」 | じきの食歴

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世の中には、美味しいいもので溢れている。
そんな美味なる料理やお酒の記録を食の歴史として記しておこう

店名の「PRIMO PASSO」とは、最初の第一歩という意味。
シェフの藤岡 智之さんがイタリアで修行していたお店「Quattro Passi (4つのステップ)」に敬意を表して付けた名前だと、ソムリエ兼マネージャーの小口(こぐち)豪さんが語った。
2023年5月1日に新富町にある築地警察署の通りを挟んだ建物の地下1階にオープン。
その店を示すのは、腰のあたりまであるポールにつけられた12センチ四方ぐらいのプレートのみ。
それを目印にして地下へと降りてゆく。
店はカウンター8席に個室が6席。
今回は、事前に予約されていたカウンター席に案内される。
カウンターは大きな1枚板となっており綺麗な木目が走っている。
天井は、格子状になっていたり、組木の窓風の意匠があったりと客席側は和風な空間だ。
一方キッチン側は近代的な様相で、そのコントラストも面白い。

シェフの藤岡さんは、まだ30歳。石川県金沢市にある寿司屋の息子として産まれ、寿司屋を継ぐことなく辻調理師専門学校に入学しイタリアンに目覚める。その後、ひらまつグループの「リストランテASO」に始まり、「シチリア屋」、「ピッツェリア恭子」で修行をし25歳で渡伊。現地で「Mimi alla ferrovia」、「Oasis Sapori Antichi」「Quattro Passi」等で4年修行し帰国し、この店のシェフに就任した。
ソムリエ兼マネジャーの小口さんもひらまつグループの銀座「アルジェントAso」では支配人を務められていた方で、その後いくつかのお店を歴任されこちらに店に入られた。

そんなこちらでいただいたのは、下記のコース。

・筋子 胡瓜 オクラ 長いも コリンキー
白ワインベースのジュレをかけたもの。抑えめな酸味が夏場の最初の1品にちょうど良い。それぞれの食材の大きさが揃えられているので食べやすい。

・リコッタ スカモルファ バルミジャーノ 生ハム
パンツァロッティという揚げパンに3種類のチーズが入ったもの。上には、ベルケルのハムスライサーを使って目の前で1枚づつスライスしたものを乗せて出してくれる。
中のチーズは、熱々でペアリングで出していただいたワインに実に合う。

・カッペリーニ 白烏賊 唐墨
ここでペアリングに日本酒の新政のNo6 X-type が出てきた。
冷製のカッペリーニで、蛤等の出汁がベースだろうか、乳化具合もちょうどよい。

・太刀魚 トロナス
炭火で焼かれたトロナスと太刀魚。焼き加減も実に良い。
とろける茄子が、上品なソースのようだ。

・スパゲッティ 雲丹
これも貝系の風味があるウニのスパゲティ。上には雲丹と香味干しという佐賀の海苔が乗せられており、これがパスタと和えると溶けるように麺に馴染み磯の香のソースとなる。

・ブリオッシュのようなミルクパン
このパンがなかなか美味しかった。表面はカリリと、甘味のあるパン。

・トルテッロ 栗マロン トリュフ
栗マロンというかぼちゃをパスタ生地でつつんだものをスープ仕立てに。上には、削ったトリュフがかけられている。

・ななつぼし ムール貝 トマト
北海道の「ななつぼし」を使ったリゾット。トマトとムール貝の旨い成分の相乗効果が炭水化物でブーストされる。

・生ハム 無花果 ミント
再びスライサーが持ち出され、極薄くハムがスライスされる。
それを皿に敷いてイチジクを乗せ、その上に民とのグラニテが乗せられる。
口直しの一皿。

・十勝ハーブ牛
牛は、表面をカリリと焼き上げ中はジューシーに。見事な焼き加減。
添え物は、とうもろこしのフリット。

・カプチーノ
見た目は普通のカプチーノだが、その牛乳の泡の下にはパスタが忍ばされている。こちらは、サイズを事前申請して量を調整してもらえる。

・ほうじ茶 桃
ほうじ茶のジェラートと桃のデザート。

・カフェ
自分はコーヒーを。深煎りのしっかりしたもの。
小菓子としてシュークリームが。
焼きたてのシュー生地に目の前でクリームを詰め、フランボワーズのパウダーをかけて出される。

いやー、どれも旨かった。
全体のボリュームも結構ある。何せ、少量ずつだがほぼ炭水化物の用いられている料理構成となっている。
元々、イタリアのレストランでパスタ担当をされてたいたということもあり、色々なパスタを作りたいというのもあるそうだ。
調理もとても丁寧でありながら、8人分の料理をこれだけ色々と出す手際も良い。
また、こちらで今回出されたペアリングのお酒も自分の好みにドンピシャだった。
この内容でコース16500円(税込)+サービス料+飲み物代(ペアリングは、税込みで6杯7700円(税込)か9杯9900円)というのは、リーズナブルでさえある。
今はまだちょっと先であれば予約を取れるが、すぐにでも予約困難店になってしまうのではないだろうか。

ちなみに、カウンターエリアに入って正面の一番奥に飾られている絵付けのされていない白いままの壺が印象的だったが、これは藤岡シェフの出身地である石川県の九谷焼で、あえて絵付けを行わず白い無垢のままにしているとのこと。
そこにも、ここから新たなる一歩を始めるのだというシェフの意気込みを感じることができた。

 

 

PRIMO PASSOイタリアン / 新富町駅築地駅東銀座駅
夜総合点★★★★ 4.5